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炎焔の鎧  作者: なとな
第8章 帰還を目指して
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第8章5話 間接的な救難信号

「ルーナ……どこにいるんだ」


 俺はそう呟きながら、暗い通路を歩く。


 この魔王城は広い。しかも、内部の構造が複雑で、壁も壊せなくもないがかなり労力が必要だ。従って基本的には内部を歩き回るほかない。それに無駄に壊して行方不明の仲間をがれきの下に埋める可能性がある。


「そろそろ他のメンバーとも合流できないか?」


 俺が尋ねると返事をしたのはゼフィラだ。


「風は問題ないと言っています、気にせず周囲の偵察をしましょう」


 俺はなぜか風の聖女ゼフィラと二人きりで周囲の偵察をしていた。経緯は不明だが、現在、実質リーダーの火の聖女ヴァルキリーの采配により、俺とゼフィラがペアとなり、周囲の見回りをすることになったのだ。一定時間歩いたら、夜営を行っていたキャンプ地に戻る事になる。


 キャンプと言っても魔王城の屋内だが…………


「ゼフィラ、こっちだ」


 俺はゼフィラの手を引いて歩き始める。


「気付いています、正面に魔族が二体…………応戦しますか?」

「いや、危険だ。やり過ごそう」


 俺とゼフィラさんは二人で物陰に隠れる。距離が近くお互いの身体がぶつかり合う。ゼフィラさんが恥ずかしそうにしていたが無視だ。生存第一だし俺得だしな。後恥ずかしそうにしている美女は最高だからもっとくっついてやりたいくらいだ。


「近すぎませんか?」

「静かに…………」


 俺はゼフィラさんの口を手で塞ぐ。魔族たちが近くを歩いているようだ。あの様子ならキャンプ地の方に向かう事はなさそうだ。


「ふぅ、行ったな。もう大丈夫だ」


 俺はそう言って手を離す。ゼフィラさんは顔を赤らめて固まってしまったようだ。…………良いな、凄く良い。俺はゼフィラさんを抱き寄せた。彼女の細い体を感じる。この体温が心地よい。


「あ、あの」

「悪いな……ムラムラするんだ」

「え? 本当に悪いので離して貰えますか?」


 ゼフィラはそう言うが、俺は構わず彼女を抱き寄せた。彼女は抵抗しようとしたが力が弱く無意味に終わる。それに耳元で囁くだけで体を震わせているのを見ると彼女も興奮しているのかもしれない。


「嫌です」


 ゼフィラは俺を押しのける。さすがにやりすぎたか。

 名残惜しかったがゼフィラさんから離れる事にする。忘れそうになったがここは敵地だ。のんびりできる場所ではない。俺はゼフィラさんを抱き抱えるとキャンプ地へと戻る。


「戻ったな、アクイラ殿それからゼフィラ…………顔が紅いな? 何かあったのか?」


 俺達を迎え入れたのは聖女ヴァルキリーだった。彼女は俺とゼフィラさんの様子を見て不思議そうにしていた。


「何もなかったぞ」


 俺はそう言う。ゼフィラさんは恥ずかしそうに俯いている。その様子を見たヴァルキリーは何かを察したようにニヤニヤしていた。


「なんだゼフィラ…………祝福の証を渡したらどうだ?」


 ヴァルキリーがそう言うとゼフィラは顔を紅くして首を振る。


「できません! こんな方を祝福するだなんて!!!!!」


「アクイラ殿の事は嫌いか?」

「はい、大嫌いです!!」


 ゼフィラさんはそう言うと走り去ってしまった。それを見送るとヴァルキリーはククッと笑う。どうやらからかったらしい。俺の表情を見ると更に愉快そうにする彼女を見て最初のころと比べてかなり打ち解けた気がする。


「まあゼフィラのあの感じなら問題ないだろう」

「…………そうなのか?」

「ああ、あいつは嫌いなら本気で沈めるし逃げたりしないだろう。殺しに来るぞ」


 それは恐ろしい。なんにせよ本気で嫌われていないならいいか。良いのか?


 とにかく俺とゼフィラさんは休憩に入り、代わりにレグルスさんとマーレアさんの二人が周囲の警戒と偵察を行う事になった。俺は食事を手に取ると先ほど逃げ出したゼフィラさんを探す事にする。


「ゼフィラさん、どこだー」


 俺は適当に歩き回ると建物の陰に隠れている彼女をみつけたので後ろから声をかけた。すると彼女は驚いたのか飛び上がるようにしてこちらを振り向く。そして俺の顔を見るなり顔を赤くして睨みつけてきた。その目には涙が浮かんでいて今にも泣き出しそうだ。


「な、なんですか?」

「いや、ちょっと話がしたいなって……」

「……私は貴方と話すことはありませんが」


 そう言って立ち去ろうとする彼女。まあ完全に俺のせいか。仕方ない、彼女の食事は誰かに運んで貰うか。周囲を見渡すとネレイドさんが武器の手入れをしていた。彼女にお願いしよう。


「ネレイドさん」

「ああ、アクイラか。風の聖女様を相当怒らせているみたいだな」


 ネレイドさんはクローの刃先を手入れしながら俺にそう言う。どうやら見られていたらしい。


「まあそんなとこだ、悪いけどゼフィラさんの食事を代わりに持って行ってあげてくれないか?」

「心得た」


 そう言って彼女は豆のスープを手に取ってゼフィラさんの行った方に歩いて行った。さてと、俺は一人寂しく食事でもするか。

 食事を取り終わると、今度は地の聖女ベラトリックスに呼び出された。


「アクイラ様、緊急事態です。ジェンマの魔力が小さくなっています」

「わかるのか?」


 ジェンマは俺が契約している地属性の妖精族だ。今は離れ離れだが彼女は俺達と合流するための要と言ってもいい。ベラトリックスは俺の地の祝福の証を指さした。


「宝石の輝きが落ちているのは、契約妖精の力が弱まっている証です」

「それ、もっと早く教えてくれないか? いや、今まではそこまで気にする場面なんてなかったけど」


 しかし、ジェンマの魔力が落ちているなら問題だ。悠長に彼女が来るのを待っていられない。


「今すぐ出るぞ、ベラは行けるな?」

「もちろんです、今すぐ出発できるメンバーは限られていますがどうされますか?」

「最悪二人でも行くぞ!!」


 そう言って地の聖女ベラと地属性の妖精の魔力のパスによりジェンマの位置を割り出してもらう事にした。通常なら複数いる地属性の妖精の中からジェンマを探し出すのはかなり神経を使うみたいだから、ジェンマから俺達を探してもらう予定だったのだが、今回は仕方ない。


 周囲を見渡す。他に誰か来てくれないだろうか。すると視界に入ったのは静寂のイオンと氷雪のクリスタラさんだ。あの二人なら戦力的にも十分すぎる。


「二人とも! 緊急事態だついてきてくれ!」

「…………! …………」

「アクイラさんだけならともかく地の聖女様もですか、ご同行しましょう」


 イオンは黙っているがついてきてくれるみたいだ。…………いや、黙っているのはいつも通りだったわ。クリスタラさんは何か引っかかることを言っているが、ついてきてくれるならいいか。


「行くぞ!」


 俺達は地の聖女ベラを頼りにジェンマの魔力の痕跡を追い始めた。

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