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炎焔の鎧  作者: なとな
第3章 祝福の証
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第3章2話 新生活➁

 俺はセレナに目をやった。薄緑のチュニックに膝丈のスカート、動きやすさを重視した黒いショートパンツが覗く姿が街の喧騒に映える。彼女のボウガンの扱いが上手くなってきたのは明らかだ。


「セレナ。ボウガンの扱いも上手くなってきたな」


 彼女は笑顔で応えた。


「ありがとねアクイラ」


 確かにセレナの飲み込みは早いし、センスもある。成長が目に見えて分かるのは喜ばしいことだ。俺は素直に褒めることにした。彼女は照れたように笑い、茶色のウェーブ髪が肩で揺れて、深い緑の瞳が俺を見つめてくる。


「えへへ。アタシね、アクイラに褒められると嬉しいんだ。だからさ、これからもいっぱい褒めて欲しいな」


 セレナがそう言って抱きついてきた。ノースリーブのレザーブラウス越しに柔らかい感触が伝わるが、俺は優しく受け止めてやった。それから俺たちは報酬を受け取るために傭兵ギルドに向かった。今回の依頼はブロコラーモンス討伐で、報酬はおおよそ銀貨一枚くらいだろう。

 ルーナが青いローブ風チュニックに白いスカーフを巻いた姿でセレナに近づいた。裾は膝上までで動きやすく、袖口に月と星の刺繍が施されてる。


「セレナちゃん、お疲れ様。セレナちゃんのおかげで危なくなく終わったね」


 セレナが明るく返した。


「ありがとルーナ!」


 ある程度一緒に生活してると、ルーナもセレナと気軽に話すようになった。銀髪を一部編み込んだ彼女の姿は、街中でも目を引く。俺たちは受付嬢のリズの元へ向かった。リズはエメラルドグリーンのロングドレスに白いエプロンを重ねた優雅な姿で立ってた。ドレスの肩は少し開き、金髪が編み込まれてゆるやかに揺れる。


「皆さん、お疲れ様です! お怪我はありませんでしたか?」


 リズが俺たちを見回すと、安心したように息を吐いた。明るい緑の瞳が輝いてる。手続きを済ませて報酬を受け取ると、銀貨一枚が手に入った。ランチ十食分くらいか。三人で食事しても三回は外食できる。たまには外食も悪くない。

 三人で街の食堂に向かった。昼時で店内は賑わってたが、何とか席を確保できた。料理を食べ始めると、セレナがすぐ口を開いた。


「ねえねえ! 次は何するの?」


 俺は少し考え込んだ。


「え? 何をすると言われてもな」


 異変調査は俺たちの専任じゃない。偶然二度巻き込まれただけだ。ギルド本部から今後どんな指令が来るかは分からない。俺が知る限り、地の聖女と風の聖女が異変について知ってたことから、教会側で聖女には情報が行ってるはずだ。付き人もそうだろう。ルナリスに常駐してる火の聖女も知ってる可能性はある。機会があれば聞いてみよう。

 セレナが頬を膨らませて不満そうに俺を見た。確かに考え事してたが、無視してたわけじゃない。俺は慌てて返事した。


「すまないな。正直街に留まってる限りはお手上げだ。リーシャたちと情報交換してるし、カイラさんからも提供してもらってるけど、各地でおかしな魔獣が増えてるってのは分かる。でも発生源が分からない以上どうしようもないな」


 セレナは不満そうな表情を浮かべた。まあ、実際そうだから仕方ない。おかしな魔獣が出現した場所をしらみつぶしに調べるなんて無駄足だ。


「そもそも魔の九将(マギス・ノナ)を全部俺たちが倒す必要はないんだ。二人倒してるだけでもおかしいくらいだぞ」


 倒すなら誰でもいい。居場所さえ分かれば俺も参加しないわけじゃない。ヴァルガスの野郎もそうだが、アウレリウスの奴みたいなのは放置できない。人間を魔獣に変えるなんて残酷な行いだ。レグルスの姿をコピーしたあれは、多分アウレリウスとは無関係だ。遠隔で繋がってるのに、アウレリウスは近くに集落があることを知らなかった。つまり魔族には、人間をコピーして遠隔操作する奴がいる。

 ルーナの両親の敵もいる。そいつは俺たちで倒してやりたい。

 セレナが少し顔を紅くして俺をちらちら見ながら言った。


「ま、アタシもワクワクする冒険とかヒリヒリする戦いがしたくて傭兵になったわけじゃないんだけどね」


 黙って会話を聞いてたルーナが俺の黒いショートチュニックをぎゅっと握った。なんだ、お前は俺専用の脈ありセンサーか?

 食事を終えた俺たちは一旦小屋に帰ることにした。三人で小屋に戻ると、久しぶりにカイラさんが帰ってきてた。深緑のチュニックにサイドスリットのミニスカート、薄緑のサンダルが彼女の華奢な体型に映える。肩に軽いショールを羽織り、銀髪が腰まで伸びて神秘的な輝きを放ってる。


「アクイラではないか! 改築が終わったようだな、私の部屋はそのままか?」


 俺は彼女の問いに答えた。


「ええ、一応」


 俺の寝室とカイラさんの部屋は隣だ。彼女は満足げに微笑むと、俺たち四人でお茶をすることになった。俺はお茶の支度をして、カイラさんとルーナがお菓子を持ってくる。セレナは食事担当だそうだ。

