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 何とか食事が無事に終わると、フェラリーデさんがシードさんと一緒にお茶を持ってきてくれた。

 お茶は飲み慣れた異世界のほうじ茶だ。



 葉っぱじゃなくて、木の皮をお茶にしてる変わったお茶だ。

 異世界に来た初日に食事の後に出してもらってから、食後のお茶は大体これになった。



 こっちに来て食事が口に合うのも助かったけど、お茶が美味しいのにも助かった。

 やっぱり、お茶があるかないかで食事の楽しみがずいぶん変わる。



「ハルカさん。食事のすぐ後で申し訳ないのですが、先程あったことをお聞きしてもよろしいでしょうか?」



「はい。…えっと、お客様だと聞いて、リリィさんと相談して、下で会うことにしてリリィさんについて来てもらったんです。1階なら他の隊士さんもいるだろうから、危険も少ないだろうと思ってそうしました。」



 それから、取りまき達に驚いたことや私が直に挨拶に来たことを彼女に揶揄されたことから、部屋に案内しろと騒ぐ彼女に部屋は無いと告げると襲い掛かってきたことまですべて話した。



 私が話終わると、シードさんがクルビスさん達に頷く。

 ちょっとお疲れに見えるのは気のせいじゃないだろう。



 シードさんって悪役令嬢の取り調べをやったんだよね?

 大変だったろうなあ。きっとわめきまくっただろう。



「取りまき連中が言ってたのとは一致するぜ。ただ、あのお嬢様が言ってたこととはずいぶん違う。「一族を侮辱したから頭に血が上ってしまった。故意ではない。」とさ。こんなもん持っといて、よく言うぜ。」



 そう言ってテーブルの上に置いたのは黒いドロップ型のガラス片のようなものだった。

 良く見ると太い根本は黒い糸が巻かれて持ちやすいようになっていて、尖った先端は両端が研いであってナイフの刃のように見える。



 何だか石器みたいだと思った。

 学校の遠足とかで見たやつに似てる。え~と、黒曜石だっけ?



「石のナイフですか。携帯用のようですが、これを手に?」



「ああ。取り押さえた隊士の他、リリィを含めてその場にいた隊士5つが確認してる。リリィはハルカを庇った時にこれを握ってたのをハッキリ見たらしい。」



 フェラリーデさんがナイフを手に取りながらシードさんに聞き、シードさんがそれに答えていく。

 その顔はあきれ果てているようだった。



「髪を切る気だったのか?」



「たぶんな。取りまき達が言うには護身用で普段から持ってたもんらしいが、頭に血が上った時に手に持ってたんじゃあな。言い訳になんねえよ。」



 クルビスさんの指摘にシードさんが肩を竦める。

 うわあ。本当に悪役令嬢だったんだ。



 嫌味だけじゃなく、実力行使する気だったのか。

 部屋が埋まってて良かった~。



 いや、その前に1階で会うと決めて良かった。

 リリィさんありがとう。



 でも、あの悪役令嬢はどうなっちゃうんだろう。髪を切るってたしか重罪だよね?

 こちらでは体色や髪の色が個人の魔素そのものを表すから、それを傷つけることは相手の存在を否定することになる。



 だから、肌や鱗に色が出る一族は相手と身体が接触しないように気を付けるし、髪に色が出る一族はどこかに絡まったりしないように、長い髪はきちんとまとめていないといけない。

 私も今は式の前で後ろ髪を下しているけど、サイドはちゃんとピンで止めている。



 それを傷つけるつもりがあって、しかも実行してしまったなんて、場合によっては追放だ。

 追放なんて甘いように聞こえるけど、街から追放されると他の街にも移れない。



 凶暴な獣のいる森や海に囲まれて、ひとりでこの世界で狩猟採集の生活は厳しいだろう。

 街育ちのあのお嬢さまじゃあ、死んでしまうのと同義語だ。



「それでも、父親は怒鳴り込んでくるだろうな。…連絡は?」



「それはリードが。」



「先程連絡しましたが、そうすぐには…。」



 フェラリーデさんが言葉を切ってドアの方を見る。

 クルビスさんもシードさんも同じくドアを見ている。



 何かあったのかな?

 …もしかして、フラグ立っちゃったとか?

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