第三章の五 三人
「こちらではじめてお目にかかります。道士の商売をいたします。皆様、よろしくお願い申し上げます」
それから、絡んで来ていた三人に向かって言う。
「口開けで、あんたたち三人を占ってあげるわ。ただで」
「へえ、そりゃいいや」
男たちはまたがらがらと大声で笑う。
冥華は皿に水を注ぐと、紙を三つに裂いてまず一つ浮かべ、懐から刃の細い小さな剣を取り出す。
剣先で紙をなぞると、突き刺して皿の水から紙を取り出し、一人の男に向ける。
「あなた、懐のものを早く処分した方がいいわね。まずいことになるわよ」
男は目を見開いて息をつめ、懐を押さえた。
別の男が言う。
「おまえ、あとで懐改めるからな。変な動きを見せるなよ。おう小娘、俺はどうだ」
冥華は同様の手順を踏む。
「あら、あなた、取り分をごまかしたのかしら? 二日前の仕事? けっこうきつい仕事だったんじゃない?」
他の二人が男を睨む。
「えっ、待ってくれ、俺はそんなことしてねぇ」
「ああ、間違えただけなのかしら? ううん、ちょっと卦が読みづらいわね。ごめんなさいね未熟で」
もう一人が卓に手をついて言う。
「おっ俺、俺は?」
冥華はまた同じ手順を踏んだ。そして高い声で言う。
「すごい! あなた一人だけ最大の幸運期よ! 何もかもひとりじめできるわ! こんなの見たことない!」
男たちは身を乗り出して続く言葉を待ったが冥華は微笑んで目を瞬いた。
「なに? おしまいよ」
「なんだと!?」
「だって無料ですもの。ここまでよ。席に戻って」
「なあ、金、金なら出す、出すから、もっと観てくれよう、俺どうしたらいいんだ、まずいことってなんだ」
「俺は取り分をごまかしてねぇからな! 間違ってもねぇ!」
「最大の幸運期ってどういうことだ? 籤を買えばいいのか?」
興奮する三人が冥華に詰め寄る。冥華は剣をしまい、男たちを見つめた。男たちの太い腕が冥華に伸び、場が緊迫する。
「おやおや、この酒場に道士が来たのか」
全く空気にそぐわない明るい声がした。酔った気配がみじんもない。その言葉を受けて、別の声がした。
「良かった、明日の卦を観てもらいたいと思っていたところだよ」
そしてもうひとり。
「なんだなんだ? 並ぶのか? 順番で言ったら俺何番になるんだ?」
ウキウキとした若い男性の声だった。
冥華に摑みかかろうとしていた男たちは、舌打ちをして冥華の卓を離れ、
「お、おい、勘定!」
と勘定場に駆け寄って、荷物を持って出ていった。




