第8章11話 作戦決行
「城の破壊をですか? 何故、今を選ぶのかだけ伺っても?」
ゼフィラさんは驚きつつも冷静に質問してきた。俺はそれに答える。
「俺は残りの仲間を信じる事にしました。それに逸れている時間が長ければ、孤立している時間が長ければ余計に生存率が下がります。だから少しずつ破壊してこの城のゴタゴタを一気に片づけて。今生きている全員と再会します」
俺の発言に全員が考え込む。確かに一見すれば考えなしの発言でもあるが…………俺達もここに残れる時間は限られているのに、逸れているメンバーにこれ以上の時間はあるのだろうか。いっそのこと、この城を破壊しつつ探した方が効率もいい。なるべく下敷きにならないように注意しながらになるが…………ここに来たメンバーなら…………破壊される城の中からでも生存してくれるはずだ。
何よりこれ以上はぐれたままでいる方が、敵も少なくないし危険かもしれない。
「確かに……アクイラ様のいう通りですね」
「そうですね、私も賛成します」
「あたくしも異論はありませんわ」
「……私もです」
「私もアクイラの意見に賛成よ」
「私はアクイラの契約妖精だし異論はないわ」
「俺もだ。この城は破壊しよう」
全員が俺の提案に賛同してくれたようだ。現在このメンバーの中で指導者役となるゼフィラも頷いてくれた。これで作戦は決行できるな。
「みんな…………破壊活動にあたって今すぐ動けるか?」
すると全員快く頷いてくれた。こういう時、疲弊しているはずなのに立ち上がろうとしてくれるのは助かる。だって俺達だけで破壊するのも一苦労する想定なのに誰一人として不安そうな表情の奴はいない。
ジェンマ、クリスタラさん、ミズキさんはさすがに休ませることになったがアウロラとベラ、それからリヴァイアの魔法で治療と魔力回復をして貰って途中からでも参加してくれることになった。
じゃあまずはこの部屋の近くの塔からだろう。そして最初に向かうのは逸れたヴァルキリーたちの近くで彼女たちと合流しよう。
「邪悪なる炎、我が身を囲みて禍々しき鎧となれ。邪炎の鎧」
俺の手足に炎が包み込んだかと思うと、炎は一気に収束して俺の身体に纏った。……この鎧を纏っている間は魔力の消費が激しいな。でも今はこれしかないから我慢だ。
「俺が最初にぶっ壊す!! 後に続いてくれ!! 邪悪なる炎、我が拳に宿り、火球となりて敵を穿て。邪炎拳撃!!」
俺はそういって拳を繰り出すと拳に纏った炎は巨大な火球となって勢いよく壁にぶつかり、壁を破壊して大きな穴が開いた。
「続きましょう!! 鋏よ、広大な領域を断ち切り、我が道を切り開け。広域断斬」
マーレアさんの魔法で城壁が紙のように切り裂かれる。
「そうだな、とっとと終わらせちまうか。炎よ、嵐となりて敵を包み、すべてを灰に帰せ。炎嵐襲」
レグルスさんの魔法が発動すると、火でできた嵐が巻き起こり城の壁に激突すると一気に焼き尽くした。
「暗黒の風よ、夜を裂き、無数の花を咲かせよ。漆黒の旋風で全てを包み込め! 闇風咲花」
セリカが魔法を唱えると、黒い風が舞い上がる。…………そうか、セリカも解毒済みか。俺達姉弟は生まれつき属性とは別の魔力があった。その力を封じるためにアカンサに毒を与えられ封印していた。
そのせいで俺は炎焔の鎧しか使えなくなっていたし、セリカも碌な魔法が使えなかった。だが、解毒された俺たちの魔法は多種多様だ。と、言ってもセリカの魔法はそこまで見てきたわけじゃねーんだけどな。黒い風は城壁を侵食すると、どんどん風化させていく。はっきり言えば解毒済みのセリカの強さは解毒済みの俺以上だ。
「お前がいてくれて瓦礫の下敷きになる奴が出て気なそうで助かるぜ」
「全部は無理よ? それでも、助けられる限りは助けましょう」
それからも全員で破壊活動が始まった。
「聖なる風よ、汝の力を以て奇跡をもたらし、世界に希望を吹き込め。聖風奇跡」
「毒の針よ、無数の針となり、我が敵に嵐の如く襲い掛かれ。毒針嵐襲」
ゼフィラさんとアカンサの魔法もどんどん城壁を破壊し続けると遠くから声が聞こえる。魔族の群れだ。
「魔族が来たぞ!! 気をつけろ!!」
向こうからも魔法がいくつか飛んでくる。雷属性や水属性。バリエーション豊富だ。元々城破壊時には魔族と戦うことになる事も想定していた。想定外なのは俺達がメンバーが想定より逸れている事や、負傷者がいる状態で決行することになった事。
それでも全員が回復するまで、全員が合流するまで…………そんなことをしている余裕はない。だけど人が足りない。
「俺が魔族と戦う!! みんなは破壊を続けてくれ!!」
そう言って俺は魔族たち…………数は5人か……に襲い掛かった。
「はあっ!!」
俺は魔族の一人の顔面に蹴りを喰らわせると、そのまま空中で回転して他の魔族に踵落としを喰らわせ、さらにその勢いを利用してもう一人の魔族の腹に拳を繰り出す。そしてもう一人の魔族が俺に向けて魔法を放ったのでそれを避けてから、その腕を掴む。
「うおおりゃああ!!!」
そしてそのまま背負い投げをして地面に叩きつけると、奥にいた一人が剣で切りかかってきたところで俺は邪炎の鎧でその攻撃を受け止める。
「邪悪なる炎、我が意思を宿し、敵を焼き尽くせ! 邪炎乱舞!!」
剣ごとその魔族を焼き尽くし、そのまま地面に叩きつける。あと一人か。いや、倒しきれてない。まだ立ち上がる奴もいるな。
「ぐ……がはっ……な、なんだこの力は……」
俺はその魔族の首を摑み持ち上げると、そのまま壁に叩きつけた。そしてそのまま首を絞める。すると、そいつはすぐに動かなくなった。
「はあ……はあ……みんなは無事か?」
俺が周りを見渡すと、俺の真後ろには倒したはずの魔族が俺に襲い掛かってきていた。しかし、一瞬だけ冷たい魔力が俺を通り過ぎる。
「冷気よ、地を覆い、触れる者すべてを凍結せよ。氷結凍床」
「水の精霊よ、裁きの雨を降らせよ。水弾雨降」
冷気と水で瞬間凍結した魔族は俺の前で砕け散った。
「ご無事ですか?」
「油断しすぎですよ」
そこに立っていたのは、治療を受けていたクリスタラさんとミズキさんの二人だった。
「私達も城破壊をお手伝いしますが」
「もちろんいいよね?」
「ええ、お願いします」




