表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
145/191

第133話 VS世界大会予選ロシア戦:part4






■side:U-18女子日本代表 近藤 冬華






「石井さんは下がって補給を!近藤さんは前に出てそれを援護!」


 リーダーである藤沢さんの指示で前に出た。

 すると先ほどよりも何倍もの銃弾やミサイルが飛んでくる。

 それを腕に付けた小型シールドを使いながら直撃を避けつつ両手に持つ小型マシンガンを撃ちまくる。


 今まで体験したことが無い量の攻撃。

 銃弾が豪雨のように降り注いでくる。

 ミサイルが馬鹿みたいに爆発して周囲は煙だらけで視界も悪い。


 周囲がどうなっているのか。

 試合がどうなってるのか。

 まったくわからない。

 そもそも確認している余裕などない。

 だって言われた役割すら出来ているのか解らないのだから。

 


 ―――残り時間10分



 何かアナウンスが聞こえた気がするが、それどころじゃない。

 一瞬でも気を抜けば……その瞬間、私は撃破されてしまうと思う。


「私だって必死に頑張ってきたのよ!」


 自分の実力が足りないことなんて自分自身が一番わかってる。

 でも、それでもこれはチャンスだと必死に頑張ってきた。

 せめて……そう、せめて足手まといにはなりたくない。

 未だ撃破されずに生き残っているのは、その気持ちが私を突き動かしているからだと思う。


 そんな時だった。


「相手側に動きあり!何か仕掛けてくるよ!」


 石井さんの言葉と同時だった。

 煙幕と化した場所から突然今まで後方から支援に徹していた相手アタッカーが突っ込んでくる。

 サブアームのアサルトライフルによる乱射と共に接近してくる相手にマシンガンを撃つ。

 アーム装備だと命中精度はイマイチだ。

 だからこそ音や至近弾に怖がらずに撃ち返せと散々言われてきた。

 練習の成果もあってしっかりと撃ち返すと相手はバックラーを構えながら接近することを止めない。

 もう片手に僅かだが片手斧が見えた。


 ……間違いない。

 接近戦を仕掛けてくる気だ。


「近藤さんは下がりなさい!石井さんは援護を!」


「大丈夫です!行けます!」


 相手側を見ればアタッカーに続けとストライカー2人とサポーターまでもが突っ込んで来ようとしているのが見えた。

 ここで私が下がれば勢いで押し込まれかねない。


 片手斧による接近戦。

 相手の狙いさえ解れば対処は出来る。

 これでもあの地獄のような練習をやってきたのだ。

 練習通りに対処すれば簡単に撃破出来るはず。

 大丈夫……私は足手まといなんかじゃない。


 銃弾やミサイルを受けたせいで既にボロボロの小型盾に一瞬だけ視線を向ける。


「お願いだからもってよ……ッ!」


 相手の突撃に合わせるようにブーストを使って前に出る。

 そして予想通りそのまま体当たりをしてくる相手を盾で受け止める。

 スグに来るであろうシールドバッシュを予想してブーストを使用した瞬間的な後退を行う。

 すると予想通り相手はシールドバッシュを空振りした。

 しかし相手はそれを気にすることなく片手斧を勢い良く振り抜く。


「させない!」


 私は相手に体当たりをするように前に出た。

 それにより距離が詰まる。

 そして相手の片手斧を振る腕に対してシールドをぶつけて攻撃を止める。

 更にそこからもう片手に持つ小型マシンガンを至近距離で相手に向けた。


 こちらが引き金を引くより僅かに早く相手は後ろに下がりつつ、苦し紛れといった感じで片手斧を投げてきた。

 それを盾で受け止めるが、受け止めた終わった瞬間に盾は砕けてしまう。

 しかし未だこちらが有利だ。


 相手との距離は近く、銃を構えているのはこちら。

 サブアームのアサルトライフルをこちらに向けてくるが少し遅い。

 何よりもっと接近してしまえば射角の問題で無効化出来てしまう。


「もらった!」


 そう思って距離を詰めようとした瞬間。


「な―――」


 声が出るよりも先に相手からの体当たりを受ける。

 何とかもう片側の小盾を身体の前に出すことでまともに食らうことだけは防いだが、予想外の突撃に少し体勢が崩れた。

