83.アリアケ無双
83.アリアケ無双
~ゲシュペント・ドラゴン 『シャーロット・デュープロイシス』視点~
「シャーロット様! 人間たちが私たちの接近に気づいて、戦闘体制に入ったようですよ!」
隣を飛ぶ俺の副官である、フレッドの言葉に、
「ふん。塵芥どもが群れて何もできぬであろう」
この俺。
ゲシュペント・ドラゴンの王、シャーロット・デュープロイシスはその数十メートルに及ぶ巨躯を青天にひるがえしながら、ついついあくびをかみ殺す。
「それにしても、人間如きが、この俺、黄金竜にたてつこうとは、笑い殺す気であろうか?」
俺は本当に彼らが何を考えているのか理解できずに首をひねる。
そして、もう一度、今度は本当に『ふわぁ』とあくびをした。
俺は地面に這いつくばるようにして、こちらに武器を掲げる人間たちを見下ろす。
「何の興味もわかない。歩くときにアリを気にする者がいないのと同じか」
そんなことをつぶやく。
すると隣のフレッドが、
「シャーロット様、しっかりしてくださいよ。ほら、攻撃してくるかもしれませんよ。あと、今回の目的を忘れないでくださいよ?」
「やれやれ、フレッドよ、分かっておるわ。だが、あのような非力な存在たちが本当に俺たちを撃退できると思っているのかと思うと……哀れなものだな」
「まぁ、そうですけどね」
フレッドがため息をついた。
上位種族たる我らドラゴン種族が、人ごとき下位種族にかまけていること自体、やや滑稽なことだ。
なぜならば、
「ここからブレスでも吐けば、それで聖都『セプテノ』は灰燼に帰すのだからな」
そう、それが事実だ。
選ばれし種族、我らゲシュペント・ドラゴンの翼には、人は誰も手を届かせることができないし、圧倒的な魔力は彼らの稚拙な攻撃魔法を全て弾いてしまう。
ゆえに最強。
誰も自分たちを傷つけることは出来ないのだ。
ゆえに退屈。
今回の遠征もすぐに目的を達してしまうことになるだろう。
なぜなら、彼らの意思など、我らの力の前にはあってないようなものなのだから。
「それよりも、今回の『地下封印遺物』の結界が解けかかっているという情報、本当なのだろうな?」
「調べさせましたが、間違いないようですよ。やはり人間如きでは無理だったみたいですね~。まあ300年封印したんだから、もった方じゃないですか?」
「まったく、封印すら出来ぬとは、嘆かわしい」
俺は嘆息する。
そんな心の動きに少し驚いた。
人間如きに俺が少しでも期待していたことに気づいたからだ。
300年前の盟約。
人と交わした盟約を今でも覚えている。
だが、それは人間たちが封印を続けられることが条件だった。
もしできないのならば、
「かの地ごと俺たちが大地を消し去ろう」
それをしないための盟約だった。だが、フレッドの情報によれば、その結界封印にはほころびが出始めている。封印が解放されるのも時間の問題だという。ならば、
「盟約はここに破棄された。先に破棄したのはお前たちだ人族よ」
「では、まずはどうされますか?」
どうするか? 決まっている。
「まずは大地の表層を俺のブレスで全て除去する。その後、地下封印遺物へ赴き、空間ごと破壊しつくそう」
「名案ですね」
「では早速始めるとしようか」
聖都セプテノの上空から、俺はこの世界に君臨するものとして睥睨する。人を哀れむ気持ちは少しはある。
彼らは非力なだけで罪はない。ただ、俺のように空を飛べず、この魔力の壁を突破することは出来ず、俺に触れることすら叶わないだけだ。
「さらばだ、人間た……」
「なんだ、もう帰るのか?」
「……なに?」
俺は吐こうとしていたブレスを思わず中断する。
声など聞こえて来るわけないからだ。
「ここは、空は、我らドラゴンの領域! そんな聖域に土足で踏み入る者がいては良いわけがっ……!」
「残念ながら」
その男は、腕組みをしながら俺の……、このゲシュペント・ドラゴンの前に悠然と浮かびながら余裕の笑みを浮かべていた。
俺の神域を我が物顔でっ……!
「ここはお前の庭などではないぞ、トカゲの王よ。お前が何をしに来たのか、聞いてやってもいい。ひとまず地上に降りて、会話でもしないか? もし、俺の言葉が理解できるのならばな。外交と言う言葉を知っているか?」
「なっ!?」
ドラゴンを前にして。
何よりも、神竜と呼ばれた自分を前にして、あり得ない言葉を並べたてられたことで、俺は思わず呻き、混乱してしまう。
何百年となかった心の動きに俺は戸惑う。
だが、そんな混乱している俺に、フレッドが慌てたように言った。
「そ、その男ですよ! シャーロット様! その男がアリアケ・ミハマです! コレット様が付き従っているという!」
「なにぃいいいい!?」
俺はガツンと頭を殴られたように、意識をはっきりさせる。
そう、今回の遠征の目的は2つある。
1つは聖都『セプテノ』の地下封印遺物の結界が弱まっているから、これを封印遺物ごと排除すること。
そして、もう1つ。
「1000年ぶりに見つかった我が娘、コレットを取り返すことだ!」
俺は思わず叫んでから、
「手間が省けたぞ! 許さんぞ、アリアケ・ミハマ! 無理やり隷属させている我が娘、コレットを返してもらうぞ! 下等な人族めが!」
だが、アリアケは、「はぁ?」と怪訝そうな瞳を、この王たる俺に向けてから、
「? 何を言っているんだお前? 囚われていたコレットを救った時に彼女が俺を乗り手として認めてくれたんだが? だから、お前にとやかく言われることじゃない……んだが、お前ってコレットの親なのか?」
なぁ!?
「う、嘘をつくな! お前ごとき人族がゲシュペント・ドラゴンの我が娘の乗り手なわけがない! 認めんぞ、絶対に認めん!」
しかし、奴はあろうことか俺を呆れたとばかりに目を細めると、
「やれやれ、頭の固い親というのは、種族を問わず話にならんなぁ。まぁ、コレットには悪いが、あいつの親とはいえ、少しお仕置きをしてから地上に連れて行って、それから対話することとしようか」
「お、おのれええええ! 人間如きがぁああああああああ! 許さんぞぉぉおおおおおおおおおお!」
俺は目の前の人間。怨敵アリアケ・ミハマに絶叫する。
そして、同時に先ほど中断したブレスを、最大限の火力まで高めていく。
「シャ、シャーロット様! 落ち着いてくださいよ!?」
「黙れ! ドラゴンの誇りを汚されて黙っていられるものかぁ!」
「やれやれ。こうも簡単にターゲットを変えることに成功できるとはな。ふっ、短気は損気だぞ? 俺の手の平の上で踊るのは楽しいか?」
し、死ねええええええええええ!
俺はこの空間ごと破壊する、地上最強のブレスをアリアケ・ミハマという、たかが一介の人間一人に発射したのである。
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