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炎焔の鎧  作者: なとな
第7章 敵地
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第7章6話 時間停滞

 魔獣撃破後、我々は一人の傭兵を囲んだ。そう、闇鎖闘士レクサだ。


「貴様、この先を知っているな?」


 私がそう問いかけると、彼はニヤリと笑った。そして口を開く。


「知っているさ。だが、教えてはやれないな」


 私は拳を握りしめて、レクサを思い切り殴りつけた。しかし、その一撃は彼の張った闇の障壁で防がれてしまう。


「貴様! 何者だ!」


 殴りかかる私に周囲は止めようとしない。彼が何者かわからない以上、危険因子に変わりない。だが、彼は余裕の表情でこう答えたのだ。


「俺はレクサ……ただの傭兵だ」

「それではわからないだろう。貴様はこの先の事を知っていて、何故教えられない」


 私がそう言うと、一人の少女が私とレクサの間に入る。金髪に紅い瞳の女、煌姫リヴァイアだ。


「お待ちくださいカイラ様、レクサを信じてあげてください! 彼は悪い人じゃないんです!」

「では、リヴァイア。君は彼が何者か知っているのか?」


 私がそう質問すると、リヴァイアは少し戸惑いつつも答えた。


「えぇ……知っています」

「ならば答えられるだろう? こいつは何者なんだ?」


 私が再度質問するが、リヴァイアは答えようとしない。沈黙が続く。周囲にいた他の傭兵たちも不信感を抱いてレクサとリヴァイアまでも見つめている。


「リヴァイア、君は無関係だ。下がるんだ。それで? 俺が何者かだったなそれは重要な事か? 俺はこの地について知識があり、だがこの地を深く知らない。それだけさ」

「敵ではないという証拠はあるのか?」

「ないな。だが敵ではない」


 その一言に、私は拳を振るう。しかし、私の拳をレクサは受け止めると私に微笑んでみせる。


「証拠がなければ、殺すか?」


 その言葉に私は拳を引く。そして、静かに彼の目を見る。その目は鋭く冷たいがどこか悲しそうだ。彼は敵ではないのだろうと私は思ったのだ。だからこう言う。


「悪かったな。だが疑いが晴れたわけではない」

「肝に銘じよう、もとよりこうなることはわかっていた」


 私がそう言うと、レクサは笑みを浮かべた。そうして私達は歩き出すのだった。しばらく歩くと洞窟を抜け、そこは木々が枯れた荒野だ。そして周囲には魔族の群れだ。


「囲まれたか」


 数は十人。魔力量からして魔の九将(マギス・ノナ)ではなさそうだ。つまり絶望的とまでは言えないだろう。


 一人の魔族が我々に突撃してきた。


「炎よ、我が身を加速させん。炎速加護エクスプロス・アクセラ


 炎を纏い、加速する火属性の魔法だ。そんな相手の攻撃をいの一番に防いだのはアクイラの姉、黒影花のセリカだ。箒を振り風を作り出す。


「暗黒の風よ、夜を裂き、無数の花を咲かせよ。漆黒の旋風で全てを包み込め! 闇風咲花テネブリウム・ヴェントゥス・フロリス


 セリカの風属性の魔法で黒い風が吹き、魔族は全身から血しぶきをあげるが、あまり効果はなさそうだ。そしてほかの魔族たちも戦闘に参加し始めた。


「私も出ましょう」


 クリスタラが大斧で魔族に襲い掛かるが、魔族は両腕で頭部をかばう姿勢を取って詠唱する。


「大地の力よ、我が身を強固なものとならしめよ。土身硬化テラコープスハーデン


 あれは身体を硬化させる魔法だ。それによって斧の攻撃は防いだものの、冷気までは防げない。


「氷の斧よ、我が手に集い、凍てつく風で全てを凍結せよ。氷斧凍風グラキエス・セクリス・フリギドス

「なにぃ!?」


 地属性の魔法を使った魔族はたちまち凍り付く。そしてクリスタラと地属性の魔族の間に別の竜人がとびかかってきた。


