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『ふふふっ。幸いですか。そんなこと初めて言われました。』
周りの反応に困惑してると当の白い竜であるケロウさんが笑い出した。
周囲がその反応にギョッとする。
もしかして、ケロウさんがこういう反応するのは珍しいのかな?
それに「初めて言われました」って言ったけど、こっちでは「白い竜」の認識が違うんだろうか。
え~と、授業で習ったのは、こちらでは魔素の質が高くて量が多い程、濃い色の体色になるってこと。
だから、クルビスさんのように「単色」と呼ばれる濃い色一色のひと達は特別強い。
ということは、逆に薄い体色は魔素の質もそんなに、量もそんなに持っていないことの証明になる。
そして、実力主義のシーリード族で、しかもドラゴンで力が無いということは…。
『ちなみに、ハルカ様の故郷のお話とはどのようなものですか?』
おっと、話を振られた。
え~と。どれがいいかな?
…血が薬になるってやつは無しだな。うん。
「…そうですね。ドラゴンの出てくるお話はたくさんあるんですけど、白い竜の出てくるお話だと…。ある少年が白いドラゴンと出会って本当の自分を探す旅に出る、というものが一番有名です。」
『本当の自分…。』
「ええ。弱虫でいじめられっこの少年がある日白いドラゴンに出会って世界を旅するんです。その旅の中で様々なひとに出会い、学び、立ち向かっていくというストーリーで、白い竜は道標でもあり、その鍵となる存在なんですよね。
それ以外にも、私の故郷では白い生き物は神様の使いとされていましたから、白い竜を崇めていたりもしましたよ?」
神様の使いどころか神様扱いだったけど。
あ。こっちで神様って言って伝わるかなあ?
確かめようとクルビスさんを見上げると、目を見開いて固まっている。
う~ん。クルビスさんでこの反応だと、白い魔素の扱いってかなり悪そう。
『ふははっ。そうか。世界の使いか。道標とな。』
「ええ。だから、白い竜に出会うと願いがかなうというお話が生まれたんだと思います。伝説の竜ですね。」
ルシェリードさんが笑って私がダメ押しすると、やっと他のドラゴン達も動きを取り戻した。
カルチャーショックに呆然としてたみたいだ。
まあ、世界の常識ってっやつを覆す思想だもんね。
当のケロウさんはさっきから目を見開きつつも嬉しそうに話を聞いてくれているけど。
『うむうむ。そうだな。色など、見方を変えれば簡単に意味の変わるものよ。生まれてきたことそのものに意味があるのだ。全ては世界の導きのままだな。』
締めくくるようなルシェリードさんの言葉に、我に返ったドラゴン達は一斉に頭を垂れた。
いつの間にか周りの騒がしい空気が無くなっている。
どうしよう。このシリアスな空気。
そんなつもりはこれっぽっちもなかったんだけど。
とりあえず、しばらく黙っていようかな。良い場面っぽいし。




