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「カメレオンの一族も嫌がらせを?」
「…こっちの方がタチが悪い。結果的に嫌がらせになったように見えるんだ。黒の染めが中々出来なかっただろう?カメレオンの一族が黒い布を買い占めてた上、奴らのために追加の染料を発注しなくてはならなくなっていたそうだ。」
「彼らの正装は黒と金って決まってるからね~。」
私の確認にクルビスさんとメルバさんが顔をしかめる。
正装が黒っていうのはわかるけど、金かあ。派手だなあ。
「イシュリナちゃんの色でしょう?彼女が番ってから、一族が正式にシーリード族に含まれたからね~。幸運の女神の色ってこと~。」
…有名人が着た服のブランドが売れまくるって感じ?それより宗教的かな?
それで衣装の危機だったのか。結果的にそれなら嫌がらせじゃないような?
「俺とハルカの式が決まってから、カメレオンの一族から軒並み黒の衣装の注文が来たそうだ。俺たちの色が黒だから、黒一色でと。…どうやら、それを勧めたのが俺に娘をと勧めていた連中で。」
「う~わ~。遠回しな嫌がらせ。ふたりの式には真っ黒の布が必要なのわかってたでしょうに~。」
クルビスさんがため息をつきながらのセリフにメルバさんが呆れている。
え?え?どういうこと?
「真っ黒の布にするにはね~。染料を煮詰めて濃くしたものを用意しないといけないんだ~。それで染めても、一度で真っ黒にはならなくてね~。何度も何度も染めるの~。つまり、黒の染料を大量に使うんだよ~。
それなのに、一族中に黒一色の衣装の発注を呼びかけるって…。絶対在庫の布じゃ足りなくなって、黒の布を発注することになるに決まってるのにね~。」
私がわかってない顔をしてたらしく、メルバさんが丁寧に教えてくれる。
黒の染料は特別なのか。だから、街に買い物に出た時、黒の布にムラがあったり、濃かったり薄かったりしたわけだ。
きっと、綺麗に染まりきるまでやるとすごい染料が必要になるんだろう。
普段使いにそこまで高価なことは出来ないから、ムラのある染めが出回ってたんだな。
…リッカさんに大感謝。
あのままだったら、黒の布は確実に間に合わなかっただろう。
あのまま間に合わなそうだったら、真っ白な布を使うことを提案する気だったけど、ドラゴンの里で白がどうみられるか知った今では、それも難しかっただろうと思う。
反対されただろうなあ。白のベールでもあの反応だったもん。
はあ。それにしても、手間のかかることを。
遠回しな上に一族中に言いふらしたって、イグアナの一族とはまた違った面倒臭さだなあ。