「炎の力よ、我が拳に宿り、無限の火弾となりて連射せよ。火拳連射フレイム・エクスプロディウム


 龍人がその火属性の魔法を凍り付いた味方に放ち、氷を溶かそうとしているようだ。


「闇の力よ、鎖となりて我が敵を縛れ。闇鎖操オブスクルム・カテナ・マヌス


 しかし、その火をレクサの闇の鎖が防いで地属性の魔族は完全に凍り付いた。


「くそが!」

「倒してやる!!」


 飛びついてきたのは狼系の獣人型魔族。短剣を持っているようだ。


「毒よ、刃に宿り、傷口から侵入し、相手を内部から蝕め。毒刃侵食ベノム・インヴァディオ


 このまま先頭で戦っていたクリスタラに襲い掛かったが、彼女を庇うように間に入ったのは、アクイラの友人、中級傭兵ランクエメラルドの鋼腕イグニスだ。


「大地よ、我が拳に力を宿し、鋼の如き一撃を放たん。揺れろ、砕けよ、鋼撃地壊フェルム・テルラム・ストライク


 イグニスは拳を突きだすと、鋼の一撃が魔族に突き刺さる。その一撃で魔族は完全に倒れた。そしてレクサも戦いに参戦している。彼は鎖で敵を拘束し、闇の刃で切り裂いていく。しかし、敵はまだいる。


「みんな! 私が道を切り開く!」


 そう言って駆け出すと、敵の集団に飛び込んだ。私の速さならついてこれるものはいないだろう。そう思っていたが、一体だけ順応してくるではないか。それはゴツイ鎧をつけた魔族だ。


 いや、あれは虫型の魔族なのか? 鎧ではなく外殻のようだ。私とほとんど同じ速度で行動し、格闘戦を仕掛けてくるではないか。


「ぐぬう!」


 私の拳は敵の外殻に阻まれる。だが、衝撃までは殺せなかったようだ。私はそのまま敵の拳を掴んで投げ飛ばすが、すぐに立ち上がった魔族を見て思わず舌打ちしてしまう。


「ちっ! 厄介なヤツだ」


 敵の鎧のような外殻は堅く、並みの攻撃では通用しなさそうだ。ならばと私は我が最高の武器、蹴りを放つ必要がありそうだな。


「全力で蹴るぞ! ひれ伏せ!」


 私は自分の足を高速で振り下ろし、敵の頭部を蹴り飛ばした。その威力は絶大で、魔族の鎧のような外殻が吹き飛び、頭が割れて血が噴き出すほどだ。しかしそれでも倒れない虫型の魔族に私は驚愕していた。


「速さよ、我が身を軽やかにせよ、風よりも速く、大地を駆け抜けん。迅速化身ヴィータ・ヴェロキタス!」


 魔族が魔法を使い、私以上に速くなる。あまりの速さに目で追うのがやっとだ。奴は摩擦熱で燃え上がる蹴りを私に喰らわせた。


「くっ! ならば……一か八かだ!」


 私は魔族に飛びかかった。そして、奴の胴体を蹴り飛ばすと、そのまま駆け抜け飛び蹴りを喰らわせる。その威力は絶大で、敵の外殻が吹き飛び粉々になったではないか。しかしそれでもなお倒れない虫型の魔族に私はとどめを刺そうとする。だがその時だった。


 外殻が舞い、私に襲い掛かった。なんだあの魔法、いや魔族の生態か。


「…………これで最後だと良いが…………」


 私はもう一度魔法を使う。こんなところで使いたくなどなかったが、…………幸いここには私の事情を知るミズキとユウキの二人がいる。もし、声が届かなくなっても……………………


「皆! 下がってくれ、もう十分だ。私が一人でケリをつける」


 私の言葉に何かを察したミズキとユウキ。


「おやめくださいカイラ様!」

「そうですよ! 魔法を使わないでください!!」


 二人の声は届いているが、それでも私はもう迷わない。使うべき時は今だ!


「森羅万象よ、我が意に従い、その流れを止めよ。時間停滞テンポス・ステーシス


 停滞というが、完全に停滞する訳ではない。この魔法は私がまた一つ世界を置いていく魔法だ。決して解けることのない私以外鈍い世界。これは…………呪いだ。

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