88.マシュマロとラッカライ参戦
88.マシュマロとラッカライ参戦
『ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン』
屋敷全体を震わせる大音声とともに、浴室が大きく揺れた。
敵襲か!?
俺はとっさに警戒態勢に入るが……。
「きゃあ!?」
目の前のアリシアが態勢を崩した。
彼女もまた警戒態勢をとるために、とっさに立ち上がったのだが、そのために姿勢を崩してしまったのだ。
と、その瞬間。
『ハラリ』
と。
「へ?」
「あ……」
俺の目の前で、白のタオルがするりと、重力にひかれて落ちていくのが見えた。
それはまるでスローモーションである。
スキルを使ってもこれほどゆっくりと感じることはない。
それほどのゆっくりさ加減であった。
そして、何より、それが『ハラリ』した後。
隠されていたはずのそれが、本当にゆっくりと俺の目の前に現れたのであった。
それは何といっていいのだろうか……。
丸みをおびたそれは、その大きさにも関わらず決して重力に負けていなかった。
しかし、それでいて決して固そうではなく、むしろこれまで見た何よりも柔らかそうに俺には感じられたのである。
そう、卵白と砂糖で作るマシュマロという甘いお菓子が貴族で流行っているが、それよりもなお白く柔らかそうなイメージで……。
「きゃ、きゃあああああああああ!?」
「うわっぷ!?」
俺はとっさのことに全く反応すらできなかった。
「み、見ちゃダメです! アリアケさん、見ちゃだめです!!」
「むぐぐぐ……! むぐぐぐぐっぐ! (アリシア! 分かった、わかったから離してくれ……!)」
「はううううう! 恥ずかしいです! まだ、まだダメです! さすがに恥ずかしいですから! まだダメです!」
「むぐぐぐ……。むぐぐぐ……(ア、アリシア……。息が出来ないんだが……)」
アリシアは『ハラリ』によって混乱しているようで、俺を抱きしめたまま離そうとしない。
俺は彼女の余りに大きなそれに挟まれて息が出来ない。
ただ、本来ならば苦しいはずのそれは、なぜかどこか心地良く、そのまま俺の意識は次第に薄らいでいったのであった。
ちゅんちゅん……。
朝の小鳥たちのさえずりで俺は目を覚ました。
「俺は……あの後……」
アリシアの大きなアレによって意識を奪われてから記憶がない。どうやらもう朝のようだ。
「おお、生きていたか、アリアケ君! 昨日は大変だったようだなあ。ま、とりあえず朝食が出来ているから食べなさい!」
「はぁ」
俺は寝起きの中途半端な返事をしてから、ごそごそと起きだす。身支度を整えてからリビングへと行った。
パーティーメンバーがそろっている。
アリシアのご両親は別件があるとかで、先程どこかに行ったらしい。
「ア、アリアケさん、昨日はすすすすすすみませんでした! 私ったら混乱しちゃって……。く、苦しかったですよね!?」
「ああ、いや……」
実際のところ、そんなことは無かったので、どう返事しようか迷ってしまった。
まさか、ギモーヴのように柔らかかったとは言えない……。
と、そんな時、食事の手を止め、ラッカライが頭を下げる。
「先生もアリシアお姉様も本当にすみませんでした! 昨日はボクのせいで邪魔をしてしまいまして……」
「え? ラッカライがあの揺れを起こしたのか? 一体何があったんだ?」
しかし、
「そ、それはその……あの……えーっとー……」
なぜかラッカライが顔を赤らめてモジモジとしだす。
そして、言いだそうとするのだが、どうしても言い出せないと言った様子を何度も繰り返してから、
「い、言えません……ごめんなさい! も、もうちょっと時間をもらえれば、きっと言いますから!」
やはり顔を真っ赤にしたまま、俺の顔をちらちらと見ながら言うのだった。
どういうことだろうか?
すると、
「言えぬこともあるのじゃ。うむうむ。特に親は選べぬ悲しさよ、なのじゃ」
「コレットさんのおっしゃる通りです。本当に親は選べませんからね!」
「狼の我には分からぬ複雑な人間模様であるが、まぁ無理強いはよくなかろうて」
なぜかコレット、ローレライ、フェンリルが口をそろえて言ったのであった。
ふうむ。まぁ、良く分からんが、確かに人それぞれ事情はあるからな。
とはいえ、
「ラッカライ。それはお前の身に危険が迫るような、そういう話ではないんだな?」
それだけは確認しておかねば。
「は、はい! そこは大丈夫です! ……まずボクの心配をしてくれるなんて、やっぱり先生は優しいです」
そう言って改めて顔を赤くするのであった。
まぁ、ラッカライがそういうのならいいだろう。
なぜか他のメンバーも納得しているようだしなぁ。
俺とは関係のない何か特別な事情があるのかもしれんな。
まぁ、それはそれとして。
「教団本部に行くのは昼過ぎからだったな。それまで少し聖都を見ておきたいんだが。アリシア、案内してくれるか?」
「ええ、いいですよ。この聖女さんが色々と案内してあげましょう~」
「では、我もついて行こうかのう」
「他のみんなはどうする?」
「儂はちょっと昨日ドラゴン化して本気キックしたんでな。少し羽休みをしたいのじゃ。あっ、ガチの方じゃなくてな。ここで休んでおるって意味なのじゃ」
「ボクも昨日の疲れが残ってるみたいなんで、念のため休もうと思います」
「教皇の娘なんで、私は今更ですしね。コレットさん、ラッカライさんと一緒にいたいと思います! 少しお話をしたいと思ってましたから」
ふむ、では少しだけ別行動だな。
教会本部に行くときにまた合流するとしよう。
「では、アリシア、フェンリル。行くとするか」
こうして俺たち三人は聖都観光へと繰り出したのである。
~ラッカライ視点~
「では、アリシア、フェンリル。行くとするか」
そう言って先生たちは外出されました。
「ふ、ふう。何とかごまかせました~……」
まだ胸がどきどきしています。
昨夜何があったかなんて、先生に言えるわけありませんから!
「にゃっはははは! それにしてもラッカライ、昨日は良い啖呵だったのじゃ! さすが儂たちの弟子なのじゃ!」
「コ、コレットお姉様……もう、からかわないで下さいよ……」
ボクは昨日……。
いえ。
私は昨日、思わず口走った言葉に赤面してしまいます。
「そうですよ。凄いです。実の父親に向かってあんなにはっきり、熱く、アリアケ様への『愛』を宣言するなんて! 私も少し赤くなってしまいました!」
ローレライさんの言葉に、私は一層、顔を赤くするのでした。
そう、あれは、先生とアリシアお姉様がお風呂に入られてしばらく経ってからの事でした……。
~続く~
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