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トカゲと散歩、私も一緒  作者: *ファタル*
スタグノ族・赤の一族
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10

祝・連載開始一周年!

「日進月歩~」から毎日、頑張りました!

「ハルカちゃん、スタグノ族のお披露目はまだじゃったよな?」



「ええ。」



「う~ん。じゃあ、聞いといた方がいいかもね~。皆知ってるし~。嫌な話も耳にするかもだし~。」



 嫌な話?って、リッカさんのことで?

 そういえば、赤の一族は灼熱の色だって聞いたのに、リッカさんはストロベリーピンクだ。



 あの色からは灼熱なんて連想できない。



「ふむ。そうですな。ハルカちゃんや。赤の一族がルシェモモに出て来た話は聞いたかの?」



「はい。その時に、転移陣の商業利用兼を頂いたとアースさんに聞きました。」



「おお。そうじゃ。そうじゃ。赤の一族はスタグノ族の中でも好奇心が強く、商魂たくましい一族での。この街に移ってきたのも一番早かった。」



「そうだね~。伴侶探しにも積極的で~。異種族婚が早かったのも赤の一族だったよ~。」



 アースさんの言ってた「惚れたものは手に入れろ」って家訓を思い出す。

 異種族婚が早かったのって、長の家族だったんじゃないかな。



「じゃが、その赤の一族でも保守的な部分は捨てられんでの。スタグノ族の色の話は聞いたかの?」



「はい。黄の一族が「大地の色」、青の一族が「草の色」、赤の一族が「灼熱の色」を持って生まれると。」



「そうじゃ。彼らは水が無ければ生きられん。出産も子育ても水辺で行う。故に、水の魔素の影響を色濃く受けるのじゃよ。」



 出産も子育ても…それは影響が大きそうだ。

 水の影響なら、一族で色が似通っててもおかしくない。



「だから、一族で同じ色が出るんだけどね~。そのせいで、色の差別が酷くって~。」



「古い家柄では、いまだに色素の薄い子や色味が違う子が生まれると、育てることなく養子に出してしまうそうじゃ。」



 ええ?色が違うだけで?

 一族の色は水の影響だってわかってるのに?



「それだけで、ですか…。」



「それだけのことが大問題でのう。キィもリビーも一族の色と離れとるじゃろ?あの子らはルシェモモで生まれた子たちなんじゃ。じゃが、その身の色故に一族からつまはじきにされた。リッカなぞ、両親が死んだ後、引き取る者がおらんかったくらいじゃ。」



「アース君が修行先から帰ってくるまで、キィ君がリビーの面倒を見てたんだよ~。まあ、結果的にふたりのなれ初めになったけどね~。」



 デルカさんとメルバさんが悲しそうな顔でため息をつく。

 色だけでそこまで差別するなんて…。それも、環境が原因なのに。



 酷い話だ。でも、有り得ることだとも思う。

 人間だって、人種差別が未だに残っているし、見た目は一番比べられてしまう部分だ。



 青の一族でも赤の一族でも長やリッカさん以外とは会わなかったのは、そういう話を聞かせたくなかったからなんだろうか。

 青の一族は他のひと達が待ち構えていたみたいだし。



 スタグノ族の色に対する認識は皆知ってることなんだろう。

 メルバさんやデルカさんが話してくれるのは、お披露目の時にそういう話を耳にするかもしれないからだ。



「そういうわけでの。お披露目でキィとリビーの挨拶も受けるじゃろう。その時に、余計な注進をゆうてくる者がおるじゃろうが、気にせんことじゃ。」



「常識が違うっていうか、話が通じないからね~。まあ、言ってくるのはお年寄りがほとんどだけど~。」



「戯言を本気にする者もおるで、言葉には気をつけるんじゃぞ?」



「はい。ありがとうございます。」



 聞いといて良かった。

 うっかり失言したら、キィさんやリッカさんに迷惑がかかる所だった。



 う~ん。下手に相手せずに聞き流すしかないかなあ。

 当日はにこにこしてやりすごそう。

注進とは報告することですが、転じてチクリのことも意味します。

この場合は後者です。

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