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炎焔の鎧  作者: なとな
第7章 敵地
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第7章11話 渡された命《バトン》

 俺とリーナが監禁されていた部屋が突然崩壊した。何が起きたかわからないが、それよりなによりも俺を抱き締める謎の白骨死体。俺はあまりの恐怖に叫びそうになるが……


「あ……ああ……」


 その死体は、カイラさんが着ていそうな服を着ていた…………確証はないが…………きっと彼女だ。でもどうして? 何故彼女が白骨死体になってここにいるんだ?


「あ……ああ……」


 俺が恐怖で動けない中、リーナが声をかけてくる。


「アクイラ様…………状況はわかりませんがこれは逃げ出すチャンスではないでしょうか?」


 確かにそうだ。この機会を逃せば俺たちは一生ここに居続けることになるかもしれない。だが……この衣服と遺骨は持って帰らなければいけない気がした。俺はベッドシーツにそれらを包み込んで持ち運ぶ。


「アクイラ様?」

「行こう。リーナ」


 俺は彼女の遺骨を大事に抱えて部屋を出た。そして、崩れた壁の向こうに行く。この先になにがあるかわからないし、そもそもここがどこかもわかっていない。それでも、俺は……


「アクイラ様……大丈夫なのでしょうか?」

「わからないけど、でも行くしかないんだ」


 俺たちは廊下を歩く。何かの騒ぎのような気がしなくもない。


「騒がしい方に行ってみよう、交戦中だとしたらもしかしたら俺たちの救助かもしれないし、違ったとしても人間側かもしれない」

「わかりました」


 俺達は広間の近くの廊下まで行くと、何者かがうろうろしている。おそらく魔族だ。倒すか、やり過ごすか。…………魔族が通り過ぎてどこかに行くのをゆっくりと待つ。


 やり過ごそう。これから避けられない戦いがあるかもしれないし、ここで騒いで増援が来ても困る。


「よし、行くぞ」


 俺はリーナの手を引いて魔族をやり過ごす。そしてそのまま広間に足を踏み入れた。しかし、それが失敗だったようだ。囲まれた!?


「リーナ! 援護を頼む、炎の守護、我が身を囲みて鎧となれ。炎焔の鎧(エンフレクス・アルマ)

「良いですよ」


 リーナは無詠唱で光の剣を作成し、それらが宙を舞って周囲を切り刻む。俺は燃える拳で大型の魔族を殴り飛ばした。


「お前たちは!?」

「ここにも侵入者か?」


 どうやら俺たちを侵入者と勘違いしているようだ。だが、そういうことなら…………ここに侵入しているのは人間って考えて良さそうだな。


 鎧の焔を脚に移してカイラさん直伝の回し蹴りをして魔族の首を焼き切る。


「リーナ、こいつらを蹴散らしながら進むぞ」

「わかりました」


 俺とリーナは魔族の群れに突撃する。


「水よ、周囲の流れを集め、目の前の者を圧縮せよ。水圧圧縮スプリプリッサ

「光よ、我が身を照らし、光速の力を与えよ。光速突進ルミナス・チャージ

「水よ、我が呼び声に応えて波を起こせ。波紋生成ウェーヴ・クリエーティオ

「雷の力よ、嵐となりて我が敵を討て.雷撃嵐フルグラ・ストルム

「大地の砂よ、刃と化し、敵を切り裂け。砂塵乱刃サーブルス・アレーナ


 魔族たちが同時攻撃を仕掛けてきた。水や雷、砂までは対処できるが、光速で突進する技は危険だ。俺は鎧くを厚くし受け止める。


「リーナ! 反撃頼む」

「想定内です」


 リーナは光の壁を生成し、宙を舞う光の剣が一斉に魔族たちを襲う。…………俺、この女と戦ったんだよな。改めて加減されていたんだなと認識できる。


 この場にはセレナもテラもアカンサもジェンマもアウロラもいない。俺は炎焔の鎧(エンフレクス・アルマ)しか使えないから戦いにくい。今までにはたった一人、この魔法だけで戦ってきたはずなんだけどな。


