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炎焔の鎧  作者: なとな
第3章 祝福の証
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第3章6話 厄介聖女

 翌日の昼、俺は宿泊する宿の窓辺で外を眺めてると、庭先に訪れた女性を見た瞬間、彼女の元に歩いて行った。彼女は優美な容姿で、青い髪と銀色の瞳が鮮やかに映る。華奢な体つきと高貴な雰囲気が、まるで別世界からやってきたように見えた。深い青色のシルク素材のブラウスは優雅さと気品を漂わせ、銀色の装飾が施された袖口や襟元が彼女の上品さを引き立ててる。ブラックのスリムフィットパンツはシンプルで洗練された印象で、銀色の刺繍が足元に向かって広がり、華やかさを添えてる。足元には黒のローヒールが静かに地面を叩き、歩くたびに髪が軽く揺れる。


「お久しぶりです。シルヴィアさん」

「ええ、お久しぶりですアクイラ君」


 銀鉾のシルヴィア。地の聖女の付き人だ。でも、今日は何の用で来たんだろう?


「今日は、どうしましたか?」


 俺がそう尋ねると、彼女は微笑んで答えた。


「もちろんお迎えに参りましたわ」


 シルヴィアさんはそう言うと一礼し、俺たちは部屋から出るために立ち上がった。宿の狭い部屋を出る前に、俺はルーナとセレナを起こした。ルーナは薄い青のノースリーブトップに白い膝丈スカート、足元に白銀のショートブーツを履いてる。トップは肩が開き、胸元に星の刺繍が施され、幻想的な雰囲気を漂わせる。スカートは軽やかで馬車移動でも動きやすい。セレナは緑のクロップトップに茶色の膝丈スカート、膝下のレザーブーツだ。クロップトップには葉の模様が自然愛を表し、活動的な印象を与えてる。俺は黒のレザージャケットに赤い長袖シャツ、動きやすい灰色のズボンを履いてる。膝下まである革ブーツが足音を響かせ、右手首にはカイラさんからもらった炎の紋様が刻まれた革バングルが光る。馬車での長旅に備え、薄い防塵マントを肩に掛けてる。

 宿のおばちゃんに挨拶をして部屋を出ると、石畳の庭先に馬車が待っていた。馬の蹄が地面を叩く音が響き、木製の車輪が埃を巻き上げる。俺はルーナとセレナと一緒に馬車に乗り、御者はシルヴィアさんが務める。馬車の中では当然のように俺の両隣にルーナとセレナが座り、ルーナは可能な限り密着して腰に抱きつき、セレナは左腕をぎゅっと抱き締めてきた。馬車が揺れるたび、二人の体が俺に当たって気が散る。

 馬車はテミスの街を出て、少しすると森に入った。木々の間を抜ける道は狭く、葉擦れの音が耳に届く。しばらく進むと、森の中に大きな館が見えてきた。石造りの壁に蔦が絡まり、窓枠には古びた装飾が施されてる。


「ここは?」


 俺がそう尋ねると、シルヴィアさんは馬車を停めて答えた。


「ここはベラトリックス様のお屋敷です」


 聖女の屋敷は豪邸だ。でも、どこか寂しげな雰囲気が漂ってる。広い庭には手入れされた花壇があるが、人気はなく静かすぎる。俺たちは馬車から降り、屋敷の中に入ると、広いホールに案内された。床は磨かれた石で、壁には古い絵画が掛かり、天井にはシャンデリアが鈍く光ってる。俺とセレナは驚いて見回したが、ルーナは特に驚いてる様子はない。あまりこういう屋敷に興味がないのか。それとも何か知ってるのか……。


「ベラトリックス様、アクイラ様がお見えになりました」


 シルヴィアさんがそう言うと、奥から一人の女性が現れた。黒髪と緑色の瞳が輝いてる。彼女は深緑色のブラウスにブラックのロングスカートを履いてる。ブラウスは美しい光沢と細かい毛羽が特徴で、上品なレースが縁取られ、普段よりラフな印象だ。部屋着だろうか。ロングスカートは裾が広がり、華やかさを引き立ててる。足元には黒のローヒールが静かに床を叩く。地の聖女が嬉しそうに俺を見て歩いてきた。


「おはようございますアクイラ様。朝から会いに来て頂けるなんて至福ですわ」

「あっれおかっしいなぁ! 宿で呼び出されて馬車に乗ったらここに着いただけなんだけどなぁ!!!」


 俺がそう言うと、地の聖女はクスクスと笑う。相変わらず食えない人だ。俺はルーナとセレナに小声で告げた。


「相手は聖女様だ。一応権力者だからできる範囲で従うぞ?」


 俺がそう言うと、ルーナとセレナは頷く。俺と地の聖女の関係は単純に知人だ。決して恋人じゃない。


「それで? こんな朝っぱらから何の用だ?」


 俺がそう尋ねると、彼女は答えた。


「ええ、アクイラ様にはお願いしたいことがございますの」


 そして俺は屋敷の外のテラスに連れてこられた。テラスは木製の手すりが森に溶け込み、高台にあってテミスの街が一望できる。遠くに街の屋根が見え、朝霧が薄く漂ってる。ルーナとセレナもついてきて、俺の両側に立つ。


「実は私、最近悩みがあるのです」


 地の聖女がそう言った。彼女の表情からは深刻な悩みを抱えてるとは思えないが、俺は黙って聞くことにした。


「その悩みを解決するには俺の力が必要だと?」


 俺が尋ねると、彼女は頷いて続けた。


「ええ、その通りですわ」

「で、俺に何をさせたいんだ?」

「実は…………恋煩いを…………」

「てっしゅー」


 俺は玄関の方に体を向けて歩き始めるが、すでにそこにはシルヴィアさんとネレイドさんが待機してた。ネレイドさんは海色のタンクトップに深い青のレギンス、黒のロングブーツを履いてる。タンクトップには波の模様が施され、忍者らしい動きやすさが際立つ。腰に小さな革ポーチが揺れてる。こんなお遊びにまで付き合うなんて優しい従者だな。