 その瞬間、相手が何かを手に持つとそれを振り下ろしてくる。

 まだ接近武器を隠し持っていたのか。


 でもそれは通らない。

 多少体勢を崩した所で盾を正面に構えているのだ。

 最悪、斧で盾を破壊されたとしても次の瞬間には小型マシンガン2丁による一斉射で相手は死ぬ。

 そう考えながら、まずは相手の攻撃をと盾で受け止める瞬間……私はそれが何かに気づく。

 しかし……気づいた所でもはやどうしようもなかった。



 ◆キル

 × 日本 :近藤 冬華

 〇 ロシア:マトローナ


 自滅 ロシア:マトローナ






■side:U-18女子日本代表 石井 美羽






「あー!もー!何やってんのよッ!」


 勝手に前に出た近藤が、相手アタッカーによる自爆でやられてしまった。

 確かに相手側が一斉攻撃をしてくる動きが見える以上、その出鼻をくじくことは必要だったかもしれない。

 でも……。


「これでもう完全な潰し合いになっちゃうじゃないの!」


 あれからまた鳥安の奴がやられたこともあり、残り時間が減っていく中で点差は30P。

 どちらもそろそろ決定的な一撃が欲しい場面。

 そんな所で誰かが撃破という切っ掛けを作ってしまえばどうなるのか?


 相手側のストライカー2人からの容赦のない弾幕がこちらに降り注ぐ。


「そりゃそうなるでしょうよ!」


 相手側から自爆を仕掛けてきたので近藤だけを責める訳にはいかないが、命令を無視して潰し合いを誘発した責任は間違いなくある。

 あそこはこちらが下がっても良かった場面なのだ。

 それに気づけずテンパってしまうとか初心者かよと言いたいけど、あまり余計なことを考えている場合でもない。

 完全に撃ち負けている状態になっている以上、下手に粘るのは悪手だ。

 そう思っていると後方から相手ストライカーの大盾にビーコンが撃ち込まれる。

 すると相手ストライカーはあっさりと盾を投げ捨て仲間と共に後方に下がった。


 少しして両軍のど真ん中にブリューナクが降り注ぐ。

 相変わらずの迫力だ。

 しかしこれを仕切り直しに使わされてしまったのが痛い。

 ……まあ一番痛いのは、鳥安の3デスだけど。



 ―――残り時間5分



 アナウンスが鳴り響くと共に未だ立ち昇る黒煙の中から盾を捨てたストライカーが飛び出してきて―――



 ◆キル

 × ロシア:イネッサ

 〇 日本 :藤沢 花蓮



「わーお」


 思わず声が出た。

 煙の中から飛び出してきた相手ストライカーは、飛び出した瞬間に胴体にペネトレーターを綺麗に撃ち込まれていた。

 不意打ちを狙って逆に綺麗にカウンターを決められた形だ。


「時間いっぱい相手を引き付けますわよッ!」


「了解ッ!」


 接戦である以上、リーダー撃破だけは絶対に阻止しなければならない。

 運が良いことに先ほどの一撃で相手の勢いが少し落ちている。


 私の役目は、後ろに敵を通さないこと。

 そして撃破されないこと。


「琵琶湖女子だけじゃないってこと、教えてあげましょう!」


 私はそう言うと大型マシンガンの引き金を引いた。







■side:U-18女子日本代表 新城 梓






「あー!くっそ!時間稼ぎだよ絶対!」


 大谷ちゃんが叫びながらアサルトライフルを撃っている。

 相手側のアタッカーは無理をせず被弾を抑える動きで時間稼ぎに徹していた。

 ならこちらから仕掛ければいいのでは?と思うかもしれない。

 しかし発電所という巨大な障害物のせいで下手に突っ込めばカウンターを食らいかねないのだ。

 そして発電所から離れることも出来ない。

 もし占領されれば司令塔攻撃もあり得るのだから。


 私も援護に回りたいのだが、相手リーダーであるストライカーが地味な嫌がらせをし続けてくるので突っ込むに突っ込めない。

 現状での1デスは致命傷になりかねないからだ。

 それでも……そろそろ時間的にマズイ。



 ―――残り時間1分



 ジワジワとつけられた点差のせいでこちら側から仕掛けない限り勝ち目はない。

 なのに主導権は未だ相手側に取られている状況だ。



 ―――ヘッドショットキル!