「うおおお!」


 俺は雄たけびを上げながら魔族を殴り飛ばす。いつの間にか周囲には倒れた魔族が転がっていた。


「アクイラ様、お見事です」

「いや、ほとんどリーナのおかげだけどな」


 実際、俺はリーナを護りながら、リーナが遠隔で光の剣で魔族を切り刻んでいく。彼女は無詠唱で光の魔法を使いこなす魔法の天才だ。俺とリーナは魔族を倒しながら侵入者と呼ばれる人たちがいる場所に向かってみた。


「あっちか!」


 どうやらこの廊下の先が戦場のようだ。俺とリーナさんがたどり着いた先にいたのは…………大きな盾と長い刀を持つ大男、特級傭兵ランクダイヤモンド、盾将軍グラディアスその人だった。アスカリでの戦い以来の人が何故ここに?


「グラディアスさん!!」


 とにかく彼ほどの人が何故こんなところにいるかわからないけど、俺はそこに駆け寄った。


「アクイラか、無事だったようだな」

「貴方は音に聞こえし、大盾の傭兵様ですね?」

「吟遊詩人の歌か何かか? それは知らぬが盾を使う者に違いはない」


 渋いなこのおっさん。どうせ老けるならこの人みたいになりたいものだ。


「アクイラ無事だったのか?」


 そばに来たのはルナリスの街の中級傭兵ランクエメラルドで俺の友人の一人、風刃の騎士ゼファーだ。他にも広間ではリーシャや風の聖女であるゼフィラさんが戦っていた。


「アクイラ~!!!」


 そう叫びながら俺に飛びついてきたのは俺の契約妖精である暁の妖精アウロラだった。


「アウロラまで!? 状況を説明してくれないか?」

「いいわ、まず貴方とリーナ・アルゲンテアが拉致された後、私とジェンマは契約の都合で貴方の位置を把握できたのよ。その上で伯爵家の人間を救出の名目で多くの仲間を呼び出して救出に来ることができたわ」

「多くの…………仲間?」


 その言葉に違和感がある。ここにいるのはリーシャにゼフィラさん、ゼファーとグラディアスさん、そしてアウロラだけだ。


「アウロラ、他の仲間は?」

「最初は30人くらいできたわ」

「多いな」

「でも道中、私とジェンマが連れて行くメンバーを分けたのよ。そして私側の人間は…………この城を攻め込む際に分断されて今はこの六人よ…………それから二名、ヴァルカンって男とナリアってエルフの女の子が亡くなったわ」

「ヴァルカンが?」


 ヴァルカンはゼファーとイグニスと一緒に三人組でパーティを組んでいた男だ。ゼファーは少し悲しそうな表情をしている。


「どちらにせよ俺たちは依頼でここに来た。覚悟の上だ。だからせめて死んだ奴の事を報いるなら、お前とアルゲンテア嬢は生きて返さないとな。風よ、我が刃に宿り、天地を裂く竜巻となれ。渦巻く嵐で全てを飲み込め。竜巻大斧トルネウム・ハルペクス


 ゼファーがハルバートを振り回し竜巻を起こして魔族を吹き飛ばす。


「そうだ。しかしアクイラ。君は戦うんだな。あくまでこの大規模な救出も伯爵令嬢相手だからだ。お前はもう戦えるのだろう?」


 グラディアスさんがそういうと、俺は拳に魔力を流し込む。


「ええ、もちろんです。ここからは脱出だ! 行きましょう! 炎の守護、我が身を囲みて鎧となれ。炎焔の鎧(エンフレクス・アルマ)


 拳が燃え盛り、灼熱となる。そして俺は魔族に向かって駆けだした。

アクイラとリーナが最初に再会したのは、アウロラグループの一部だった。

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