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第143話






■side:とある大手雑誌編集長






 ここ最近、LEGENDの注目度が上がったと感じる。

 雑誌の売り上げもそうだが、LEGENDを取り扱う所が増えた。

 それ自体は大変素晴らしいことではあるのだが、その分だけハードルも上がったようにも思う。


「さて、どうしたものか……」


 今年の国内大会や世界のLEGEND状況を伝える雑誌をまとめる編集長は非常に悩んでいた。

 一番人気のある全国LEGEND高校生大会の予選すら始まっていない状況で、どこを取り上げればいいのか。

 とりあえず琵琶湖女子は確定として、他にどこが伸びるのか。

 そしてどれぐらいの枠をそこに使うのかによって雑誌の方向性が決まってくる。

 何より頭を悩ませている問題が―――


「黄若晴だ!やはり彼女しか居ないッ!!」


 目の前のテレビでは中国語での実況と共に試合映像が流れている。

 それは今年早くも中国で開かれた国内大会だ。


 王蘭玲の援護を受けた黄若晴が銃弾の中を突撃し、相手を大型ブレードで切り伏せていた。

 打倒霧島アリスを掲げているらしい黄若晴は、更に成長した接近スタイルで国内敵無しとなっている。

 海外でも彼女に張り合える選手など片手で数えられる程度だろう。

 ルール改定で接近武器なども破壊可能になったが、そんな影響など関係無いとばかりに戦う姿はまさにエース。

 もし日本が中国と戦うことになるなら霧島アリスが今度も止められるのか?という点が勝敗の分かれ目になる。


 そういう意味では今年のロシアは大幅に戦力ダウンすることが解っている。

 ダブルエースが居なくなったからだ。

 彼女らの代わりとなる選手が出てきたという情報も無い以上、今年のロシアはそれほど脅威ではないだろう。

 むしろ脅威なのは―――


 PCを操作して動画を再生する。

 そこにはアメリカのクラブチームによるU-18の国内大会が行われていた。

 流れている映像は決勝戦。

 マップ中央に陣取るジェシカ・ラングフォードが3人を相手に1人で圧倒している。

 去年のロシアの守護神を思い出すような戦いぶりだ。

 彼女を脅威と見た相手チームが更に戦力を中央に集中させて彼女を潰そうとする。

 だがそこに横から物凄い勢いでストライカーが突っ込んできた。

 そして咄嗟に反撃してくる相手をものともせず大型ブレードで一気に3人撃破を取っていく。

 動揺する相手にジェシカが総攻撃指示を出して一気に攻める。

 何とか耐えようとする相手にまたも大型ブレードで突撃してきたストライカー。

 その圧倒的突破力によって防衛線が蹴散らされ、一気に勝負が決まってしまう。


 シャーロット・ヴァレリー・オルコット

 私立琵琶湖スポーツ女子学園に1年間の留学をしていた少女。

 彼女がアメリカに帰国したのは知っていたが、まさかこうなるとは。

 確かに彼女が公式戦に出た回数は少ない。

 しかしそれでも強烈なインパクトを残していったのは事実だ。

 そして今、故郷で更に磨きがかかった彼女によってアメリカは更なる進化を遂げていた。


「まさにアメリカのダブルエースという感じだな」


 思わずそう呟く。

 今まで打倒アメリカと言ってきたほどに日本はアメリカをライバル視してきた。

 ロシアにダブルエースが登場してからはロシアに注目が集まってはいたが、それでも対アメリカともなれば視聴率からして違う。

 そんなアメリカが今年、もしかしたら日本の最大の障害になるかもしれない。


「いや、ホント参ったなぁ」


 国内の未知な結果を予想して取材申し込みをするのか。

 それとも単なる予想屋のような形にするのか。

 もしくは海外情勢を含めた少し早いが世界大会向けな感じに仕上げるのか。


 どういう形にしても恐らく売れるだろう。

 しかし雑誌を作る人間としては一番売れる雑誌を作りたい。

 何より記事に出来る情報があり過ぎてその編集作業が追い付かないのだ。


 ピロン!


 PCから音がしたかと思えばメールが届いたようだ。

 中身を確認して思わずため息を吐く。


「おいおい、うそだろぉ~」


 それはダメ元で取材申し込みをかけていた私立琵琶湖スポーツ女子学園からの返信。

 色々と条件が付いているもののまさかの取材許可が下りたのだ。

 取材拒否で有名な所からのOK。

 独占インタビューなど非常にオイシイ案件だ。


「こりゃ今日は残業確定だなぁ」


 せっかくある程度まで雑誌の構成を考えていたのに、こんなものが出てきては枠を取らない訳にはいかない。

 嬉しい悲鳴ではあるものの、これでは一向に雑誌制作が進まないなと苦笑する。

 とりあえず取材日時などの具体的な内容をメールにて送ると同時に一応電話でもと宙に端末を表示する。

 そして電話をかけようとした段階で、ふと止まる。


「そういや誰か居たか?」


 条件の1つに『女性記者であること』というものがあった。

 まあ女子高に取材をするのだからある意味当然とも言える内容。

 しかし今、手の空いている経験豊富な女性記者が居ただろうかと。

 そんなことを考えていると電話がかかってきた。

 国内のLEGEND情報を主に集めさせている記者からだ。


「やれやれ、忙しいねぇ」


 編集長は苦笑しながら電話を取りつつ、椅子に座り直した。






*誤字脱字などは感想もしくは修正機能からお知らせ頂けると幸いです。


第10回ネット小説大賞 二次選考通過ならずでした。

応援して下さった方々、ありがとうございました。

やはり恋愛系とファンタジー系が強すぎてダメですねって感想です。

……ジャンル自由な割に選考通過作品が偏り過ぎなのホント露骨よねと。

やはりまともに賞狙うとなればファンタジー書くしかないのかなぁ……と思えるほどに。


前回の第9回では最終選考まで残れていたのでもっと優秀な作品が出てきたのか、それともジャンル的にダメだったのか。

まあここは自分の未熟さだと思っておきます。

実際未熟なのは本当のことなので。


とりあえず本作品はもう少しで延長部分も終わるため頑張って完結まで持っていきます。

多少モチベが下がってしまいましたが、何とか頑張って継続投稿していきたいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] ジャンル不問の賞レースで人気ジャンル優先なのは商売上ある程度は仕方ないですよね。 しかしながら、本作はとても面白いのに残念です。
[一言] ジャンルの差はなかなか難しいですねえ。 こういうコンテストは作品の良し悪しも大切ですが、作品レベルが近くなると、売れるかどうかで判断されてそう。 このジャンルも、古くはマッチメーカー、バト…
[一言] 琵琶湖女子への取材許可って、アリスは今まで出してなかった本気をメディアにも公開するんですね。 ジャンルによる格差ってあると思います。 例えばロボット物とか面白くても売れないから扱い悪いのが…
感想一覧
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