Alice in Wonderland chapter_2
*過去編2です
■side:私立琵琶湖スポーツ女子学園3年リーダー 藤沢 花蓮
アリスさん主催という、この世のしがらみなど笑い飛ばすかのような空間。
『Alice in Wonderland』
正直LEGENDは色々と見えないものがあり過ぎて、こういったことが非常にやりにくい環境ですわ。
それをまあここまで堂々と秘密の集まりを、よく作ったなというのが私の感想ね。
最初は『よくもまあ馬鹿げたものを』と思ってましたが、スグにこの環境の有用性に気づきました。
皆さんもそうだったのか、スグに別々に行動し始めました。
まあ個人の趣味全開な集まりだけあって、個性的な集まりも非常に多い印象です。
また誰でも気軽に人を集めて対戦が出来るという環境も大きいと言えるでしょう。
今までそういう集まりが無かった訳ではありませんが、どちらかと言えば仲間内だけでやる小さなものばかり。
たまにあっても片側が『固定チーム』であるなど、純粋な集まりとは言いにくかったのです。
しかしここは、どうやら違うようで本当に自由そうに見えます。
各国のエース級選手達が装備などに関して語り合う内容など非常に興味がありますが、今の私はそれどころではありません。
誰か相談出来る相手は居ないものかと探していると、神宮寺さんが複数女性と話をしているのを見つけました。
その中に見たことがある人物を見つけ、思わず飛び入り参加をしてしまいました。
「もしかして『初代ミサイラー』の―――」
40代後半といった感じの見た目な女性は、優し気な笑顔で口元に人差し指を立てました。
『それ以上言わなくても解っているわ』
まるでそう言われているような仕草でしたわ。
よく見れば神宮寺さんが話をしている相手もかつて『滑腔砲の名手』と呼ばれた選手でした。
―――なるほど、彼女も考えることは同じということですか。
「で、何かしら?」
そう聞かれた私は、思い切って全てを話しました。
ミサイラーとしてやってきたこと。
最近、それが不調であること。
何より武装交換も視野に入れたが、やはりミサイルへの想いがあることなど。
全てを話し終えると『じゃあ装備を見せて』と言われ、今度は装備を見せることに。
装備を見せると『何かこだわりがあるの?』と聞かれ自分がメーカーの社長令嬢であり、自社宣伝を兼ねていると伝えました。
すると彼女は笑いながら『なら解決は簡単ね』と自信満々に返事をされて驚きましたわ。
それから延々と彼女の言う通りに、ひたすら的に向けてミサイルを撃ちまくりました。
1回撃つごとに角度なども変更しながらデータを取り続ける状態は、まるで兵器開発の現場のようでしたわね。
他社メーカー装備を使うことに抵抗もありましたが『データを取るだけだから』と言われてしまうと拒否も出来ません。
何より私のためにやって下さっているのですから。
こうして延々とデータを取り終えると、VR装置の機能を使って現状ミサイルのデータを調整しました。
購入武器に関しては、こうして一部データをカスタムして自分好みに寄せることが出来るのが購入の利点ですわ。
そうしてまた何度かデータを取り終えると、そのデータを渡されました。
『このデータを元に装備として作ってみなさい。アナタなら出来るでしょう?』
そう言われて受け取ったデータをスグに開発部に持ち込んで試作品を作らせてみました。
それを持ち込んで、またデータを取ってを繰り返しつつ、ミサイルの運用論を教えて貰います。
単純に火力で押し込むのではなく、上手く心理戦を入れることがコツだと。
そして完成して製品化され、売り出された新しいミサイルシリーズ。
それらは、一部ミサイラー達に熱狂的なファンを生んだものの、やはり全体的な売り上げとしてはイマイチでした。
しかしそれも次第に変化するでしょう。
新ミサイル装備を使用した実戦訓練。
エース級選手達の対戦に参加し、それを見て貰いながらアドバイスを貰うという夢のような時間。
LEGENDのこと以外に何も考えず、ただひたすらに目の前の勝負に集中する。
本当に久しぶりの感覚でした。
最初は『ミサイラー』としての弱点を的確に突かれて負けてばかりでしたが、次第にそれも改善していきました。
最終的には、普通の撃ち合いで負けることが無くなり撃破率もかなり高くなっていましたわ。
『これでもう大丈夫そうね』
そう言う彼女に私は『ありがとうございました』と頭を下げる。
すると彼女は『気にしないで』と言いながらも私の両肩に手を置く。
『まだまだミサイラーが通用するって所を世界中に見せつけてあげなさい』
そう言われて胸が熱くなる。
私は、彼女から『ミサイラー』を託されたのですわ!
―――そして全国高校生LEGEND大会。
最後にメンバー決めの紅白戦を行い、そして一軍と二軍を決定しましたわ。
これは『努力をして一軍を目指せ』という明確な目標を作る意味でも必要だとして新たに決めました。
運が良いのか、悪いのか。
私は一軍としてベンチスタートになりました。
ここで監督からの話もあって新たに神宮寺さんにリーダーを引き継いで貰うことになりました。
リーダーを引き継いで貰う際に『卒業までにアナタを超えてみせます』と言われて驚きましたわ。
やはり彼女は、そうでなくては。
気づけば私も3年生。
今年が高校生最後の夏。
本当にあっという間だった。
「ですが、まだまだここから……ですわ!」
■side:大阪闘将ジャガーズ 堀川 茜
プロになって忙しい。
そういう話はよく聞くが、自分がその立場になって解る。
「忙しすぎるわ、ボケェ~!!」
VRのおかげで移動が無いことも多いが、それでも試合と練習だけでなくファンへのイベントなども入るため非常に多忙だ。
しかもウチは、マスコミの取材も無駄に多い。
それだけ人気なのだと思えばありがたい話ではあるのだが、ウチに『霧島アリス』を聞くのは違うと思う。
そんなに知りたいのなら本人に聞け!と何度心の中で思ったことか。
そんな頃だった。
アリスの奴から謎の招待を受けた。
『琵琶湖女子の紅白戦で2枠空いてる』
東京ガッツに行った舞の奴まで呼び出されたようで『私も暇じゃない』と言っていた。
聞いた所によると、前にも練習試合で呼び出され琵琶湖女子と東京ガッツが対戦したことがあるという。
何それ、見たかった!
何やおもろいことしてるなぁ~と言いつつも、今回はウチと舞の2人がその空いている2枠に入るだけらしい。
舞と2人で『プロを呼び出すなんて、ええ身分やなぁ』とアリスの奴に皮肉を言ってみたが鼻で笑われた。
まったく可愛げのない。
そして2人でプロで成長したウチらを見せつけてやろうと意気込んで琵琶湖女子の紅白戦に参加した。
思えば、アリスの奴の態度で気づくべきやった。
その後、全国高校生LEGEND大会で後輩の武宮菫が、面白いぐらいに運の無い引きを披露しているのを見て思わず電話をかけた。
『お前、ホント運が無いなぁ~www』
思わずそう言ってしまった。
かなり怒っていたのである程度は謝っておいたが……。
あの日のことは未だに覚えてる。
本当にあれが今の琵琶湖女子の実力だというのなら、大阪日吉は残念ながら圧倒的敗北となるやろう。
あの時は、思わず舞と2人でアリスに『どういうこっちゃ!』と詰め寄ったが『気が向いたら教える』とはぐらかされてしまった。
「いや~、ホント運無いでぇ~、菫」
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