 俺がカイラさんに尋ねた。


「カイラさん、今日は何を持ってきたんですか?」


 彼女が答える。


「普通のクッキーだ」


 カイラさんが持ってきたのはチョコチップやナッツ入りのクッキーだ。ルーナは店で買ってきたアップルパイを持ってきた。俺用に甘くない菓子もあるみたいで、ありがたい。


「ありがとうございます」


 カイラさんは微笑みながら紅茶を一口飲んだ。


「ふむ、良い香りだ」


 俺は人数分の紅茶と菓子をテーブルに置いて席に座った。四人同時に食べ始めた。


「それでカイラさんの方はどうでした? 何か面白い情報はありましたか?」


 俺が尋ねると、カイラさんは顎に手を置いて難しい顔をした。


「いや、特にはないな。平和そのものだ。だが、何かの下準備中かもしれん。油断はするな?」


 彼女はお菓子をぱくりと食べた。強い傭兵だが、戦場は何が起こるか分からない。俺たちが一番よく知ってる。油断はできない。


「ところでアクイラよ。私にも構え! 最近構ってくれないではないか!」


 最近色々ありすぎて、カイラさんとは必要最低限の会話しかしてなかった。どうやら放置されてご立腹らしい。仕方ない人だ。


「カイラさん、そんなに拗ねないで下さいよ」


 彼女が少しムッとした顔で返す。


「別に拗ねてなどいない!」


 俺がさらに尋ねた。


「今晩は泊まりますか?」


 カイラさんが答える。


「無論だ…………構ってくれるのだろう?」


 セレナとルーナが羨ましそうに見てきた。俺が咳払いすると、二人は慌ててそっぽを向いた。可愛い奴らだ。俺は嫌いな甘いお菓子を口に運んだ。

 夕食の時間にはリーシャとエリスも帰ってきた。リーシャは灰色のロングチュニックに黒のレザーベスト、裾にスリットが入ったスカートを履いてる。エリスは緑のショートチュニックに茶色のタイツ、腰に小さなポーチを下げてる。二人はカイラさんが大好きで、カイラさんがいることに大喜びだ。洞窟の件で隷属の刻印から解放してくれた功労者と思われてるんだろう。

 魔の九将(マギス・ノナ)にとどめを刺したのは俺だが、カイラさんがいたからできたことだ。彼女たちもそれを知ってるから、俺にも好意的なんだろう。俺は自分の夕食を食べながらそう思った。カイラさんが俺を見てた。どうしたんだろう。


「どうしたんですか?」


 俺が尋ねると、カイラさんは少し照れた顔をした後、驚くことを言い始めた。


「あーん」


 彼女はフォークに刺さった肉を俺の目の前に差し出してきた。俺が動揺してると、フォークを口に突っ込まれ、無理やり肉を食べさせられた。


「どうだ? 美味しいか?」


 カイラさんは嬉しそうに微笑む。俺はもぐもぐと肉を咀嚼した。彼女は俺の頬についたソースを手で拭い、そのままぺろりと舐めた。


「うむ、美味だな!」


 全く困った人だ。でも悪い気はしない。この場にいる誰もが彼女には対抗しない。唯一ルーナが俺にがっちりしがみつき、俺は自分の物だと意思表示してるみたいだ。セレナはジーっと見つめてくるし、リーシャは何か言いたそうにモジモジしてる。エリスはニコニコだ。

 エリスだけは俺よりカイラさんの方が好きなんだろう。彼女が幸せそうで嬉しいみたいだ。

 その時、リーシャがスープを飲もうとして勢い余ってこぼしてしまった。灰色のチュニックにスープが飛び散り、黒のレザーベストを外すと、下の薄い布が濡れて胸の形が少し浮かび上がる。慌てて立ち上がった彼女はチュニックを引っ張って肌から離そうとした。


「うわっ! 熱い!」


 エリスが笑いながらティッシュを渡し、俺は視線を彼女の方にやった。カイラさんが満足げに頷き、ルーナが俺の腕をつねってきた。

 その夜、カイラさんが泊まることになった。ルーナが眠った後、俺は彼女の部屋に向かった。カイラさんは深緑のチュニックを脱いで、寝間着代わりの薄い白いシャツを着てた。俺の気配に気づくと嬉しそうに微笑む。

 俺はベッドの端に腰かけた。彼女は両手を広げて俺を迎え入れてくれた。俺も応えるように抱きしめた。少しお茶の香りがする髪が近くて、落ち着く。


「アクイラよ。やっと構ってくれるんだな」


 彼女が少しからかうように言うので、俺は苦笑した。


「最近忙しかったんで」


 カイラさんが笑う。


「ふふ、そうか。仕方ない人だな」


 そのまま少し話して、俺たちは眠りについた。

 翌朝、目を覚ますと隣にカイラさんがいた。薄いシャツ姿でまだ眠ってる。俺はそっと起き上がって朝の支度を始めた。


「ん……アクイラ? もう起きたのか?」


 眠そうな声で聞いてくるので、俺は答えた。


「ええ、朝食の準備でもしようかと」


 彼女は伸びをして起き上がった。


「そうか。手伝ってやろう」


 二人で朝風呂に入ることにした。風呂場で体を洗いながら、俺は彼女の長い銀髪を丁寧に洗ってやった。首や肩を洗うと、彼女はくすぐったそうに笑う。


「ふふ、気持ちいいな」


 俺が苦笑した。


「洗うだけでこんなに喜ぶとは」


 朝風呂を終えて、穏やかな朝が始まった。

日本円換算は以下の通りの予定です。

同じ金属で大きくなると10倍、大銅貨から小銀貨は五倍、大銀貨から小金貨は二倍です。

大金貨:10,000,000円

金貨 :1,000,000円

小金貨:100,000円

大銀貨:50,000円

銀貨 :5,000円

小銀貨:500円

大銅貨:100円

銅貨 :10円

小銅貨:1円

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