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【書籍化&コミカライズ】勇者パーティーを追放された俺だが、俺から巣立ってくれたようで嬉しい。……なので大聖女、お前に追って来られては困るのだが?  作者: 初枝れんげ(『追放嬉しい』7巻3/12発売)
第3章 ボクネンジンに気持ちを伝えるたった一つの方法/ブリギッテ教会侵入編

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90.観光とドラゴン

2021.4.9修正

2021.4.19修正

90.ドラゴン観光





~アリアケ視点~


俺とアリシア、フェンリルは三人で聖都「セプテノ」の街へと繰り出していた。


アリシアはさすが大聖女というだけあって、地理に詳しく色々な場所に連れて行ってくれる。


歴史のある大聖堂や聖人が奇跡をおこなった遺跡など、珍しい場所をたくさん見せてくれた。


だが、一番目立つのはやはり聖都の中心にそびえたつ教会本部棟であったりする。


なぜか煙突のように細長いフォルムは、聖都のどこにいても目に入った。


(どうして、あんな建物にしたんだろうな?)


普通、教会と言うのはある程度建物の形が決まっている。


だが、ブリギッテ教の総本山は見たことのない異形といって良い形の建物なのだった。


ところで、フォルトゥナの件やゲシュペント・ドラゴンの襲来などの事件がある中でのんびりしたものと言われそうな気もするが、俺にとっては世界の危機が降りかかることや、実際に世界を救うことは日常茶飯事なので、別段気にならない。


むしろ、いちいち気にするようでは俺の様な役割を果たすことは出来ないだろう。


勇者ビビアにも早く俺の位置の百分の一で良いので、追いついて欲しいと期待している。


さて、そんな感じで三人で楽しく聖都観光にいそしんでいたわけだが、少し疲れたので屋外にある酒場に立ち寄ることにした。


ブリギッテ教は飲酒をタブーにしていない。


というか、むしろブリギッテ神は酒の神でもあったりする。


なので、そこら中にオープンテラスの酒場があるのだ。


しかし、


「ぬ!? 貴様はアリアケ・ミハマか!?」


「? ああ、シャーロット王じゃないか」


そう、聖都を焼き尽くそうとした絶世の美女(ドラゴン)が、なんと一人で、酒樽さかだるを何個も転がし、飲んだくれていたのである。


往来の人間たちも、彼女がシャーロット王であることは理解しているようで、慌てて逃げ出すか、あるいは酒場の片隅で縮こまっている様子だ。


「ここで会ったが百年目よ! 大賢者アリアケよ! ここで勝負するのだ」


ガオオオンとシャーロットはほえた。実際に口から炎が出ている。


なるほど、これはコレットの母親だ。


何だか仕草がそっくりだぁ。


「ちょっとちょっと、アリアケさん何をのんびりしてるんですか! 相手はゲシュペント・ドラゴンの王様なんですよ!」


「ああ、すまんすまん」


マイペース過ぎるのも悪い癖だな。


そんな風にやはりのんびりと反省しつつ、


「勝負と言っても、正式な試合はまだ先だったはずだが?」


「なに、別にそういう戦いばかりが勝負ではあるまい」


シャーロット王はニヤっと笑うと、


「酒の飲み比べよ! そなたも男ならば、まさか逃げはすまいなぁ!」


とんでもないことを言い出した。


見ての通り、彼女の周囲にはすでに酒樽が幾つも転がっている。


「おいおい、シャーロット王とやら、主様がいかに超人とはいえ、さすがにそれは無理が過ぎるのではないかえ? ドラゴンに酒で勝てなどとはのう……」


フェンリルが眉根を寄せてそういう。


その言葉に、アリシアは何とも言えない憐憫れんびんの視線をシャーロットに向けて、


「やれやれですねえ」


とだけ言う。


フェンリルはそのアリシアの微妙なリアクションに小首をかしげる。


「ふはははははは! では戦わずして逃げるというのか、人の救世主よ! 大賢者よ! しょせんはコレットをめとるる器ではないのう!」


やれやれ。


俺は呵々大笑(かかたいしょう)する絶賛酔っ払い中のシャーロット王に嘆息しながら、


「王よ。王からの誘いを断るなど無礼なことは出来ません。正直得手(えて)ではなく、苦手と言ってつかえない若輩ではありますが、ご相伴にあずからせていただきます」


俺はそう言って彼女の対面へと腰をおろしたのである。


そんな俺の態度に一瞬呆気にとられるシャーロット王と、


「主様! こんな酒樽を幾つも空にする化物と飲み比べなどしては、ただではすまぬぞえ!?」


「おいおい、アリアケ様がシャーロット王と飲み比べをするみてえだぞ……」


「ああ、って言っても、王様に言われたから仕方なくって感じだ」


「だな、酔いつぶされて終わりだろう。苦手って自分で言ってるからな」


そんな声が聞こえてきた。


まったくその通り。俺は酒が苦手なので、余り飲みたくないのだが……。


と、そんな風に思って内心ため息をついていると、アリシアが隣に来て、


「ほどほどにしておいてくださいよ、アリアケさん」


そう言って俺の荷物を預かってくれた。


「ああ、ありがとう。君にはいつも助けられるな」


「……そ、そんなことありませんよ」


そう呟いてから離れた。


「わーっはっはっはっは! 王の酒宴に招かれて断らぬ度量だけは認めてやろう。ふははははは! もし俺に飲み勝てば、我が財宝を何で(・・・・・・・)もくれてやろう(・・・・・・・)! ぬわっはっはっはー」


「お手柔らかに」


キン!


