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戦力差 2

(どんなに正確に矢を放っても所詮はただの矢、なればこそこの一矢はタダの牽制だ)


 矢を放つと同時に身を翻し、トパーズに向かって蛇行しながらダッシュをする。走りながらも矢筒から矢を取りだし、連続で矢を射つづけた。


 様々な方向から驚くべき正確さで急所を狙ってくる矢の雨。トパーズほどの上級魔族が、タダの矢に後れを取ることは無いが、いちいち急所を狙ってくるその狙撃はかなり厄介で、苛立ちながら矢を素手で払い続けるトパーズ。


「面倒な!! まずは貴様から殺してくれる!」


 ギラリと深紅の双眼を光らせ、トパーズは標的をミルから速見へと変えた。彼の右手に密度の高い炎が纏われる。


「消し炭になるがいい! ”ファイヤーナックル”」


 振るわれる右拳。拳に纏われていた密度の高い炎が速見に向けて放たれた。


 大気をジリジリと焦がすような高温の炎の塊。弱体化している今の速見など、一撃で燃やし尽くされてしまうだろう。


 敵の攻撃の照準を絞らせないようにと蛇行してダッシュをしている速見だが、いかんせんトパーズの攻撃速度が早すぎた。


 逃れようの無い死の予感。しかし速見はその足を止めなかった。矢筒から一本の矢を取りだし、右手でギュッと握り締める。


 炎の塊が速見に着弾しようとしたその瞬間、どこからかニュッと伸びてきた巨大な木が壁となり、速見を炎の驚異から防護する。


「なに!?」


 サッと視線を横に移動させるトパーズ。その視線の先には精霊術を行使しているミルの姿。


 しかしトパーズがミルの存在に気を取られたその一瞬を、速見が見逃すはずも無かった。


 ギュッと握り締めた矢を、どうやっても鍛えようのない生物の弱点・・・すなわちトパーズの右目へと思い切り突き立てる。


「っっ!? っギャァアァァアアアア!?!!!」


 響き渡るトパーズの絶叫。速見はトドメを刺そうと次の矢を構えるが、そうはさせじとトパーズは速見の体を蹴り飛ばした。


 魔族の怪力により蹴り飛ばされた速見は、重力に逆らって垂直に飛んでいき、数メートルほど吹き飛ばされた後地面に激突した。


 しかしトパーズにダメージも相当なようで、追撃などはせずに荒い息をしながら残った左目でギョロリと速見を睨み付ける。


「この・・・この俺様の右目を・・・・・・右目をぉおぉおお!!!」


 ボタボタと右目から多量の血を流しながら、怒りに震えるトパーズ。其の怒りに呼応するかのように、彼の体から灼熱の炎が吹き出した。


 先程よりも激しく燃え上がる炎を見て、表情が険しくなるミル。そして蹴り飛ばされた腹を押さえながら速見もゆっくりと立ち上がった。


(さて、不意打ちみてえな手段で一撃入れたが、同じ戦法はもう通じねえな・・・これからどうするか)


 睨み合う両者、再び激しい闘いが行われようとしたその時、速見の千里眼が空から飛来する何かを捉えた。


「!? 避けろミル!!」


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