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2000字。
最近、長めの話が続きます。
「悪いな。疲れてるのに、こんな話して。」
「いいえ。こうやってすぐに教えてもらえる方が助かります。」
クルビスさんが困ったように目を細めるから、にっこり笑って大丈夫だと答える。
最近わかるようになったけれど、シーリード族のひとは困った時や苦笑した時は軽く目を細めて口の端がほんの少し上がる。
怒った時や機嫌の悪い時は目を軽く細めるだけだから、最初は見分けがつかなくて魔素の感じで判断していた。
今でもクルビスさん以外のシーリード族の表情はイマイチわからなかったりする。
これも慣れだと思っているけど、表情を見るからか相手の顔を良く見るようになった。
日本にいた時とは全く逆だ。
「もし、他に知っておいた方がいいことがあったら教えて下さい。色のこととか各一族の関係とか。」
この際だからとクルビスさんに振ってみると、クルビスさんはちょっと考え込んだ。
皆が知ってて私が知らないことって結構あるからなあ。
「そう、だな。色と言えば、キィとリッカについて話しておかなくてはと思っていた。それと、カメレオンとイグアナの一族に関してもだ。」
キィさんとリッカさんはわかるけど、カメレオンの一族とイグアナの一族?
挨拶もお披露目も問題なく終わったけど…。
「まず、キィとリッカについてだ。ふたりの色のことはどれくらい聞いてる?」
「えっと、おふたりの色が一族の色から離れているからつまはじきにされたと、メルバさんとデルカさんから聞いてます。そのせいで、キィさんがリッカさんを預かってた時期があるってことも。」
黄の一族にお詫びにいく前に話してもらったことを思い出す。
だから、余計なことを言いに来るひとに気をつけるようにって忠告してもらったんだよね。
「リッカがキィに預けられることになった原因については?」
「…それは、ご両親が亡くなったからだと。」
それだけだった。
リッカさんが長の従姉妹だって知られてないことと関係があるのかな?
「そうか…。ハルカは他の一族よりスタグノ族と深く関わってしまっている。だから、話しておく。これは俺の独断だが、街ではうかつに話せないし、ハルカは知っていた方がいいと思う。」
クルビスさんの言葉に背筋を伸ばす。
きっと、今から聞くことは口外してはいけないことだ。でも、私は知ってた方がいいこと。
「公にされていないが、リッカの両親は…殺されたんだ。親族の誰かに。」
クルビスさんから語られたのは私の想像もしなかったことだった。
ゴクリと喉が鳴る。殺されたって、親族の誰かって、そんな恐ろしい話だったんだ。
「これを話すのは、披露目でハルカが聞いたことと関わりがある可能性があるからだ。スタグノ族は一族至上主義で一族の色を何よりも誇りとする。だが、リッカの両親は赤の一族で初めて異種族婚をした番で、娘のリッカは一族の色を受け継がなかった。これは当時の赤の一族の長の方針で実現したことだ。」
クルビスさんの話にメルバさんから聞いたことが思い出される。
「どこよりも早く異種族婚をした」そう言っていた。それがリッカさんのご両親?
「リッカの祖父は先代の赤の一族の長で、ルシェモモに移って最初に子を育んだ世代でもある。一族の偏った認識をなんとかしようとして、息子には街の学校に通わせ、シーリード族と積極的に交流を持ったそうだ。その結果、リッカの両親は出会い、番になった。相手はヘビの一族で、街をあげて歓迎したそうだ。」
そして、リッカさんが生まれた。
ピンクの色をまとって。どう受け止められたのかはもう知ってるけど…。
「リッカの両親はルシェモモの水で育てることにしたそうだ。たとえ、異種族の血が混じることで色が変わっても我が子だと言って。」
立派なご両親だ。
きっとリッカさんのことを大事にしていたんだろうな。
「そして、リッカが生まれて、中央から離れて一族へお披露目をすると言う時に事件は起きた。赤の一族の長の家にいたスタグノ族が全員惨殺されて発見されたんだ。」
全員…。それってご両親だけじゃないってこと?
惨殺って、聞くだけで嫌な言葉だ。想像したくないような悲惨な状況だったんだろう。
「披露目に出るために泊まりに来ていた客や親族は軒並み殺されていた。それも、ただ殺すだけじゃない。ズタズタにされていたんだ。…その中にはキィの両親もいた。」
驚きの事実に息が止まるかと思った。
キィさんのご両親ということは、リッカさんのご両親に賛成だったんだろう。
一族で初めての番を祝うなら、きっと他にも賛同するひと達が集められていたはず。
そんなひと達をひとまとめに…何てことだろう。
「実行犯は捕まったが、手引きしたやつはわからなかった。リッカはキィの両親が術式で隠したから無事だったが、家の中は小さな隙間も荒らされて、まるで何かを探していたように見えたらしい。
ドアも窓も無事で、警備の関係があるから、赤の一族で長に近い位置にいる者が共犯だと推測はされたが、一番怪しいとされた容疑者は当日ルシェモモにはいなかったことになっていた。」
つまり、黒幕は野放しってことだ。
…赤の一族でリッカさんとアースさん以外いなかったのは、安全のためだったんだろうか。
「やつは転移陣を使わなくてはいけない場所で1泊していたんだ。記録もある。…だが、ハルカが披露目で聞いただろう?転移陣に細工した連中の話を?」
そうだけど、お披露目でしゃべってたのは話からすると青の一族と黄の一族で…。
でも、転移陣に細工したって確かに言ってた…。ちょっと待って。
「クルビスさん、もしかして。」
「ああ。ハルカの話から推測して、赤、青、黄のすべての一族至上主義者が手を組んで、当時の事件は起こったと考えている。」
もしかしなくても、私はとんでもない話を聞いてしまったんだろうか。




