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ドレスの合わせが終わるとそのままアクセサリーの調整に入る。
といってもつける位置だとか、一緒に着ける花とのバランスを見るくらいだ。
アクセサリーは虹のようないろいろな色が入った不思議な石で作られていて、直径3~4cmくらいの丸く平たい形に加工された石が連なったデザインで3点セットだ。
ネックレスにブレスレットに揃いのピアスもある。
こちらに来てからピアスは開けたけれども、つい最近の話だ。
アクセサリーが虹色の石に決まって、重さも考えるとピアスの方がいいと言われて開けることになった。
フェラリーデさんにやって頂いたけど、ちょっとチクっとしたくらいで困ることはなかった。
でも、何故か毎日の洗浄はクルビスさんがやってくれていて、ついでのようにいちゃいちゃしているのは誰にも言えない…。
伴侶がするものだって自信満々に言われたけど、ホントかなあ?
ルシェリードさん家にお邪魔した時に、膝抱っこについてのカルチャーショックを受けたからなあ。
クルビスさんの中では当然のことかもしれない。
まあ、誰かに見られるわけでもないからいいんですけどね?
まあ、それはともかく、大振りなアクセサリーなので花飾りは頭をメインに着けることになった。
花は生花で、要するにベールの上から花冠を被る形になるわけだ。なんてメルヘン。
どの花にするかでこれまた話し合いが続いたけれど、ベールが白だからいっそ白い花にしたいと言うと、最初は難色を示されたものの合わせてみるとバランスが良かったらしく、小ぶりの百合のような白い花に決定した。
その花はあー兄ちゃんが昔エルフの里に持ち込んだものらしく、ドアに直接生やした経緯があるせいか、エルフの里では魔除けとして家具の意匠によく使われるのだそうだ。
元のドアを知ってるだけに微妙な気分だが、百合はウエディングによく使われるし清楚なイメージのある花だからシンプルなマリアベールにはぴったりだった。
ブーケも持ちたかったけど、こちらでは周りから花を贈られるものらしく両手は開けておくので無しになった。残念。
でも、周囲のひと達のお祝いの言葉と共に送られた花で両手を一杯にするのも乙女の夢だと言われれば、それも素敵だなと思えたし楽しみになった。
そこまで決まるとやっと落ち着いて、衣装は外して休憩することになった。
疲れた。楽しいんだけど、すごく疲れる。
ただでさえ、当日は街中でお祝いされるから、衣装にしろメイクにしろ周囲の張り切りようが尋常じゃない。
私も仕度するほうだったら楽しかっただろうなあ。
そんなことを思ってると、お茶を持ってきたアニスさんにお客様が来たと言いにくそうに言われる。
お客様はクレイさんだった。
アニスさんも私のお世話をしてくれる関係で、クレイさんのことは聞いているんだろう。
固い表情でどうしますか?と聞いてくれる。
要件は、納品したアクセサリーに不備が無いか聞きにきたとのこと。
それ自体は不自然な理由じゃない。
クルビスさんと私の結婚式はそれだけ注目を集めている。
私が身につけたものは、次の流行になる可能性が高い分、不備が無いか衣装と合うかは気になるところだろう。
でも、あんな怪しいひとにノコノコと会いに行く気はさらさら無いから、とりあえず、クルビスさんかフェラリーデさんにクレイさんが来たことを伝えて、指示を仰ぐことにする。
ちょっと気になることもあるしね。




