第164話 NEWS・LEGEND:3年目世界大会
■NEWS・LEGEND:世界大会版
「それでは次のコーナです!」
江口梨々花の元気の良い声でスタジオに様々なLEGENDプレイヤー達の顔が映し出される。
「ついに始まりました世界大会!!その予選を特集したLEGENDニュース拡大版です!」
江口のアクションでモニターのようなものが出てくる。
「それでは昨日行われました、アメリカVSアルゼンチンの試合を見ていきましょう」
「まずは開幕3分におきたこの速攻」
編集された試合映像が流れだすと大館次郎が解説に加わる。
「アルゼンチンのエースによるこの見事な一撃!」
画面では高台に陣取っているアルゼンチンのリーダーでありエースがスナイパーライフルによる狙撃でアメリカのアタッカーの頭部を綺麗に撃ち抜いていた。
それによって早々に点数が動く。
「続けてその10分後、このシーン!」
「アメリカの連携を上手くアルゼンチンが抑え込んでいますねぇ」
前衛3人による一斉攻撃を少し下がりながらも綺麗に処理するアルゼンチン。
一見するとアルゼンチン優位に見える試合展開。
「ここから少し膠着状態が続いた開始36分!」
相手選手が下がったのを見たアメリカの選手が前に詰めようとして一斉反撃を受ける。
慌てて下がろうとした時に後ろからカバーに来た選手とぶつかってしまう。
お互いによろけた所に集中砲火を受けて2人とも倒されてしまった。
「ここでまさかの連携ミスにより手痛い20P!」
「これで点差は30Pになりましたね」
江口がフォローに入りつつ解説を続ける2人。
もはや番組当時のLEGENDをあまり知らなかった2人ではない。
「そしてここでアルゼンチンは選手交代を行います」
「大盾持ちのSTを増やすことで防御重視に切り替えたようにも見えますね」
「このままアルゼンチン優位で終わるかと思われた試合残り10分!」
「アメリカ代表ジェシカ・ラングフォードのこのスーパープレイッ!!」
画面上では、撃ち合いで時間稼ぎをしようとしていたST3人に銃撃して連携を崩した瞬間に突っ込むエースの姿。
彼女は正面のSTに射撃で牽制だけ行い、怯んだ隙に奥側の2人目に盾ごとタックルを決める。
そして体制が崩れた相手に大型マシンガンによるゼロ距離射撃で撃破すると、先ほど牽制した相手にその場で振り向きざまに大盾を投げつけた。
これにより相手は何とか盾で防御したものの、その質量によってまた体制を崩した。
それを確認することもなく自分に両肩ミサイルを構える3人目のSTに向かってブースターで加速する。
そしてサブアームが持っていた盾を手にして発射した瞬間のミサイルに投げつけることで爆発を起こした。
目の前でミサイルが爆発したことで自傷ダメージと煙による視界不良で怯む相手。
そこに大型警棒を振りかぶったジェシカが煙の中から現れた。
一瞬の出来事に回避出来ず倒れる相手。
一番最初に牽制されたSTは援護しようと銃を構えたが丁度爆発が起きてしまい、誤射を恐れて撃つことが出来なかった。
しかし仲間の死亡ログを見た瞬間に煙に向けて発砲する。
この辺りの反応は、流石は世界大会に出てくる選手だけはある。
金属音が響いてヒットしたと確信した相手だが、煙の隙間から見えた光景に驚く。
見えたのは障害物に立てかけられた大型マシンガンがこちらの攻撃でスクラップになったものだったからだ。
こうして致命的な隙を晒したことにより、上から落下してくるジェシカを回避することは出来なかった。
「たった1人で30Pを豪快に取り返しました!」
「そこに更に追撃とばかりにアメリカ代表のシャーロット選手によるこの猛攻!」
ジェシカの一方的な蹂躙に相手が怯んだ瞬間に突撃し、立て直そうとしている相手エースを一瞬で仕留め、そのまま反転して後ろから相手前衛に大型ブレードで斬りかかった。
それにより一瞬で壊滅するアルゼンチン。
「ここで一気にアメリカが大逆転からの一斉攻撃で試合終了!」
「流石はアメリカといった見事な逆転劇でした」
「やはりアメリカは強いですねぇ~」
「そうですね。色々言われますが実力で言えばトップクラスを維持し続けていますからね」
「日本とは予選グループが違うため当たらなかったのは、良かったと思っていいわけですね?」
「日本の勝利を願う我々からすれば、当然そうなります」
「そんな今年の予選ですが、ちょっとしたアクシデントもありました」
映し出された映像は残念そうにしているスイス代表。
「昨日行われる予定だった韓国対スイスの試合でしたが、まさかのVR装置の故障により延期となりました。」
「スイス側の設備の問題らしく、7日後に改めて試合ということになったようです」
「今回のVR装置の故障、これはどういったものなのでしょうか?」
「ここでVR装置に詳しい専門家の方をお呼びしましょう」
「VR装置の開発を手掛ける―――」
高視聴率を継続している番組が流れている頃。
レギュラーに選ばれず補欠扱いになっていたU-18女子日本代表選手達は、自主練習に取り組んでいた。
明らかに実力が足りておらず、このままでは出番もなく終了するのでは?
そんな恐怖が彼女達を突き動かしていた。
―――3回目の世界大会が、始まった。
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