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トカゲと散歩、私も一緒  作者: *ファタル*
ドラゴンの一族
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20

「それは、何というか…すごいですね。悪い意味で。」



「ああ。色を偽ってもすぐばれるのにな。やめようとはしない。あの連中も何を考えているのか…。色は確かに自分の力を示すものだが、それが全てでは…いや、俺も似たようなものだな。黒は優遇され、白は冷遇される。今日までそういうものだと思っていた。」



 そう言ってクルビスさんは苦笑する。

 黒は優遇され、白は冷遇される…それって、ケロウさんのことかな?



 幸いの竜の話はみんなとても驚いていた。

 子供たちに話そうと思ってたけど、この分だと街で話したらもっと驚かれそうだ。



 話す前にメルバさんやフェラリーデさんに相談してみた方がいいかも。

 色のイメージって結構強烈だしなあ。



 日本でだって、白は結婚や祝い事、黒は喪服ってイメージがあるくらいだし、個人的には赤は熱血で青はクールなイメージがある。

 そんなイメージを否定するような話をするんなら、反発されることも想定しておかなきゃね。



「色のイメージってどうしてもありますから、それは仕方ないですよ。私だって、白はお祝いごとに使う色で、黒は喪服や抑えるための色だって思ってますし。」



 フォローのつもりで自分の中の色のイメージを伝えると、クルビスさんが不思議そうな顔をしている。

 目を見開いて驚いているのに、首を軽く傾げている。最近、この仕草が可愛いと秘かに思ってるやつだ。



(しの)ぶための服…?何に使うんだ?」



 え。偲ぶための服?

 そんなこと言ってない…あ。そっか。こっちでは魔素で言葉の意味が伝わってるから、喪服が「偲ぶための服」って伝わったんだ。喪服ってないのかな。



「ええっと。故郷では誰か無くなっても消えたりしないんです。だから、遺体を土に埋めて、お墓を作って、亡くなった方が無事に眠れるように、未練を残さないように祈ります。その時に専用の服を着るんです。」



 で、いいよね?

 喪服の意味なんて考えたこともなかったけど。



「消えない…。そういえばそう言っていたな。こっちでは個別に思い出にひたることはあっても、わざわざ集まったりはしないな。」



 死に方だって違うもんね。そりゃ死に対する認識だって違うでしょう。

 こっちでは魔素が無くなると消えてしまう。



「存在する力」が無くなるんだから当たり前だけど、そのせいかこっちでは死に対する忌避感(きひかん)や恐怖が薄いように思う。

 まあ、ドラゴンとか見てたらちょっとやそっとで死にそうにないし、そのせいもあるかもしれない。



「そうか。白が祝いの色で、黒が抑える色か。本当に色の認識が違うんだな。」



「ええ。育った環境が違えばそんなものですよ。最初は髪に注目されるのがよくわからなくて困りました。」



 何度も同じようなことを言ってるのがおかしくて笑ってしまう。

 でも、たくさん話さなきゃ。それだけ違うってことなんだから。



「ああ。そうだな。そんなものかもしれない。」



「そうですよ。」と答えようとしたらクルビスさんの姿がない。

 あれ?クルビスさん、どこ?



 探そうと首を巡らせると、ぎゅっと抱きしめられた。

 お尻の下が固い感触に変わっているのに気づく。



 慌てて確認すると、いつの間にかクルビスさんに膝だっこされていた。



(えええっ。いつっ。どうやってっ。というか、クルビスさんそこで本気ださないで下さいよっ。)



 内心驚きで絶叫しつつ、どうしたものかと考える。

 密室にふたりきり。手を出されてもバレない状況盛りだくさん。



「あの、クルビスさん?」



「…笑った顔が可愛くて、つい。」



 ついで、いきなり膝抱っこしないっ。

 文句を言おうと顔を上げるといい匂いが鼻をかすめて、くらりとなる。



 くう。魔素全開のクルビスさんは威力が半端ない。

 いい匂いするしっ。力が抜けるっ。



「俺はもうハルカを手放せない。苦労をかけると思うが…一緒にいてくれるか?」



 は?今さら?

 今度は何を気にしてるんだろ。



 苦労をかけるって、ああ、黒塗りの女性たちとか、黒に群がるひと達のこと?

 そんなに面倒な相手なのかな。ありそうだけど。



 白の冷遇に対して黒の優遇かあ。

 きっとそのひと達は「黒=権力」とか思ってるんだろうな。



 実際、嫌がらせはしてたみたいだし。失敗してるけど。

 この分だと、式当日に邪魔して来そうだよね。心配するならそっちかな?



 まあとりあえず、何だか弱ってる婚約者を慰めましょうか。

 程ほどにだけど。まだ、こっちの身体は持たないから。

一応、一区切り。

いちゃいちゃは乗せるか削るか考え中。

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