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第79話

北条(ほうじょう) (あお):琵琶湖女子1年。姉の方。中学時代からのLEGEND経験者だが、凡人レベル。サポーター。

北条(ほうじょう) (あか):妹の方。姉と同じく凡人レベルのアタッカー。琵琶湖女子のレベルの高さに驚いている。






■side:私立琵琶湖スポーツ女子学園1年 北条 紅






「あぁー!めんどい!ウザい!」


 先ほどから先輩達の愚痴が煩い。

 気持ちは解らなくはないが、そう感情的に言われても『ええ、そうですね』としか言えないわ。

 最近、練習と称して様々な提案をするようになった前橋監督。

 その1つに『超至近距離戦闘』という練習方法が導入された。

 これは普通の撃ち合いではなく限られた狭い限定的なエリアで密集して戦うというもの。

 ただでさえ相手との距離が近いせいで予想外が起こりやすいのに、人数が多くて邪魔で仕方がない。

 よほど上手く立ち回らなければ効率よく全員がしっかり攻撃出来なくなっている。


 そんなことを考えていると、目の前の壁裏から音が聞こえたのでスグにアサルトライフルからショットガンに持ち替える。

 飛び出してきたのは、黒澤先輩だ。

 互いに連続でショットガンを撃ち合う。


 1発目、互いに命中。

 2発目、私だけ外してしまう。

 3発目、互いに命中。


 これにより私の耐久値は4割で黒澤先輩は6割程度になった。

 続けてそのままお互いに下がりながらも連射を止めない。

 4発目を互いに撃った瞬間。

 横から私を突き飛ばす勢いで大盾を構えた姉さんがカバーに入ってきた。

 そのおかげで私の弾は外れて相手の弾は姉さんの大盾に阻まれる。


 私はそのまま軽く2歩下がりながらリロードをしつつ、その場でくるりと一回転しながらショットガンを構える。

 姉さんは飛び出してきた勢いのまま、通り過ぎるように移動してくれた。

 おかげで相手は姉さんの大盾が通り過ぎた瞬間、正面に一回転し終えて銃を構えた私が現れる。

 大盾が出てきて仕切り直しだと思って銃口を下げてしまった先輩は驚いていた。


 そのまま引き金を引く。

 確実に決めたと思った一撃だったが、その直後に相手側から飛び出してきた大盾を持ったサポーターに阻止された。


「誠子、助かった!」


「さっさと後退するわよ!」


 どうやら飛び出してきたのは、長野先輩みたい。

 長野先輩はアタッカーだったらしいが、ここ最近はサポーターをすることが多い。

 先輩達は下がることを選択したようだが、ここで逃がすのはもったいない。

 リロードする時間が無いからショットガンを投げ捨て、アサルトライフルを持つ。

 そして前に出ながら銃を構えて―――


「モラッタヨー!」


 気づけば目の前に大型ブレードが迫っていた。

 飛び出しながらの横薙ぎだろうか。

 これは回避出来な―――


「てりゃー!!」


 突然衝撃が走ったかと思えば、横から大場先輩にタックルを決められていた。

 私が倒れた瞬間、その上を横薙ぎが通過する。


「マダマダー!」


 強引に向きを変えながら今度は上段からの振り下ろしが大場先輩に迫る。


「舐めんなぁー!!」


 大場先輩は起き上がりながらポンプ式ショットガンを下から上へと勢い良く構えて、そのまま引き金を引いた。

 銃声と共に金属音が周囲に響く。


「What!?」


 上段からのブレードにショットガンの弾が直撃したようで、大きく弾かれ仰け反る形となったシャーロットさん。

 しかし驚きの表情で体勢を崩しているにもかかわらず、器用にそのままブースター全開で離脱していく。

 ショットガンで攻撃を止めた先輩も凄いが、今のでブレードを手放さなかったのも凄いと思う。

 更にそこから形勢不利と判断して逃げ出すまでも早い。


 そこに相手側から大谷先輩が出てきて、アサルトライフルで彼女の離脱を支援し始めた。

 私と姉さんは、その場で撃ち返しながら大場先輩の離脱を援護する。

 弾幕量ならこちらが上である以上、流石に押せると思ったがスグに相手側から南先輩が出てきて大谷先輩のカバーに入った。

 これで引き分けかと思った瞬間、反対側から一気に新城先輩が飛び出してきてガトリングを構えた。


 『しまった!』


 片側の撃ち合いに集中し過ぎた結果、逆側からの奇襲を許してしまう結果に―――


「私相手に随分と余裕じゃないの!」


 ガトリングを撃とうとしていた新城先輩は、スグにそれを止めてブースターで回避行動に入る。

 その瞬間、大型マシンガンを片手で撃ちながらもう片方の腕で腕部2連ロケット砲を撃つ笠井先輩が突っ込んできた。


「意外としぶといなぁ~!」


