第174話 世界大会・スペイン戦 開始4
■side:U-18スペイン代表 マリサ・パンプロナ・バラゲロ
「あ~も~!! 押し込まれ過ぎだってのッ!!」
「言われなくてもわかってる!」
「なら前出るか援護してよ!」
「十分してるわよ!」
相手のメンバーが交代してから急に圧が強くなった。
何とか押し戻そうとするも、先ほどまでの相手とは明らかに違う動きで決定打に欠ける。
かといって強引に踏み込めばマズイことになる可能性が高い。
大型マシンガンを両手に持ち、サイドアームのロケットランチャーを使用した撃ち合い。
これは本来の私のスタイルではない。
マシンガンを牽制に、腰の大型警棒で突撃する。
その対応不能な奇襲こそ本来の持ち味なのだが、それが全く出来ない。
マリアネラが片側のカバーに盗られたのが一番痛い。
グロリアだけじゃ相手の火力を抑えきれない。
エルミニアに補助をして欲しい所だが、相手のブレイカーとの撃ち合いに忙しいそうな。
対して相手は人をかけて押し込んできている。
人数差があるリーダー側から攻勢を強めて欲しいけど、それが出来ればとっくにやっているだろう。
「ムカつく、ムカつく、ムカつくッ!!」
■side:U-18日本女子代表 大野 晶
「クッソ~! もうちょっとなのにっ!!」
壁を利用してマシンガンのリロードを行う。
相手を適度に押し込めたまでは良いが、撃破が難しい。
アレだけ動き回りながらオーバーヒートもせず致命傷を回避し続ける。
言うのは簡単だけどそれをやれるのは相手が一流である証拠。
「恋ッ!そっちは!?」
「まだまだぁッ!!」
「相手の援護や狙撃にも注意しろよ!」
誠子のやつも綺麗な援護をしてくれている。
だからこそ押し込め続けていられる訳で。
「隙あらば潰したいんだけどなぁ!」
「なら隙を作るしかないね!」
恋がガトリングを派手に撃って三騎士の1人を抑えている。
桂子や千恵美が2人がかりで1人を押し込んでいるみたいだし、先を越される訳にはいかない。
かといってここで恋との連携を切る訳にもいかないのが悲しい所だ。
「じゃあ盛大に隙とやらを作ってやるとしましょうかね!」
■side:U-18日本女子代表 一条 恋
これだ! これだ!! これだ!!
「最高の撃ち合いじゃないかッ!!!」
互いにほとんど隠れずにスラスター等を利用してひたすらに撃ち合う。
ジワジワ耐久値が削れるものの、回復支援を利用して上手く調整している。
なので互いに危なくなる局面は、ほとんどない。
あっても互いにカバーが入るからだ。
まあ千佳が謎の地雷を投げたりしているのが意味不明だけども、それも些細な話ね。
「さあ!もっと撃ち合おう!三騎士なんでしょ?強いんでしょ?」
こんなにも激しく、こんなにも滾る勝負なんて滅多にない!!
「そらそらそらそらぁぁぁぁ!!!」
ガトリング1本でやってきたんだ。
オーバーヒートなんてさせない。
かといって弾幕を緩めない。
ギリギリの所で発射し続ける。
緩急をつけて、丁寧に、しっかりと。
それが出来なきゃ、アリスどころか香織にすら安定して勝てない。
「最強のストライカーは、私だぁぁぁぁ!!!」
まずは三騎士から仕留めて見せるッ!!
■side:U-18スペイン代表 グロリア・ルエラス・オレジャナ
「こんな無様な戦い……ッ!!」
驚くほど動きの良い相手に翻弄され続け、ロクに前に出ることすら出来ない。
味方の援護があっても押し込めない。
三騎士と言われ、常にトップだと胸を張り続けた我々が、まさかこうも押し込められるとは。
だが、負ける訳にはいかない。
それは我々のプライドが許さない。
「舐めるなよぉっ!!」
私だって両肩ガトリング使いとして今までやってきたんだ。
同じ両肩ガトリング使いに負ける訳がない。
互いにフェイントをかけつつ、武器破壊を狙い、致命傷を狙い、押し込むことを狙って撃ち合う。
時には他の援護を一瞬入れたりして精神的なプレッシャーも与える。
定期的に変な地雷が転がってくることもあるが、そんなもの注意していれば何の問題もない。
むしろ先手を取って射撃して破壊すれば相手の方が煙幕によって動きにくくなるだろう。
数的不利など何の問題もない。
いつの通りだ。
ただ多少相手が強いだけ、粘るだけだ。
相手の弾幕をスラスター等を駆使して最小限のダメージで回避し続ける。
時には相手の支援にも牽制することでフリーな状態を作らない。
耐久値には常に気を使って回復エリアを引っかけるようにして回復させるのも忘れない。
大丈夫だ、行ける、やれる。
そうして何度目かの撃ち合いで互いに一時的に下がる。
回復後、スグに出て撃ち合いを再開する。
大盾がある分だけ、こちら側が撃ち合いでは強い。
その分だけ向こうは火力があるが、その効果が完全に発揮されなければ問題ない。
たまに支援からミサイルやアタッカーから射撃等が来るが、ブースターを利用しつつ両肩ガトリングで迎撃する。
次に正面から撃ち合いをしてくる相手と撃ち合いつつ―――
ビー!ビー!
不意に鳴るロックオンアラート。
流石に回避しきれず直撃は回避したものの、爆風をまともに受けてしまう。
それにより大型マシンガンを手放してしまうが、直撃よりはマシだ。
「ちっ!!」
舌打ちしつつ腰の大型警棒を持ち、動きを変化させる。
両肩ガトリングを撃ちながら突撃するフリをしつつ一定の距離を取って装備を整え直す。
そう意識を切り替えた時、流石に相手のガトリング使いが突撃してくる。
しかし警棒をチラつかせて―――
「嘘でしょ!?」
相手は接近戦になることを選んだのか大型ガトリングと両肩ガトリングをオーバーヒートさせるつもりで撃ち込んでくる。
「良い度胸じゃないっ!!」
大盾でそれを防ぎながら、大型警棒の一撃によるカウンターを狙う。
ボロボロの盾を相手に投げつけるようにしながら突進する。
盾がガトリングの弾を可能な限り引き受けてくれている間に距離を詰める。
それでも相手は獰猛な笑みを浮かべながらこちらに向けての射撃を止めようとしない。
しかしこちらは両肩ガトリングをパージしてより身軽になる。
急激に上昇する速度に対応しきれまい。
目まぐるしく変化する状況を整理しながらも、常に最善の一手を打つ。
最悪の状態だが、相手を撃破出来る状態まで持ってこれた。
「これで終わりだぁぁぁぁ!!!」
大型警棒で相手を―――
ガンッ!!!
その瞬間、腕に衝撃が走った。
綺麗に警棒に命中したためか、手に持っていられずに手から離れる。
思わず弾が飛んできた方角を見れば―――
「地雷女がぁぁぁぁ!!!」
武装を無くした私が出来たのは、ただ叫ぶことだけだった。