杯を鳴らし、お互いに杯に酒を注ぐと、まずは一口、ぐいっと飲み干したのであった。


「なははははははは! いい飲みっぷりではないか! 人間! まだ行けるのであろうな!」


「ええ」


俺は頷きつつ、


「もちろんですよ」


そう言って、久しぶりの酒の味を喉の奥で味わったのである。






~3時間後~


「ちょ、ちょっと待て、人間よ! お前……お前……」


「どうされましたか、王よ」


ざわざわ……。


周囲は騒がしい。


最初遠巻きにしかいなかった酒場の者たちや往来の人間たちは、今やシャーロット王と俺の飲み比べのテーブルの周りを囲んで、ずっとはやし立てているからだ。


いや、俺たちの飲み比べが始まってしばらくすると、どんどん人が増えてきたように思う。


「シャーロット王! 勝ってくだせえ! あんたに全財産かけてんだ!」


「お、俺もだ! ああ、シャーロット王!」


「馬鹿が! アリアケ様を信じなかったむくいだ!」


「そうだそうだ! いやぁ、それにしてもこんな名勝負が見られるとはなぁ!」


周囲は沸き立つ。


無理もないだろう。


なぜなら、


「大賢者アリアケよ! お前は化物か!? 人の身でこの俺よりも酒をたしなむというのかぁ!?」


本気で驚き、目をまん丸にしている美しい王が、さすがに酔っ払いはじめているらしく、真っ赤な顔でどなった。


一方、


「まだまだ、始まったところではないですか、シャーロット王。一番きついのを、せいぜい酒樽10個ほど空けただけですよ?」


「お前の体のどこに入ったというのだ!? というか、苦手と言っていただろうがっ!」


ダンッ! と。


理不尽だとばかりに、王が机をたたいた。


あ、確かに言ったな。ただ、


「少し誤解があったようですね、失礼しました」


俺はそう言って素直に頭を下げる。


「ご、誤解……?」


はい、と俺は頷きつつ、


「お酒を飲むとどうしてもトイレが近くなる。それがどうにも苦手でしてね。落ち着いて話が出来ないでしょう」


「なっ……、なっ……」


シャーロット王が威厳も何もない、可愛らしい顔で口をあんぐりと空けた。


こうやって幼い表情をすると、本当にコレットと似たかわいらしさがある。


ただ。俺は少し時間を気にしつつ、


「シャーロット王よ、すみません。まだまだお付き合いするべきなのでしょうが、実はまだ幾つか行くところがあるのです。今日は『引き分け』ということでいかがでしょうか?」


俺はそう提案する。


実際、俺たちは観光の途中で、最終的には教会本部にも行かねばならないからだ。


だが、


「引き分けは認めぬ」


シャーロット王はプイっと首を振った。


うーん、困ったな。


やはりドラゴンの王ともなれば、引き分けなどは認められないらし……、


「お前の……。いや、アリアケよ、そなたの勝ちである」


「……へ?」


今度は俺が呆気にとられる。


「まだまだ勝負はついていないと思いますが……」


その言葉に、シャーロット王は獰猛どうもうに笑いつつ、


「わははは! どこまでも紳士な男だな、そなたは! そこもまた良い! なるほどさすが我が娘は男を見る目が……って、いや、うん、まだダメだぞ。全然、俺はそなたを認めておらぬのじゃからな!」


彼女は一人で何やら笑ったり不機嫌になった後、手元の一杯を一気に飲み干すと。


「大儀であったぞ、アリアケよ! そなたの勝利を俺は忘れん! 見事な竜殺しであった! わはははは!」


彼女はそういうと、本当に上機嫌といった風に酒場を出て行ったのである。


周囲には空になった酒樽が数十と……。


「お、おい、これって……」


「あ、ああ。すげえ宝石だな……。拳くらいあるぞ……。それが2つ」


どうやら酒代と、あとは、


「アリアケさんへのご褒美でしょうかね?」


「俺は楽しく飲んでいただけなのだがなぁ」


別に宝石なんぞいらんのだが。


そんな俺とアリシアののほほんとした会話に、


「アリシアは我の知らぬ主様をよく知っておるようよなぁ」


そう言って、フェンリルが少し頬を膨らせていたのであった。


「最初から主様が勝つと知っておったわけよな?」


「まぁ、長い付き合いですので」


そこはかとなく、誇らしげにアリシアが胸を張った。


さて、


「店主、宝石の一つはシャーロット王からの詫び代だろう。騒がせてすまなかったとな。せいぜい、集まったこいつらに振る舞ってやるといい」


「へ、へい! かしこまりました、アリアケの旦那様!」


「さ、さすがアリアケ様だ!」「賢者様のおごりだぞ!」「ああ、シャーロット王に勝ったアリアケ様のおかげで今日はただ酒飲み放題だ」


「おいおい」


俺のおごりでもないし。


別に勝ってもいないのだがな。


とはいえ、そんなことをわざわざ言うのも野暮というものか。


「ふっ」


大騒ぎになってしまった聖都で一番大きな往来から、俺たちは気づかれないうちにこっそりと退散したのであった。

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[気になる点] 「ああ、ありがとう。君にはいつも助けられるな」 大聖女が一度でもアリアケの窮地や本当に困っている時に助けになるような事したことあったっけ? 全てアリアケのワンマンプレイで対応できる状…
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