第176話 世界大会・スペイン戦 終了
「webコミックガンマ」様で連載中だったコミカライズ版ですが、サイト移転となります。
【新サイト名】
竹コミ!
【URL】
https://takecomic.jp/
サイト統合による移転ですので、旧Webコミックガンマ様のサイトは閉鎖となります。
ご注意下さい。
■side:U-18スペイン代表リーダー バネッサ・ブランチ・ロバト
ログと戦況を確認しながら思わずため息を吐く。
―――これはもう負けだな
主要メンバーを中心に中央が完全に潰された。
対してこちらは押し込むことも出来ず、カウンターで司令塔を攻撃したくても手数不足。
逆に相手側が一斉攻撃を仕掛けてくる確率の方が高いぐらいだ。
「だから真面目にやれとあれほど言ったのに……」
前に戦った時と比べて明らかに相手側の練度が違う。
これは反省会が長くなりそうだ。
そんなことを考えながらも意識を切り替える。
―――せめて、一矢報いなければ
「これは、スペイン代表としてでもリーダーとしてでもない、私個人のプライドの問題だ」
相手との撃ち合いを引き分けに持ち込み、もう何度目になるかわからない補給を挟む。
どうせ負けるというのなら、最後に自らの意思で、自らの戦いを。
■side:U-18日本代表リーダー 谷町 香織
相手との撃ち合いで引き分けを取り、少し下がって補給を行う。
そろそろ渋谷の奴が厳しくなっている。
あくまでサポートをさせていたが、相手側のストライカーをサポーターで押さえろというのがそもそも無茶ぶりだったり。
それをここまでやれたのだから、将来が楽しみでもある。
しかしそれもここまでだ。
私の直感が、そろそろ相手が仕掛けてくると警告してくる。
全体を見ればもう日本の勝ちは近い。
だからこそ最後の逆転を狙ってきてもおかしくはない。
その時に真っ先に狙われるのは私。
「悪いけど、交代して貰うわよ」
「ま、まだ行けます!」
「根性は評価するけど、せめてその疲れた顔を隠せるようになってからにしなさい」
VRである以上、本来なら痛みも疲れも無いはずだが、LEGENDでは当然ながら疲れが再現されている。
まあ、当たり前の話だ。
疲れないのならずっと全力で動き回れてしまうし、人間外の動きも可能となってくる。
それでは本来の競技性もおかしくなってしまう。
なので緊張感のある試合を続ければ当然疲れるのは仕方が無いこと。
特に彼女はこれからの選手だ。
「……了解」
不満があろうがリーダーの言うことは絶対。
文句があるなら自分がリーダーになればいい。
もしくは交代させられないだけの評価を得ればいい。
SP 渋谷 ⇒ SP 南
選手交代と共に配置に就いた京子だが、スグに自分を抑えにくるストライカー相手に射程外からサブマシンガンを撃つ。
当然ながらノーダメージであり、相手が大した火力が無いと踏んで相手のストライカーが前に出てくる。
援護したいところだが、下手に陣形を崩せば相手リーダーによる突撃を許しかねない。
あの接近戦を重視した装備で前に出て来られると非常に厳しい。
そうしているうちに相手ストライカーが発電所を上手く利用して前に出てきて圧力をかけてくる。
「これ以上は―――」
「問題ないよ」
これ以上の押し込みは厳しいと言うより先に問題ないという京子。
次の瞬間、相手側が更に前に出ると同時に相手リーダーも反対側から姿を現す。
間違いなくここで押し込むつもりだろう。
そんな中で、相手STが更に1歩踏み込んだ瞬間だった。
京子が何かを相手に向かって大きく投げる。
一瞬、手榴弾かと思ったが彼女はサポーター。
相手もそれに気づいたのか、回避しようとしていた動きが止まる。
そして相手の足元に落ちたのは
「―――弾薬回復?」
相手がそう呟いたように見えた。
そう、相手の足元に落ちたのは弾薬回復の設置装備。
もちろん味方にのみ有効で相手側のは使用できないもの。
攻撃力も無ければ、攻撃して破壊しても消滅するだけで爆発するなんてこともない。
「―――はいッ!」
誰もが疑問に思っている瞬間、今度は彼女の声と共に宙を舞うものが1つ。
―――彼女のサブマシンガンである
それが相手に向かって放物線を描いて飛んでいく。
もちろん彼女が投げたものだ。
何故?
どうして?
誰もがそう思うだろう。
だが次の瞬間、相手の表情は驚愕に染まる。
地面を這うように肩部3連ミサイルが相手ストライカーに迫っていた。
地面への視線誘導から、今度は上空への誘導。
そして本命はそれに隠れてのまた地面からの強襲。
慌てて相手STはブースターを使って逃げようとするが、踏み込んでしまった1歩がそれを許さない。
加速が乗る瞬間、ミサイルの方が僅かに速く、相手に命中して爆発する。
爆発による煙が晴れるのを待つまでもなく、キルログが更新された。
相手の後ろから更に圧をかけようとしていた相手サポーターが、あまりの出来事に停止している。
そこに予備のサブマシンガンを取り出して牽制射撃を行う京子。
まさかの展開に相手側は完全に委縮して後退していく。
■side:U-18スペイン代表リーダー バネッサ・ブランチ・ロバト
完全に勢いが殺されてしまった。
一気に押し込んで相手リーダーとの一騎打ちに持ち込んで撃破を取る。
そこから中央に側面から圧をかけつつ司令塔攻撃をチラつかせて相手の戦力分散を狙う。
そんな最後の抵抗も、まさかこんな最初の最初で躓くなんて。
私はリーダーのみが使える権限を使って監督を呼び出す。
「―――満足した、ということか?」
「―――意地を見せる前に終わってしまいました」
「……そうか」
苦笑しながらそう言うと、次の瞬間……会場全体が湧いた。
―――スペイン側のサレンダー(降参)申請がありました
―――よって、この時点で日本側の勝利となります
「……ああ、せめてアリスのやつは引きずり出したかったかな」




