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「白…でございますか。ハルカ様は白の海の輝石をご存知でいらっしゃる。」



「…ええ。故郷ではその色でした。より白く、綺麗な球の形をしているもの程上等だと言われていましたね。」



 私が答えると、グレゴリーさんは私のベールに目を移した後、何かに納得したように頷いていた。

 あ。そうだ。忘れかけていたけど、こっちで白ってあまりいい色とされてないんだっけ。



「そうですか…。それなら、こちらはいかがでしょう?」



 アクセサリーの箱を入れてきたのだろう、ひと抱えもある大き目の箱から赤い布張りの箱が取り出される。

 グレゴリーさんがふたを開けると、中には直径1センチ以上はあろうかという大粒の真珠のネックレスが入っていた。



「綺麗…。あの、でも、これってとても高価なのではありませんか?」



 実家の母が持ってた本真珠だってこれより直径がずっと小さかった。

 それでも何十万ってしたって聞いてるのに。予算内で買えるかなあ?



「それをお分かり下さる方にやっと出会えました。値段など、そちら様の良いお値段で結構です。…魚人の里では海の色に近い色程、尊い色とされます。まるで海の色をそのまま映したかのような色でございましょう?この輝石は白といっても光を受けると実は様々な色の光を反射するのです。



 私も、初めて見た時見惚れたものです。こちらでは白は嫌煙されます故、あまり知られてはおりませんでしたから。ですが、本日お伺いすることになった時に、どうにもこの箱が目につきましてお持ちした次第です。」



 うっとりするように真珠を眺めながらグレゴリーさんが説明してくれる。

 その様子を見て「スタグノ族が綺麗なもの美味しいものに弱い」ということを思い出す。



 キィさんもリッカさんも普段の服もいい布使ってるもんなあ。

 頷きながらそんなことを思い出していると、すぐそばで食い入るように真珠を眺める視線に気づく。



 リリィさんとマルシェさんだ。

 どうしたんだろう?珍しいってだけじゃないみたいだけど。



「この白なら、合いそうね。」



「ええ。これほどの輝きを持つ白があるなんて…。まだまだ未熟でしたわ。」



 ええっと、つまり…。

 気に入ったってことでいいのかな?



「「ハルカ様、これにいたしましょう!」」



 ふたりが声を揃えて白の真珠を指さす。

 グレゴリーさんも満面の笑顔で頷いている。



「え、ええ。でも、予算が…。」



 あんまりかかり過ぎると街からの貸し出しになるんですよね?

 隊長格のお式は街の経済の活性化のきっかけになる行事だから、街から多額の特別予算が出る。



 それに、各守備隊からの祝い金として多額のお金をもらえるから、余程のことが無い限り足りないことはない、予算に余裕はあると教えられていた。

 だから、時間がないのもあって、テキパキと決めていたんだけど…。



 これ程の大粒の数の揃ったネックレスなんて、下手したらドレスより高いかもしれない。

 そう思って尻込みする私にリリィさんが自身満々に答えてくれる。



「ご心配なく。ルシェリード様と長から今回のお式に予算の上限は無いと伺っております。」



 ええっ。上限無し!?

 どうりでトントン拍子に話が進むと思ったら…。



 予算の心配しなくて済むんだから、値段で悩むことも交渉することもないよね。

 私が決めたものに対しても、皆さん笑顔で頷くはずだよ。



 予算が足りそうになかったら、その前に会計専門の方からストップが来るから気にしなくていいって言われてたけど、ストップ来ることないじゃん。

 そんなんじゃあ、悩むことがあるとしても、いかに良いものを出来るだけ多く手に入れられるよう考えるくらいだろう。実際そうだったし。



 まあ、今回みたいに異例の速さで式をあげるにはそれくらいでないと間に合わなかったと思うけど。

 私が驚きのあまり呆然としていると、マルシェさんもリリィさんに頷いて補足してくれる。



「当然です。ルシェリード様にとっても長にとってもこのお式は特別ですから。長はハルカ様を妹のように思っていらっしゃいますし、ルシェリード様はハルカ様の後見でいらっしゃる上に、クルビス隊長のおじい様ですもの。力の入れようが違いますわ。」



「そ、そうなんですか…。」



 どうやら、私が思ってたより周囲の式への力の入れっぷりは半端なかったらしい。

 これ、クルビスさん知ってるのかなあ。



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