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そんな私の心配を他所に、真珠を身につけた私が白のベールをかぶると、メラさんはまた絶賛してくれた。
白と黒がお互いを引き立ててとても豪華に見えるそうだ。やった。
「白の海の輝石に白のベールか…。これは明日の巡行は面白いことになりそうだな。」
マルシェさんのチェックを受けていると、メラさんがぽつりとつぶやいた。
面白いことって?…大騒ぎになるんだろうか。やっぱり。
「ハルカさんが着たら流行るかもしれません。」
チェックをしながらマルシェさんもメラさんに同意する。
流行るって、白のベールが?
白があまりいい色とされてないのに、それはどうだろう?
私が首を傾げていると、メラさんが提案を出した。
「そうなると、ドレスの情報はきちんと流した方が良さそうだ。マルシェ、後でデザインの特徴や素材についてまとめてくれるか。ハルカさんもドレスのデザインの意味や元になった故郷の話などをまとめておいてくれ。何、簡単でいい。要は、白に意味があるとわかればいいんだ。」
白に意味が…。
確かに、流行るうんぬんはともかく、今の白の印象なら誤解を与えかねないし、聞かれたらきちんと説明出来る方が良さそうだ。
「白のベールは魔除けだ。とかですか?」
「それだ。忙しいだろうが、今日中に頼めるだろうか。息子に渡してくれればいい。マルシェもだ。リリィ、マルシェの警護はどうなっている?明日以降、製作者に問い合わせが殺到する可能性がある。」
ああ。ルシェモモではそれも問題があったっけ。
技術者の街だから、新しい技術が出来るとそれを学ぼうと他の技術者が殺到するのだそうだ。
教えるかどうかはその技術者次第なため、誘拐や恐喝もあって、そういう場合は街から警護の隊士さんが派遣されるのだとか。
ただでさえマルシェさんの工房は泥棒が入ったばかりだ。警護はしばらく必要だろう。
「まだ決まってません。ドレスのことがあって、早急に担当を決めることになっているのですが、西の件で遅れています。」
「いかんな。このままでは、明日マルシェが無防備になってしまう。ここは空に近くなるだろう?」
「そうですね。式が終われば、リード隊長は戻られますが…。」
メラさんとリリィさんが怖い顔で話し合っている。
マルシェさんも硬い顔で裾をチェックしていた。…チェックする手は止まらないのが流石です。
「戻るまでがな…。マルシェは式に出るのか?」
「はい。長とご一緒させて頂くことになりました。」
「そうか。長も見越しておられるな。各一族の長の席は警護もしっかりしてるから、その方が安全だろう。」
うわあ。私のドレスでいろいろ影響が出てるなあ。
それだけ、ドレスが新しいってことなんだろうけど。




