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その後、クルビスさんと一緒に会場に戻った。
戻った途端に会場中から視線を浴びる。
え。何だろう。
こっそり戻ったのに、何でこんなに見られてるの?
「さっき共鳴したからな。さっさと中に戻ろう。」
私の疑問にクルビスさんが耳打ちして答えてくれる。
さっきの共鳴が外に漏れてたみたいだ。
まあ、共鳴は魔素を高め合うことだから、気づかれて当たり前ともいうけど、それにしても周囲の視線が痛い。
射抜かれそうな視線だ。
共鳴して驚かれたことはあったけど、ここまでの反応はなかったなあ。
興味っていうより、怖がられてるような気がするのは気のせいだろうか。
「お見事な共鳴でございましたな。」
真ん中の方まで行くとグレゴリーさんが声をかけてくれた。
そうしたら、周りもようやくざわつき始める。
「共鳴を始めて体験した者が多いからでしょう。素晴らしい魔素でございました。」
う。いちゃついてたのを皆知ってるってこと?
恥ずかしい。クルビスさんっ。
私が見るとさっと視線をそらすクルビスさん。
今の今まで見てたでしょうが。こっち向けっ。
「これはこれは初々しい。」
私とクルビスさんが視線でやり取りしていると、別の声が割り込んでくる。
そちらを見ると黄の一族の男性だった。
くすんだ黄土色の体色に赤い瞳が少し怖いと思わせる風貌だ。
にこやかというよりにやけた感じの笑い方で少し不快感を感じる。
そんなことは表に出せないからクルビスさんの魔素を意識して、上機嫌に見えるようににっこり微笑む。
「…ご紹介しましょう。私の弟です。」
「クレイと申します。お見知りおきを。」
クレイさんが大げさな身振りで礼を取る。
何だか仰々しいというか、芝居がかってるような仕草だ。
グレゴリーさんが苦笑しているのを見ると、クレイさんのクセみたいだ。
ちょっと付き合いが難しそうなタイプだなあ。
「クルビスです。こちらは伴侶のハルカ。」
「ハルカです。よろしく。」
「お二方にお会いできるのを楽しみにしておりました。特にハルカ様には我が甥がお世話になり、大変感謝しております。」
…何だろう。礼を言われてるし、喜びの魔素も感じるのに、違和感がある。
隣で困った顔で笑っているグレゴリーさんを見てハッとなる。
(初対面でのグレゴリーさんに似てる…。目が笑ってない。)
顔も雰囲気もニコヤカなのに、目は形だけ笑っているだけだと気づく。
これは要注意な相手だ。




