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炎の魔族3

 相対するトパーズの圧倒的な迫力に、ウィリアムは生まれて初めての苦戦を予想する。


 チラリと背後に視線を向けた。


 強敵との闘いは望む所だ・・・・・・しかし、この闘いが長引いてしまえば速見の矢が尽き、魔王サジタリウスの矢が二人に降り注ぐだろう。


 倒せなくても良い。魔王城にたどり着けさえすれば、魔王の注意は城への侵入者へと向けられ、速見がフリーになる。


 短時間で魔王城にたどり着くことは必須。炎の技との相性が悪いミルは魔王城に向かい、ウィリアムがこの場でトパーズと戦うことが最善・・・。


(しかし相手は魔王だ・・・ここで戦力を分散させてしまうと、ミルは魔王サジタリウスと1対1で戦う羽目になる)


 魔王と単機で相対するなど具の骨頂。恐らく相対したミルは殺されてしまうだろう。


 ウィリアムは選択を迫られている。


 どの選択をしても誰かが犠牲になる。


 その犠牲がウィリアム自身なら良い。しかし、ウィリアムの選択で犠牲となるのはウィリアム以外の誰かなのだ。


 人類最強の戦士の葛藤に、背後にいたミルは何かを察したように微笑んだ。


「お優しいですねウィリアム殿。心配ご無用・・・私が魔王城へ向かいましょう。きっとその選択が最善でしょうから」


「・・・・・・良いのか?」


 ウィリアムの問いに、珍しくミルは不敵な笑みを浮かべる。


「魔王サジタリウスは私の同郷です・・・・・・一言、言ってやりたい事があるのですよ」


「・・・わかった。頼むぞ、ミル」


 小さく頷いたミルを確認し、ウィリアムは大きく剣を振り上げた。


 グッと腕の筋肉をたわませ、全力で大剣を振り下ろす。


 尋常ならざる筋力で振るわれた剣先から発せられた風が、三人を囲うように燃えさかっていた炎の壁の一部を吹き飛ばす。


 魔王城へと向かう一本の道が出来上がった。


「行け!振り返るな!」


 ウィリアムの大声に、返答もせず走り出すミル。


 当然、逃しはしないとトパーズが動くが、ウィリアムがそのまま大剣をブンと降ってトパーズを威嚇した。


「浮気すんなって、つれねえな。お前の相手は俺だろ?」

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