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第五十五話 紅の中華娘

20000ポイント突破しました!!

10000に次ぐ大台って感じなのですごくうれしいです!

いつも評価やブクマなどありがとうございます……!



「えっと……なんて読むの? 名前」


(ワン)梓萱(ズーシェン)アル!」



 応接用のソファに座った今回の依頼主が、元気よく答えた。

 なんか独特な感じだけど、活発な人だ。

 お団子付きの長いツインテールを揺らし、身に着けているのは赤いチャイナドレス。チャイナドレスは袖が分離するような特殊な形状になっていて、それぞれ手の甲まで隠すほどの長さがあり、フリルの折り重なった袖口から白く細い指が覗いているのが見て取れる。

 それに加えて語尾に「アル」をつけるような口調。典型的な中華系キャラというやつだった。


 まあそれはともかく、作る武器についての詳細を聞いておこう。



「料理人みたいだけど、作るのは武器でいいんだよね」


「もちろん! 別に包丁を作ってもらおうってワケじゃないネ。必要なのは、食材を調達するための武器アル!」



 梓萱が机に両手をついて身を乗り出す。



「師匠言ってたアル。料理人の三カ条! 一、食材は鮮度が命! 二、食材は自分で獲るべし! 三、RP(ロールプレイ)するなら最後まで!」



 最後のはなんか違う気がする。しっかり守ってるんだろうなというのは伝わってくるけど。



「ちなみに、武器種は?」


「これネ!」



 梓萱が立ち上がってその場で一回転すると、袖で隠れた手の先に鋭い爪が現れた。袖の中に隠していた……というわけではなく、後ろ手でインベントリを操作していたのが見えたので回転しながら装備したのだろう。

 見た目はシンプルな手甲鉤タイプの爪だけど、袖で覆われているのもあって暗器っぽさが強く出ている。



「そんなに作ったことないかも、爪って。なにか使ってほしい素材とか持ってきてたりする?」


「そうネ……あ、そういえば使ってないものがあったアル」



 そう言って彼女が取り出したのは、動物の毛皮だった。

 色味は少し複雑だが、大まかに言えば黄色をベースに黒い縞模様が入っている感じ。



「虎の毛皮?」


「紅睨虎っていう虎ネ! 肉は美味しいし、内臓も癖は強いけどお酒に合う! 骨は虎骨酒(ここつしゅ)にしてもらったけど、皮は使い道が思いつかなかったから丁度いいアル」



 つまり、料理のために狩ったモンスターの余った部分ということだった。まあ毛皮は料理には使えないよね。

 と言っても、武器の素材としてならすんなり使えるというわけでもないんだけど……でも爪ならやりようはあるか。


 武器種『爪』には複数種類の形状がある。

 指先に直接装着するものや、握り込んで指の間から刃を出すもの、手全体を覆う手甲の延長線上にあるようなものまでさまざまだ。

 一応それぞれ異なるものとしての名称があったりもするのだけど、少なくともアリフラでは全て『爪』として扱われるようになっている。まあどの形状だろうと出来ることは変わらないし。


 と、そんなわけで爪系武器はかなり形状に融通が利くので、虎の皮を使うという条件があっても良い感じにできるはず。

 今梓萱が着ている服は戦闘用のメイン装備らしく、今後も使っていけるだけの性能があるらしいので、この装備との兼ね合いも考えながら案を出していくことにした。


 虎の皮は模様が特徴的なので、使うならなるべく広い範囲で使いたい。そうなると爪の表面に張り付けるようなものでは物足りないし、形状は手を覆うようなタイプに絞られる。

 そのうえで、必要な部分だけを覆うのか、全体を覆うのか、薄手にするか厚手にするかなど話し合いつつ色々と決めていって……最終的に二通りの案が生まれた。



「カッコいいのと可愛いの、どっちがいい?」


「うーん、悩むネ…………どちらかというと可愛いのが良いアル!」


「了解」



 方針は決まったので、早速作っていこう。


 さて、爪武器を作るにあたって、まずは手のサイズを測る必要がある。

 剣や弓のような武器に比べてフィット感みたいなものが露骨に影響してくる武器種なので、この作業は欠かせない。これまで爪武器をあまり作っていなかったのは、こういう理由で完全受注じゃないと作りにくいからだ。



「じゃあ、お手を拝借」



 そう言って、梓萱の袖の中に隠れた手を握ると、彼女は「きゃっ」と声を上げて飛びのいた。



「なっ、何するアル!?」


「えー……あの、手の大きさを測りたくって」


「だとしてもいきなり手を入れるなんてデリカシーに欠けるアル! スカートに手を突っ込むようなものネ!」


「そういうものなの?」


「えっ、私に聞かれても……どうなんでしょう?」



 もしかしたら常識なのかもしれないと思ってシダに聞いてみたけど特にそういうわけではないらしい。

 とはいえ、まあ確かに不躾すぎたかもしれない。

 今度は梓萱が袖をまくるのを待ってから手のサイズを測ることにした。

 試作用の安価な皮に手をのせて、型を取るような感じで線を引いていく。



「んー、くすぐったいアル~」


「あとちょっと。……よし、このぐらいかな」



 綺麗に手形を写し取ることができた。

 今回の武器はこれをもとに作っていくことになるので、ここが上手くいったのは幸先がいい。


 ……と、ここで重要なことを忘れていた。



「武器を作る様子を配信したいんだけど、大丈夫?」


「大丈夫アルよ! というか、私がいてもいいアルか? お邪魔なら一旦帰るアルよ」


「ううん。むしろ映ってくれたほうがにぎやかになるかなって思うし。あ、お店の宣伝とかしてもいいよ。効果があるかわからないけど」


「おー! それなら是非映りたいアル!」



 配信の許可をとることを忘れてはいけない。

 人によっては武器に関しての情報を開示したくない人もいるだろうし、その辺は事前に許可をとることで未然にトラブルを防ごうというわけだ。

 ……まあ、すべてシダの受け売りだけど。私一人だったらたぶんどっかのタイミングでやらかして炎上してたかもなあ。


 なんてことを考えつつ、私はウィンドウを操作して配信をスタートさせたのだった。

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