第170話 世界大会・スペイン戦 開始直前
本日2025/04/16㈬
最強の女傭兵 近未来でスポーツ美少女となる
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■side:U-18日本女子代表 渋谷 鈴
流石に世界大会ともなれば歓声が凄い。
何より今回は強豪のスペインと優勝候補と言われている我ら日本の試合。
公式戦では試合をしていないことになっているが、去年の非公式戦にて完敗した相手。
「非公式なリベンジマッチって所かな」
そう言いながらも試合開始までの時間に装備のチェックを行いつつ、リーダーの話を聞く。
今回の研究所マップは、横に広く伸びるタイプであり総力戦になりやすい。
また射線が結構あちこちに通っているため不意打ちが怖いのもある。
そうした前情報を思い出しながらも、この前の出来事がふと頭をよぎる。
それは単純だが非常に面倒くさい話だった。
スペイン戦が決まった直後、恐らくスタメンの変更が起きるだろうと思っていた頃。
突然、岡部が監督に直談判をし出した。
「スペイン戦でもいけます!」
突然の、あまりにも直球の言葉に誰もが言葉を失う。
しかし次の瞬間、何人かが監督に近づいて同じことを言い出した。
確かに私も出たいし席を譲りたくはない。
でもそれを決めるのは監督だし、そうならないために試合でアピール出来る機会は十二分に貰ったはずだ。
監督も困ったような顔をしながら悩んでいた。
そりゃそうだ。
席には限りがあるし、全員が座れる訳でもない。
しかもそれで負ければ采配ミスとして監督が責任を取らされる。
……だが。
周囲がそんな露骨なアピールで出場できるというのなら話は別。
私もアピールした方が良いのか?と思った瞬間。
「はいはい、そういうのは監督がじっくり悩んで決めることよ」
パンパンと手を叩きながらリーダーの谷町先輩。
それで周囲に沈黙が広がる。
通常ならばこれで終了となる所だが、今回は違った。
「致命的なミスも無く、ここまで順調にやってこれてます! なのに前座のような扱いは納得できません!」
岡部の主張に彼女の後ろでアピールしていたメンバーも、その通りだという感じで頷いている。
確かに私達は目立ったミスもしてないし、ここまで勝ち残って来たという自信もあった。
なので彼女の言っていることを間違っているとは思わない。
特にここ最近は自分でも動きが良いと思える。
今ならレギュラー争いにも十分食い込めるはず。
そう思って私も声を上げようとして―――
「―――別に、いいんじゃない?」
そう言いながら現れたアリスに全員が停止する。
「自信があるみたいだし、そのままで」
「いや、でもそれで追い込まれた戦場を残して『勝てません』って言われても困るんだけど?」
「それよりもまだまだ出てない人が多いのに、どうするのよ?」
アリスの肯定的な意見とは違い、ずっとベンチが飽きてきたのか未出場選手達が否定的な意見を出し始めた。
確かにまだ14人ほど出場していない。
全員入れ替えてもまだ控え選手が出来てしまうのだ。
「それならいっそルール決めれば?」
まとまりそうにない話になりかけた所で、一条先輩が提案をする。
「……例えば?」
「占有率5割を1分以上切ればアウトとか」
占有率とは、マップ全体を100%として際にどちらがどの程度押し込んでいるかを示すデータだ。
通常なら4~6割で推移し、それ以上傾けば基本的には逆転不可能と言われている。
「甘い、それに点数差30P負けの場合もアウトで」
「それなら撃破取られた奴も問答無用でアウトで良いよね?」
「……居るだけの役立たずもいらないんだけど?」
「それは判断が公平じゃないじゃん」
「ベンチの満場一致で役立たず判定アウトなら?」
「やっぱりそれだと目立ってる兵科が有利じゃない」
互いに思う所があったのか、それとも単に出たいだけなのか。
様々な意見が飛び交う。
「とりあえず意見は聞いた。で、リーダーはどう思う?」
「いっそアウトラインは決めても良いかと」
監督の問いかけに谷町先輩が反応する。
そうしてアウトラインが明確に決まった。
・撃破取られた奴は即交代
・占有率5割切れ1分以上でリーダー指定のメンバーが交代。
・30P差つけられた時点でリーダー以外が全員交代。
この3つになった。
正直不満が無い訳ではない。
しかし要はそうならなければ良いだけ。
…………………
……………
………
気づけば各種紹介が終了し、改めてルール説明などが行われていた。
これが終われば試合開始だ。
「全員、決して気を抜かないこと。相手は今までとは全く違うと考えなさい!」
「はい!」
「作戦は予定通り! さあ、行くわよッ!!」
―――試合開始
開始の合図が鳴り響く。
その瞬間、全員が一気に飛び出す。
勝つのは、私達だッ!!
■side:スペイン代表・リーダー バネッサ・ブランチ・ロバト
開始までの説明の中、気の抜けた会話をしているメンバーに注意をしていた。
「舐めてかかって迷惑だけはかけないでね」
「大丈夫、瞬殺してやるわ」
「そうそう、リーダーは神経質過ぎるんだよ」
本当に大丈夫か?と思う反面、まあ試合では普通に戦ってくれているので大丈夫と思うことにする。
ただこの慢心が負けに繋がらないか?という一抹の不安が頭をよぎる。
「私達もここまで必死に練習してきました。自分を信じれば大丈夫です」
エルミニアの言葉で確かにと思いつつ、メンバーを見れば全員やる気に満ちていた。
そう、私達はアリスを引き摺り出し、倒すことで最強を証明するために頑張ってきたのだ。
「流石に最初から出てくることはないでしょう。だから彼女を必ず戦場に出させてやるわよ」
「はい!」
元気の良い掛け声と共に全員がスタート位置へとつく。
―――試合開始
開始の合図が鳴り響く。
その瞬間、全員が一気に飛び出す。
今回のマップは横に大きく広がるマップだ。
一番遠い発電所までの開幕ダッシュ中に、相手が見えてくる。
その瞬間から撃ち合いが発生する。
互いに牽制射撃をしつつも持ち場に付いた者から挨拶代わりとばかりに、最大火力に切り替えてのいきなり撃破を狙うスタイル。
開幕から激しい撃ち合いに観客が持ち上がる。
そんな中でも少しずつ互いの配置が見えてきた。
そして正面に居る相手を見て思わず笑みを浮かべる。
「気の強い相手は嫌いじゃないわ」
リーダーでありながら、一番奥の逃げにくい発電所の取り合いに行った私も相当馬鹿だと思う。
でもその私と同じような馬鹿に出会えるとは。
―――そう、目の前の相手は全体に指示を出しながら大型マシンガンを撃ってくる相手。
日本側のリーダーだ。
まさか最前線でリーダー同士で撃ち合うことになるとはね。
「さあ、盛大に踊りましょう? もちろん拒否なんてしないわよね?」
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