表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/26

序章・一 支度


 序章・一 支度


 鵬国(ほうこく)冬宮とうぐう


 宮廷の(こう)(きゅう)から下がった妃たちが暮らす宮である。

 宮廷のある都から、馬車で七日ほどかかる距離の、気候の穏やかな街に作られた、その宮の一室に、みかどの妃たちが様々な着物や装身具を広げていた。


 妃たちに囲まれた少女は、申し訳なさそうに口を開く。


「あの、みなさま、私、そんなにたくさんは持っていけませんし、そもそも、(のう)(ちゅん)(びー)()さまとお話しして、道士として(ほう)(ぐう)に上がるってことで黒ずくめの支度をしたんですし」

 けれども寵姫たちは、手に手に(えり)(かざ)りや()(はく)(くん)(じゅ)を持って、少女に言う。少女は美しく着飾った妃たちよりも全く質素ななりをしていたが、豊かな黒髪は(つや)やかで肩は細く、それなりに整った顔つきをしていた。年の頃は十五になったくらいだろう。


 変わっているのは目で、右が黒色、左が青色だった。


 だが妃たちの中に、目の色を気にしている様子のものは一人もいなかった。

「だからって、(めい)、あなたこの(こう)()の中身はないわよ。いくら道士だからって黒ずくめだなんて。これを詰めなさい。真珠揃(ぞろ)いの十点をあげるわ。これは南洋の大きな粒なの。ぜったい似合うから。ね。そうだ、それでも黒ずくめがいいなら黒真珠はどう?」

(にしき)()(しゅう)の衿の一点もないってどういうことなの? ねぇ冥、花鳥の刺繡をしたものを持っていって。これを一緒に作って楽しかったわねぇ。覚えてる?」

「冥、冥、ほら、(きん)(らん)(くつ)よ。裏に冬宮のね、ここのね、住所とね私の名前を織り入れたから、なにかあったらこれを大人に見せなさい。売ってしまってもいいから何かあったらここに戻ってきて。この私があなたを迎えてあげるから」

「ねぇ今萌宮どうなってるか誰か知らないの。毒殺とか刺殺とか続発してたりしないの」

「ねぇ冥、行かないで」

「ねぇ冥、一緒にいましょう」


 ()(しつけ)に扉が開いて、年の頃は十歳くらいの、左側半分だけ伸ばした髪を結っている少年が入ってきた。その両眼は、冥の左目と同じ青色だった。

「ごめんよ。あのさあ」


 冥は中指と薬指の二本を立てて爪を唇の前で滑らせるようにしながら少年にその指先を向けた。


()ッ!」


 呪文と共に少年は、長い毛の黒い猫に変化する。


(はい)(たん)、ここ衣装合わせの部屋なんだから来たらダメでしょ」

 猫はニャーと鳴くと不満そうにしっぽを振り、近くにあった(さん)()(かんざし)をくわえると早足で外に出た。


「これっ黒潭ッ!」

 妃の一人が言って立とうとするが、それよりも早く冥が立って猫を追いながら言った。

「私が。おまかせください」




本書は、集英社Webコバルトに掲載された同タイトル作品の、著者本人による改訂版です。


いいねを下さると大変うれしいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