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「ハルカ?どうした?」
初めて感じた共鳴の魔素にうっとりしてると、クルビスさんが不思議そうに聞いてきた。
いけない。うっとりし過ぎて黙り込んじゃってたみたいだ。
「何だか暖かいものに包まれて…これってメラさんとフィルドさんの共鳴ですか?」
「ああ。そうだ。他の番の共鳴は初めてか?結構気持ちいいだろう?」
クルビスさんが答える前に、私の疑問が聞こえていたらしいメラさんが答えてくれる。
確かに気持ちいい。身体がぽかぽかしてるし。
「はい。身体が暖かくなります。」
「私たちの共鳴はそうらしい。ハルカさんとクルビスのは身体が軽くなる感じがするよ。」
え。共鳴って違いがあるの?
不思議に思って首を傾げていると、イシュリナさんが教えてくれた。
「共鳴は番によって周りに与える効果が違うのよ。私たちの場合はね、身体の力が抜けて、眠くなったりするんですって。だから、中央で集まってる子供たちの寝かしつけなんかを手伝ったりすることもあるのよ?」
「そうなんですか…。結構違いがあるんですねえ。」
初めて知った事実にまた驚く。
何だか今日は驚いてばかりだ。
「すまん。リードから聞いているかと思った。」
驚く私にクルビスさんが謝ってくれる。
いえいえ。クルビスさんのせいじゃないですから。
「それは仕方ないよ。クルビス。共鳴できる番に会えること自体珍しいのに、共鳴を比べることなんてまずないんだから。」
フィルドさんがフォローしてくれるのに、私も頷いた。気にしてませんよ。
共鳴出来る数が少ないなら、知り合う可能性はもっと少ないだろうしね。
こういうことは本人達から聞かないとわからないものだし、フェラリーデさんからはあくまで一般的な知識しか習っていない。
膝抱っこのことといい、クルビスさんにとって共鳴の効果に差があるのは当たり前のことでわざわざ言う必要もなかったんだろう。
それがわかっただけでも良かったと思ってる。
まだ出会ったばかりなんだし、少しずつ知っていけばいいと思う。
「はい…。」
「そう気負うなクルビス。お互い育った環境が違うんだ。当たり前と思ってることが違うなんてよくある。これから話していけばいいだろう?そういうのも楽しいぞ。」
「…そうですね。」
私が頷いてもまだ気にしているクルビスさんを今度はメラさんが優しく諭してくれる。
さすがお母様。クルビスさん持ち直したみたいだ。顔が明るい。
「そうですよ。これからもっとお話ししましょう。それに、リードさんには、どちらかと言うと「共鳴が出来ると番とみなされる」っていうことを丁寧に教えて頂きましたし。」
「…リードのおかげだったか。」
「いい友達じゃないか。森で聞いた時はどうしたもんかと思ったが。」
あれ?何か違うことに注目されてる?
ルシェリードさんもにやにやしてるし。
「森って何ですか?」
「俺が最初に会ったって言ってた時なんだが、メルバが何を思ったのか、ハルカさんは最初、共鳴は治療に使えるってのだけ聞いててな。その誤解をリードが解いてくれたのさ。」
「まあ。」
「それは感謝しないとな。」
ルシェリードさんの説明にメラさんとイシュリナさんが目を丸くしている。
やっぱり驚くよねえ。
まあ、メルバさんも悪気があったんじゃなくって、異世界に来たばかりの私が混乱しないようにって配慮してくれてたんだけど。
いきなり番だの恋人だの思われるなんて、受け入れられないもんね。
今ではその気遣いをありがたいと思っている。
「元の世界からこちらに来た日だったので、混乱しないようにと最低限だけ教えてくれたそうです。おかげで、落ち着いて受け止めることが出来ました。」
「成る程な。それならそうと言えばいいものを。」
「長も言葉の足らぬお方だから。」
私が事情を説明すると、ルシェリードさんとメラさんが納得しつつ文句を言う。
笑ってるから怒ってるわけではないみたい。
「そうそう。元の世界といえば、ハルカさんの故郷のお菓子のお話を聞きたいわ。今、話題の的なのよっ。」
イシュリナさんからお菓子の話題を振られる。
そういえば、今日も手土産に持ってきたんだっけ…って、あれ?
お菓子の袋…どこ?
「これか?」
クルビスさんがヒョイとお菓子を入れた袋を差し出してくれる。
ああ。クルビスさんが持ってくれてたのか。
抱えられて走る時に預かってくれてたんだった。
ふらふらになって忘れてたけど。失敗したなあ。
今さら差し出して大丈夫だろうか?
クルビスさんから受け取って、おっかなびっくり袋を差し出す。
「ありがとうございます。あの、これ、その故郷のお菓子を再現したものです。」
「まあっ。作ってきてくれたの?ありがとうっ。」
「おお。これが。早速頂こう。」
良かった。皆さん気にしてないみたいだ。
でも、今度から差し出すタイミングには気をつけよう。
気が利かない嫁と思われたくないし。
イシュリナさん話題振ってくれてありがとうございます。




