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危険なので私は明日まで外に出ないようにと言われ、それなら肌を磨きましょうというリリィさん達エルフの女性陣に引きずられて、治療部隊用の会議室で即席のエステが始まった。
まずは老化物を外に出すお茶にパックで、異世界デトックス。
お茶は黄緑色で少しドロドロしていた。
恐る恐る飲んでみると、レモンの香りのハーブっぽい苦味のあるシェイクだった。
ミルクで割っているらしく、飲むことは何とか出来た。
本当は原液の方が効くらしいけど、絶対ごめんだ。飲むもんか。
肌に張り付いたパックは、お茶を100倍くらい濃くしたペーストで、ガーゼのような布にたっぷり塗って肌にあてていく。
あてるポイントも決まってるみたいで、耳の後ろ、わきの下、へその上、手の平に足の裏、膝の裏と足の付け根にもあてられた。
パックをしてる間、身体の表面にはオイルを塗られ、そのまま全身マッサージ。
顔から首、腕、腰とあらゆるところをもみ込まれ、痛くて悲鳴をあげてしまった。
「これくらいしないと、邪魔なものが無くなりませんよ。」
「お疲れなんですねえ。胃腸が少しバテ気味みたい…。消化の良いものを作ってもらいましょうね。でも、ハルカさんはお肌がきれいだから、磨きがいがありますねえ。」
私の悲鳴はスルーされ、リリィさんやアニスさんはサクサクとマッサージを進める。
終わるとグッタリとイスにもたれる。疲れた。
肌にいいお茶とかフルーツが盛りだくさんになって、食事のメニューも変わってたけど、それも管理されてたんだろうなあ。
ブライダルエステならぬブライダルミールかあ。いたれりつくせりだ。
「胃腸がばててるって、そんなこともわかるんですね。」
「治療で触診もやりますから。」
あ。そういえば、リリィさんもアニスさんもお医者さんだった。
頼れるお姉さんなイメージがすっかり板について、本職を忘れるところだった。すみません。
こっちに来てから、エルフたち深緑の森の一族のおかげで私の健康はまったく問題がない。
刃物で狙われたり、攫われそうになったりといろいろあったけど、健康だったから対処できたことってたくさんあると思う。
「すごいですねえ。私もそんな風に何か出来るでしょうか。」
式の後は正式に仕事を決めないといけない。
レシピ公開に注目が集まる以上、私の立ち位置はしっかり決めておく方がいいとメルバさんからは忠告されている。
「ハルカさんなら大丈夫です。すでに調理師の資格をお持ちですし、いろいろなことをよくご存知ですもの。その知識があれば、どこでも雇ってもらえます。」
私のつぶやきにアニスさんがハッキリ答えてくれる。
知識って、料理のこと?そんなの…。
「そうですね。ハルカさんは知識がおありです。学校の無い街も多いので、外から来た方は苦労されることが多いのですよ。でも、ハルカさんなら大丈夫です。」
あれ。リリィさんもだ。
学校ない所があるんだ。この街があるから、一般的だと思ってた。