 ◆ヘッドショットキル

 × 日本 :鳥安 明美

 〇 ロシア:アナスタシア



 思わず舌打ちが出てしまう。

 これでまた30P差だ。

 今のままでは逆転など不可能。

 なら……やることは1つ。


「2人とも!発電所は任せたっ!」


 返事を聞いている暇などない。

 そう2人に言った瞬間、相手側リーダーにガトリングを撃ちながらブーストを吹かす。


「いっくぜぇぇぇぇ!!」


 何も考えない一直線での最高速度による突撃。

 大盾と構えつつ大型マシンガンを撃っていた相手リーダーは驚きながらもブーストを使用して冷静に後ろに下がる。


「逃がすかぁぁぁぁ!!」


 壁を曲がった先で待ち伏せされているとか一切考えずに突っ込む。

 一瞬だけ時間を確認すると残り時間30秒を切っていた。


 障害物である壁を曲がった瞬間、相手もブースターを使用してこちらに突撃してきた。

 大盾を正面に構えた突撃にガトリングを撃ちながら突っ込む。

 身体に大きな衝撃と共に相手とぶつかる。

 相手は大盾で受け止めるも高機動型の全力突撃を受け止めきれずに大きく体勢を崩す。

 こちらも衝撃で体勢を崩し、更に真正面からぶつかったことでガトリングに使用不可能判定が出る。


 しかしそうなることなど予想済みだ。

 そのまま撃てないガトリングを両手で持つとバットのようにして思いっきり相手に振り下ろす。

 もちろん、正当な攻撃ではないためダメージ判定など出ない。

 だがその質量による攻撃を受け止めようとした相手は、大盾を落としてしまう。

 振り抜いたガトリングを投げ捨てると動かしていたサブアームが予備のガトリングを持ってくる。

 それを掴むと銃口を相手に向けて引き金を―――


 その瞬間、相手は大型マシンガンをこちらのガトリングに叩きつけてきた。

 もちろんこれもダメージにはならない。

 しかし勢い良くぶつけられた両者の銃は、どちらも使用不能判定となった。


 思わずまた舌打ちが出る。

 銃を叩きつけてきた瞬間、相手は笑みを浮かべていたのだ。

 『もうこれでお前には打つ手が無くなっただろ?』といった感じである。


 残り時間はもう10秒を切っていた。

 本来ならこれで相手の勝ちだろう。

 だけど―――


「まだまだぁぁぁぁぁ!!」


 腰から引き抜いたのは大型警棒。

 それを大きく振りかぶる。

 相手はこちらがもう攻撃手段を失っていると思っていたため、反応が遅れていた。


 ガトリング専。

 大型ガトリングだけを装備して、それ以外を一切装備しないスタイル。

 それが私のスタイルであり、意地でもあり、誇りでもあった。

 だけど……私はそれを捨てた。


 そう―――ただ『勝利』のために


「とどけぇぇぇぇぇぇ!!!」


 振り下ろした大型警棒は、吸い込まれるように相手へと向かっていき―――



 ―――試合終了



 そして、試合終了のアナウンスが鳴り響いた。







*誤字・脱字などありましたら修正報告もしくは感想などからお知らせ下さい


■皆様、お久しぶりです。

 相変わらず投稿が遅くて申し訳ありません。

 コロナとかいう奴のせいで色々忙しくて。

 ロシア戦が意外と長くなってしまいましたが、もう終了です。

 今回の話に関しては読み返しもほとんどせずに書いてスグ投稿したので誤字脱字含めて色々不安です(笑)

 あとは2年目の話を少し色々入れつつ3年目に突入かな?と個人的には思ってます。

 感想は全て読ませて頂いております。

 返信に関してはゆっくりと行いますのでお待ち頂けると幸いです。


**お知らせ**

またまた二次創作作品を書いて頂けました。

またもや雑誌風の二次創作です。


如月遥 様(投稿サイト:ハーメルン)

ttps://syosetu.org/novel/258040/5.html

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 一気に読ませていただきました。 無双系かなと思いきやそれだけじゃなく、転生者の抱える空虚感をスポーツで埋め、埋めきれないなにかが故にどこか地に足が付かない不安定さが物語にも揺らぎを与えてい…
[一言] 待ってました! 焦らず次回もまったり待ってます!
[一言] アイドル掛け持ち選手故に近藤の状況判断の悪さは致し方無いのだろう。 やはり足を引っ張ってしまった。 いくら代表選抜後の練習で特訓されてても、元々の実力が代表レベルに達してなかった付け焼刃なの…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