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謝罪と提案



 シャルロッテは一人、部屋の隅で膝を抱えて小さく丸まっていた。可愛らしい目元にはくっきりと隈が浮かび、頬はわずかにやつれている。


 思考が上手くまとまらない。あの時のショックから、未だに立ち直れずにいるのだ。



――― 鬼 ―――



 自分の出生なんて、気に掛けたこともなかった。孤児だった彼女にとって、ひとりで生き延びなければならないという、困難な現実の前に、出生なんて些細な問題、気にする余裕がなかった・・・。


 おかしいとは、思っていた。


 まともな訓練も積んでいない、中途半端な術士であったシャルロッテが、急に無尽蔵な魔力を扱えるようになったとき・・・自分自身でも奇妙だとは思ったのだ。


 鬼の血を引いていると、あの時、アミュレットの守護者は話した。シャルロッテが無尽蔵な魔力を持っているのは、その血の影響であるのだと・・・。


 何のことは無い、シャルロッテが常人離れした魔力を持っていた理由は、彼女が常人では・・・それどころか人ですら無かったというだけの事。




 ”鬼”



 人ならざる存在・・・・・・。


「馬鹿みたい・・・何でこんな時に、自分が人じゃ無かったってだけで・・・こんなに落ち込んでるんだろう」


 今は世界の危機。


 シャルロッテが人であろうと、じゃなかろうと大した問題では無い。事実、マルクやハヤミに話したときも、二人は気にした様子も見せずにシャルロッテを慰めてくれた。


(・・・・・・何も問題は無い筈・・・・・・じゃあ何故私はこんなにもショックを受けているのだろう?)



 わからない。


 瞳からは一筋の涙がこぼれて床に落ちた。





―――ごめんなさいねシャルロッテさん。随分と落ち込ませてしまったようね。




 突如頭の中に鳴り響く声。シャルロッテがハッと視線を上げると、そこにはいつの間にか一人の女性が佇んでいた。


 静かに閉じられた両目。柔らかに流れる長髪。


 アミュレットの守護者 ”フィエゥ”


 彼女は、薄らと微笑を浮かべて口を開いた。


「こんばんは、良い夜ね」





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