「今日こそ撃破判定貰いますよ!」


 互いに会話をしながらブースターを使い高速移動しつつ銃撃戦を行っている。


「今のうちに補給して立て直すよ!」


 先輩にそう言われ、急いで補給作業を行う。

 この常に精神を削られるような戦いの中で、更に先輩達はハンデを背負っている。

 例えば大場先輩・黒澤先輩はマスターキー禁止。

 大谷先輩はグレネード禁止など、それぞれの得意武器が禁止や制限をかけられていた。

 それでもここまで戦えるのだから、正直凄いと思う。


「紅、大丈夫?」


 私が一切話をしないからか、心配した姉さんが声をかけてきた。


「大丈夫よ、姉さん。少し考え事をしてただけ」


「考え事?」


「先輩達は、凄いなって」


「紅も十分頑張ってるわ」


「……うん。でもそれじゃダメなんじゃないかって」


「……紅」


「頑張ってまずはレギュラー取らなきゃ」


「そうね。頑張りましょう、2人で」


「ええ、そうね。頑張りましょう……2人で」






■side:私立琵琶湖スポーツ女子学園2年 霧島 アリス






 クソ狭い空間に押し込まれたチームメイト達が、カオスな戦いを繰り広げている。

 『超至近距離戦闘』という練習法。

 これで前衛の連中に咄嗟の対応力や接近戦での競り合いを大々的に学んで貰おうという感じだ。

 ついでに仲間の位置や動きを見ないとロクに射線も取れないから、常に連携・把握もするようになるだろう。

 いい加減、人の話を聞かない連中も多いから、この際徹底して苦労して頂きましょうかね。


 宮本恵理・三峰灯里・卯月結菜は、この際真面目に基礎から再度叩き直すということで監督に預けた。

 新入生は仕方がないが、2人に関しては変に戦えるようになった関係で逆に基本が崩れてきている。

 この辺りで一度徹底的に初心に返って貰うのも悪くはないだろう。


 千佳と神宮寺詩に藤沢先輩の3人は、射撃練習に投げ込んだ。

 マップ内を動き回る的を高台から狙い撃つだけの練習。

 しかし的を全て破壊するためにかかったタイムや弾数に命中率などを正確に出す。

 それが一定以上にならない限りは、メイン起用は難しいと監督を通して伝えてある。


 千佳は、何故か普段命中しない癖に変な所では謎の命中精度を発揮するクソ鳥みたいな特性がある。

 神宮寺詩は、対戦車砲を撃つ馬鹿げた一撃固定砲台のせいで一発を狙い過ぎる。

 実戦では、じっくり狙える方が稀だ。

 その辺の甘さは初心者らしいと思うが、まあその初心者が家庭教師つけただけでここまでやれているのだ。

 それなりに才能があるのか、それとも家庭教師が優秀なのか。

 しばらく練習を繰り返していれば、その辺も解って来るだろう。

 藤沢先輩は、ミサイルをロックオンするのが遅い。

 確実なタイミングを狙い過ぎたり、ギリギリロックオンを維持するような細かな調整が出来ないみたいだ。

 ミサイルは現在、ロックオン完了しなければ撃てない誘導型しかない。

 そのため如何にロックオンを素早く、そして障害物などを無視して行えるかにかかっている。

 確実に当てる判断は出来るが、ギリギリを攻めるようなしぶとさが無い。

 この辺が改善出来ると、また大きく違ってくるのだが……。


 私個人は、ある程度一人で練習するだけなので全体に混ざることはほとんどない。

 むしろようやく補欠枠に人が座れるのだ。

 私が出続ける必要などないだろう。

 だからこそ空いた時間でこうして監督の手伝いをしている訳なのだが……。


 以前なら、時間が空けばさっさと帰ってきただろう。

 今のように他人の面倒なんて見ようと思わなかった。


「う~ん、何かしら変化したってことかしら?」


 自分のことは自分が一番よく解る……なんてのは嘘ね。

 解らないものは、自分自身のことでも解らないものだわ。





誤字・脱字などありましたら修正機能もしくは感想などからお知らせ下さい。


*次話 2021/04/18 02:00予定

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― 新着の感想 ―
[一言] キルハウス式強化訓練。瞬間判断力や連携力は養われる。あとやる訓練ならアリスVS他全員。 勝敗は全員はフラッグか指揮官撃破なら釣り合いは取れるが、全員倒すでも出来そうな…
[一言] 完全にコーチですね。 そう言えば今の所コーチ無しで監督だけで回してるんですね 出てきていないサポーター二人、杉山、南は何をやらされてるのやら
[一言] 安田のイメージがドラ○エの遊び人 うんのよさが高くそのうち賢者に転職しそうなかんじ
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