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トカゲと散歩、私も一緒  作者: *ファタル*
スタグノ族・赤の一族
106/360

 *******************



「はああ~。それでこれをくれたの~?」



「見事な黒ですねえ。」



 メルバさんとフェラリーデさんがため息をつきながら布を見つめる。

 お祝いの品としていただいたのは『黒い布』だった。それも私とクルビスさんの黒色を1反ずつ。



 1反もあるとすごく重いんだけど、2つともクルビスさんが軽々運んでくれて助かった。

 大きい荷物だったから、帰りはずっと注目を浴びてしまったけど。



 とりあえず、私の部屋に運ぼうとしたら、メルバさんに見つかってしまってこうして見せている。

 私の茶色がかった黒とクルビスさんの青みがかった黒、どちらも色濃く染められてムラもない。



「これは、リビーだね~。」



「でしょうね。おそらく、ハルカさんと出会ってすぐくらいに発注しているでしょう。黒は染めるのに手間がかかりますから。」



 フェラリーデさんの言葉を聞いてギョッとする。

 出会ってすぐって、ひと月は前のことですよ?



 そんなすぐに私とクルビスさんの分の布を?

 リッカさん、どこまで見抜いていたんだろう…。



「リッカには改めて礼を言わないとな。」



「はい。」



 ビービービー



 クルビスさんと頷きあっていると、転移陣を起動させたことを知らせるアラームが鳴る。

 フェラリーデさんが急いで転移陣の部屋に向かった。誰だろう?



「ああ~。デルカだ~。明日一緒に行くんだよ~。」



 デルカさんといえば、黄色い髪の長老さんだ。

 珍しい。長老さん達はいつも3人一緒なのに。



「ほら、うちの若い子が黄の一族の長を診断したでしょ~?あれが酷かったからさ~。お詫びをね~。

 デルカは里に来たグレゴリー君と話してるから、ついて来てもらうことにしたんだ~。」



 ああ。グレゴリーさんと面識あるんだ。

 それなら、そういうひとについててもらった方がいいよね。



「じゃあ、明日は4つでお邪魔するんですね。」



「うんうん~。そういうこと~。ごめんね~。急で~。じじい達がお詫びに行くって聞かなくてね~。」



「いいえ。面識のある方がいらっしゃるなら、その方がいいですよ。」



「そうなんだよね~。僕だけだと、恐縮されそうだし~。」



 負い目があるもんねえ。

 メルバさんは気にしてないみたいだけど、向こうはそうはいかないだろうし。



「おお。おそろいですかの?」



 デルカさんだ。手一杯の荷物を抱えて部屋に入ってくる。

 慌てて荷物を受け取ると、デルカさんはふうと息を吐いた。



「丁度良かった。ハルカちゃん、うちの一族からのお祝いじゃ。」



 青いガラスの小瓶にピンクの小瓶、キラキラ光る紫の壺に虹の模様の入った黄色い箱…。

 小さい物がたくさんある。どれも装飾が施されていて、とても綺麗だ。



「ありがとうございます。…いろいろあるんですね?」



「使い方はアニスに聞くといいじゃろ。うちの一族が使う美容関係のものじゃ。式までに磨きをかけんとな。」



「特別なお手入れってやつだね~。」



 あ。ブライダルエステ。

 うわあ。それは嬉しい。



 いろいろあるけど、きっと化粧水からパックまでひと揃いあるんだろう。

 何だかウキウキしてきた。



「ありがとうございますっ。」



「うむうむ。女性はいつの時代も綺麗でいたいもんじゃからなあ。」



「布も手に入ったし、後は衣装の仕上げだけだね~。」



 メルバさんの合いの手でデルカさんがテーブルの上の布に気づく。



「おお。これは見事な黒ですな。どちらから?」



「赤の一族の長様に頂きました。」



「リビーがね。気をきかせてくれたみたい。」



 デルカさんは私とメルバさんの答えに納得したように頷いていた。

 リッカさんのおかげで衣装も出来そうだし、何とかなりそうだ。

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