6
「まあ。これがクルビスとハルカさんの共鳴なのね。とっても癒されるわ。」
突然かけられた言葉にギョッとしてイシュリナさんを振り返る。
イシュリナさんもルシェリードさんも目を細めて笑っていた。
え。いつの間に共鳴してたの?
ちょ。クルビスさんっ。こっち見てっ。
わざとですねっ?
ご家族の前でいちゃつくなんてええっ。恥ずかしいっ。
「すごいだろ?治療で見せたときはもっとすごかった。」
「まあ。もっと?」
私が恥ずかしさに悶えていると、ルシェリードさんがイシュリナさんに説明し始めた。
ルシェリードさんはくつろぎモードなのか、長としての話し方ではなく普通のしゃべり方に戻っている。
「森の中でネロを拾った時には、かなり離れたとこにいた俺にも魔素が届いた。なあ?ネロ?」
「ぶきっ。」
ネロがうんうんと頷いている。
いや。あんた気を失ってたでしょうが。
突っ込みたいけど、イシュリナさんが楽しそうで突っ込めない。
間違いじゃないんだけどね…。
「ネロちゃんは小さかったものねえ。見つけてもらえて良かったわね。」
「ぶきっ。」
イシュリナさんに言われて、ネロはまた頷く。
この子、さっきから名前呼ばれたら頷いてない?いいけど。
くつろいだ様子のルシェリードさんに頭を撫でられ、イシュリナさんにはお菓子貰えてネロは嬉しそうだ。
大きくなったなあ。今はもう私の太ももの真ん中くらいまで背がある。
最初にルシェリードさんに預けた時は、手の平サイズでふんぞり返ったら手の平から落ちるような大きさだったのになあ。
しかも、その後ストライキ起こして倒れて戻ってくるし。心配ばかりかける子だった。
「確かに大きくなった。私が見た時はまだ手に乗るくらいだったな。」
「いつ見たんだい?」
同じようにネロを見ていたらしいメラさんがネロを見て話しだす。
そういえば、メラさんは小さい頃のネロに会ったことあるんだっけ。
私を見に北地区に来た日だ。
ついこの間のことのはずなのに、ずいぶん昔に感じる。
「私が北に行った日だな。」
「ああ。あの時。一緒に行こうって言ったのに、メラってば先に行ってしまって。」
「時間が空いたんだ。クルビスが無理してないか気になったし。あなたは仕事があっただろう?」
「でも…。」
ネロを見てメラさんとフィルドさんが話し始めると、おふたりから暖かい包み込むような魔素が流れ込んできた。
(あれ。これなんだろう。あったかい…。)
どんどん周りに広がっていく。
もしかして、これっておふたりの共鳴?
共鳴出来る番は数少ないけど、ルシェリードさんご夫婦が共鳴出来るからか、メラさんご夫婦も共鳴が出来るそうだ。
もっとも、その範囲は差があって、ルシェリードさんとイシュリナさんなら凄いときは一区画くらいまで影響があるけど、メラさんとフィルドさんは部屋の一室くらいまでしか影響は出ないらしい。
共鳴出来るだけでもすごいことなので誰も何も言わないけど、共鳴出来る条件は何なのか、影響の出る範囲の差は何なのかが長年の疑問になっているってメルバさんが言っていた。
それにしても、これが共鳴の魔素かあ。
たしかに気持ちいいかも。
他に共鳴出来る番にあったことが無かったから新鮮だ。
何だか心までぽかぽかしてくる気がする。
成る程ねえ。共鳴出来る夫婦が歓迎されるわけだ。
自分じゃあわからなかったから、ホントはどうなのか不安だった。
でも、これならたしかに喜ばれそう。
いちゃいちゃの証みたいで恥ずかしいけど。




