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「催淫の術とは相手が気づかない程の魔素を送って、相手の行動を誘導するものです。かかる、かからないは個体差がありますが、ハルカさんは無事なようですね。」
困惑顔の私にフェラリーデさんが説明してくれた。
ありがとうございます。
意味が伝わって当てはまる漢字が思い浮かぶ。
催淫かあ。日常には縁のない言葉だな。
「相手は黄の一族の長の叔父だ。今日初めて会った。」
「初対面で術をかけたんですか。それもクルビスがいる前で。」
フェラリーデさんは若干呆れているみたいだ。
でも、それは仕方ないんじゃないかと思う。
クルビスさんはメラさんに術士になれるくらいの知識と魔素のコントロール術を叩き込まれたと言ってた。
普通、戦士タイプはそこまで術式についての技も知識も求められないから、術式に弱いひとが多い。
何か1つ得意分野があるくらいで、術式の解析や力の流れを見ることなんて出来ないものらしい。
クルビスさんは治療も遠視もオールマイティに出来る。
こんなのは術士以外ではまずいない、例外中の例外だってシードさんが言っていた。
クルビスさんもわざわざ言ったりしないみたいだから、知らないひとの方が多いはずだ。
だからクレイさんはバレないと思ったんだろう。キィさんもいなかったし。
でも、それより気になるのが術をかけられたタイミング。いつのこと?
「そんなのかけられましたっけ?」
やっぱり心当たりがないのでクルビスさんに聞いてみる。
クルビスさんは苦笑して教えてくれた。
「やっぱり気づいてなかったか。ハルカが遠視を使えるかと聞いてきた時だよ。」
ああ。あの時。
らんらんと輝く目が気持ち悪いと思ったんだっけ。
あれって、術をかけられていたんだ。
でも、何で私に?
「あの時ですか…私にかけてどうするんでしょう?」
「それはわからないが…グレゴリー殿が教えてくれた。ハルカが遠視を使えないと答えた時、最後が聞こえなかっただろう?あの時こう言っていたそうだ。「残念。効かないか。」と。グレゴリー殿は「弟の目に気をつけて欲しい」とも言っていた。」
ええ。何かいやだなあ。
術が効いたら何させる気だったんだろう。
「その方は遠視能力者を探していた。ということですね?これまでの被害者と一致します。」
被害者?
え。何の?




