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「う…。」
眩しさに目が覚める。
昼間のように暑くて眩しいものだから、寝苦しくて目が覚めた。
頭が痛いけど、何かやったっけ?
そんなことを考えつつ身体を起こそうとするけど動けない。
「…ハルカ。もう少し寝てていいぞ?」
「ふえ!?」
抱きしめられていると気がつくと同時に、聞きなれたバリトンボイスが降ってくる。
そこで目がパッチリと冴え、目の前が真っ黒なのに気づく。
「クルビスさん?え?」
驚いて身体を離そうとするけど、やっぱり動けない。
…とりあえず、離してくれないかな。
「おはよう。昨日あのまま寝てしまったからな。リードに「そのまま一晩様子を見るように。」と言われてこうなった。」
昨日?昨日は…。
あ。クルビスさんに怒られて、そんで泣いちゃったんだっけ。
まあ、クルビスさんに泣いたんじゃなくて、フェラリーデさんに診せるって言われてなんだけど。
そういえば、昨日の私、なんかおかしかったなあ。術にかかってるって言われたような?
「…おはようございます。えっと。私、昨日おかしくなかったですか?」
「術の後遺症で少し不安定だったな。気づけなくてすまない。」
クルビスさんがそう言いながらギュっと抱きしめてくれる。
いえいえ、たぶんフェラリーデさんのお説教でHP使い切ったからだと思うんで、クルビスさんのせいじゃないと思いますよ?
余力が残ってたら泣いたりしなかっただろうし。
ああいうのは私にしては珍しいことだ。
「いいえ。昨日はちょっと疲れてたんで、そのせいもあったと思います。ずっとついててくれたんですか?」
「ああ。縋りつかれたしな?」
クルビスさんが私の手を撫でながら言う。
え。そういえば、私、クルビスさんの服思いっきりつかんでる。
「す、すみませんっ。やだ。シワになっちゃう。」
慌てて離すと「可愛いからいい。」という返事になってない返事をもらった。
うう。泣いてしがみ付くとか、子供みたいですごく恥ずかしいんだけど。
恥ずかしいやら申し訳ないやらで困りながら、額に流れた汗を拭おうとして部屋がとても暑いことに気づく。
いつも適温なように調整してもらってるから、室内で汗をかくなんてなかった。
「この部屋暑くないですか?」
「ああ。暑かったか。すまないな。陽球の調整を高めにしてあるんだ。」
クルビスさんが腕を伸ばして何かのつまみを操作すると、ベッドの真上にある明かりが弱くなった。
すっごい眩しい明かりだった。まるで日の光みたいだ。
そうか、これが陽球かあ。たしか、陽球ってミニ太陽なんだっけ。
熱と光を強烈に放つやつで、トカゲさんやヘビさんが目が覚めやすいように暖めるんだよね?
部屋の中に太陽…そりゃ暑いわ。
外で寝てるのと同じだもんね。
クルビスさんは普通だから、体感温度が違うんだろう。
これは新婚早々ちょっとした問題になりそうだ。メルバさん達に聞いてみないと。
「いえ。でも、ちょっと汗かいたんで離れてもいいですか?」
がっちり捕まえられた腰を離してもらわないと、起き上がることも出来ないんですが。
そう言うと、ひどくゆっくりと手が離れていった。渋々っていうのがピッタリな表現だ。
「仕度が出来たら、医務局へ行こう。もう大丈夫そうだが、念のため診てもらわないとな。」
そう言ったと思ったら、デコにチューさんました。
汗かいてるのにって抗議したら「ハルカならいい。」とまた答えになってない答えを返してきて、不衛生だから駄目ですと釘を刺しておいた。
汗を流して、クルビスさんの普段着を借り、クルビスさんに抱えられながら下に降りる。
今日はお姫様だっこでなく、片腕で子供を抱っこするような姿勢だ。
クルビスさんの服は私にはかなりぶかぶかなので、今は上だけを借りてワンピースみたいに着ている。
部屋を出る前に、彼シャツ状態の私を見て「仕事に行きたくない」とか言い出したときは困ったけど、今は上機嫌だ。
それでも借り物だとひと目でわかるのが恥ずかしくてしがみ付いていたら、朝早いのに「伴侶を抱えてご出勤ですか。羨ましい。」とか「いいですねえ。新婚は。」とかからかわれてますます恥ずかしくなってしまった。
そんな状態で部屋まで送ってもらうと、部屋の前にアニスさんがいた。
昨日は様子が可笑しかったけど、もう大丈夫なんだろうか?
「ハルカさんっ。」
「アニスさんっ。もう大丈夫なんですか?」
「っっ。はいっ。ご迷惑をおかけしてすみませんっ。」
そう言って女神の尊顔から真珠の涙がポロリ。
焦ったのなんの。美人の涙って破壊力あるよね。
アニスさんの場合、演技じゃないってわかるから尚更だ。
きっと自分を責めてるんだろうなあ。真面目なアニスさんらしい。
「迷惑なんてかかってないですよ。無事で良かった。そうだ。着替えたら医務室に行くんです。ついて来てもらえますか?」
真摯な気持ちには真摯に答える。
ウソ偽りない本音だ。それが伝わったのか、青ざめたアニスさんの顔が少し明るくなった。
「っっっ。はいっ。」
私のお願いに泣き笑いで頷いてくれる。
うん。友達には笑ってて欲しいよね。彼女に何もなくて良かった。
陽球が遥加さん視点で初登場です。