「待って、お待ちになってください!」


 地の聖女がそう言って俺のジャケットの裾を掴んだ。こんなくだらないやり取りも久しぶりだなと思いながら、俺は仕方なく足を止めた。彼女の方を見ると、彼女は言った。


「私、本気で悩んでおりますの」

「そうか、とりあえずその恋煩いを解決するために何をすればいいんだ? 振ればいいのか? 新しい相手を探せばいいのか?」


 俺がそう言ってまた歩き出そうとすると、再び地の聖女に裾を掴まれた。彼女は言った。


「私と恋仲になって欲しいのですわ」


 ルーナが俺の腰を掴む力が強くなる。あれだけラブレターを貰ってるんだ。俺だってことは理解してる。それはいい。恋仲になるのはごめんだ。俺は沢山の女の子と肉体関係を持ちたい! でも聖女と恋仲になると、そういうことに制限が入る可能性がある。だから俺は言った。


「いや、それは無理」


 そう言って今度こそ立ち去ろうとするが、やはりネレイドさんとシルヴィアさんに止められた。左右から腕を掴まれ、身動きが取れなくなる。地の聖女が俺に顔を寄せてきた。彼女の黒髪が俺の頬にかかるほどの距離まで近づけられると、さすがに動揺した。彼女の吐息が近くて、甘い香りが鼻をくすぐる。

 でも、すぐに彼女は離れていったので、特に問題はないだろう。俺はとりあえず彼女を観察することにした。ここで少しでも油断すれば負けてしまうのは目に見えてるからな。そんな俺を見て地の聖女は言った。


「私は本気ですわ」

「まあ、遊びであの量のラブレターが届くことはないよな」

「一通も返事を頂いたことはございませんよ? だから私は悩んでいるのです」


 そうだな。一通も返事したことないのは俺が一番知ってる。だって面倒そうなんだもん。でも、それが聖女様の不興を買ってしまったらしい。大事な任務中だというのにこれである。


「多すぎるんだよ! 一日三通って!!」

「それだけアクイラ様の事をお慕いしております」


 地の聖女は笑顔でそう言った。俺は心の中でため息をつきながら彼女に言った。


「俺が言うのも何だが、俺は女好きだし聖女様が選ぶような男じゃないのだが」

「ええ、存じておりますわ。英雄、色を好むですものね?」


 地の聖女は笑顔でそう言った。俺は再びため息をつきながら彼女に言った。


「じゃあなんで?」

「貴方の悪いところを存じた上で、貴方を求めているのです。どうしようもないでしょう、私」


 地の聖女は笑顔でそう言った。俺はもう一度ため息をつきながら彼女に言った。


「…………本題は?」

「今回も失敗でしたか。それでは本題ですが、イオンさんとの接触はされましたよね? 単刀直入にお聞きしますが、勝てますか?」

「…………無理だな。あいつの実力はもう特級傭兵ランクダイヤモンド相当じゃねーか」


 俺がそう言うと、彼女は微笑みながら言った。


「そうでしょうね。それでどうされますか?」


 俺は今まで三人ほど特級傭兵ランクダイヤモンドと会ったことがある。森姫カイラと紫花のマーレア、それからルナリスの街にいる男だ。カイラさんはその速すぎる蹴りの異常性。マーレアさんのあれは未だによくわかってないが、空間を斬ることと感情を斬ること。おそらく斬ると宣言して斬れないものはないのだろう。とにかく、攻略手段を持ち合わせていないと絶対勝てない人種だ。イオンの魔法もそれと同じ。察知不可能な戦闘。


「攻略手段ならある。ここにいるセレナは風属性の感知魔法、風脈感知フェンプルセンシオを使える。姿が見えなくても、そこにいれば場所はわかる」


 問題は、セレナにしかわからないことだ。完全攻略じゃない。奴の弾丸を炎の鎧で受けても、常時全身に鎧を展開してなきゃいけない。馬車がテラス脇に停まり、セレナが荷物を下ろしてると、スカートが荷物袋に引っかかり、勢いよくめくれ上がった。薄緑のレース付きショーツが丸見えになり、引き締まった尻が露わに。


「うわっ! また!?」


 セレナは顔を真っ赤にして立ち上がり、スカートを直しながら俺を睨む。ルーナが静かに呟く。


「アクイラさん、見すぎ」


 地の聖女がクスクス笑い、シルヴィアさんが苦笑しながらセレナに近づいて荷物を拾う。問題点に地の聖女も気づいてるみたいだ。そもそも風脈感知フェンプルセンシオを使える風属性の魔法使いなんて無数にいるだろう。


「もし可能なら、聖女様の協力をお願いしたい」


 俺がそう言って頭を下げると、地の聖女は言った。


「私は別に構いませんが、条件が一つございます」


 俺は再び彼女の顔を見る。彼女は相変わらずの笑顔だ。


「私と二人きりでデートしてください」

聖女に傭兵ランクがあることと、ランクにばらつきがある理由。

聖女は聖女の能力が覚醒することで発覚することが多いのと、傭兵の依頼を受けるには結局、傭兵ギルドに登録する方が手っ取り早いからです。

そして聖女とは、ある特定の魔法を体得した人たちのことをさします。

火の聖女であれば浄化の炎と再生の炎。

地の聖女であれば神の実の育成と結界。

風の聖女であれば神風と聖なる伊吹。


上記のような魔法を体得した魔法使いが聖女として崇められます。

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