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第115話






■side:新潟県立田所高等学校2年 三島 冴






「お前は、そうやってスグに調子に乗るからダメなのよ~」


「じぇんぱ~ぃ、いだぃでずよぉ~」


 アリスに零式ライフルの銃口をほっぺたに押し付けられ、グリグリされているのは明美だ。


「せめて命中率9割超えてから言え」


「えぇ~!あでだけうごきゅまどあだるわげなぃじゃなぃでずがぁ~!」


 『あれだけ動く的に当たる訳ないじゃないですか』と抗議する明美だが、それらを一切無視するアリス。


 ここはU-18女子日本代表の練習会場だ。

 この場ではブレイカー選手達のみ集められ、狙撃の練習をしていた。


 何故、代表に選ばれなかった私が居るのかって?

 それはまあ、色々あったのよ。


 代表に落ちた私は、どうして落ちたのかの詳細を求めた。

 すると宣言通りに書類が届いた。

 それは紅白戦での試合での選手データ。

 そしてそれらに対する監督やコーチたちの評価だった。


 主に評価しているのはアリスだったが、書かれている内容は厳しいもの。

 しかも理不尽なものではなく、銃の構え方から撃つタイミングに相手との交戦距離など非常に細かかった。

 そして私が今のライフルのままで戦う場合と変更する場合の候補とその場合の戦い方など、しっかりと解決案まで添えられている。

 ここまでされては、もう何も言えないでしょう。

 むしろこれで反論出来るのは、昨日落選に関してギャーギャー騒いでいた猫ちゃんぐらいでしょうね。


 だから私は連絡を取って頼み込んだ。

 『このままでは終わりたくない。だから指導だけでもお願い出来ないでしょうか』と。

 そうしたらこの場に呼ばれたという訳だ。


 アリスは「教えるのが4人だろうが5人だろうが変わらない」と言いながら参加させてくれた。

 そして始まったのは調整されて弾速や集弾性が悪い平凡なライフルでの狙撃。


 目の前には動き回る的が登場する。

 それをほとんど狙う時間など無い素早い連射で、難なく全て破壊してみせたアリス。


「そのライフルでこれの撃破率9割超えたら次ね。逆に超えないとずっとこれしかさせない」


 その言葉に全員の顔が引きつっていた。

 そして全員が現在、黙々と射撃練習をしている。


「アタッカーも面倒見なきゃならないから付きっ切りは無理だけど」


 そう言いながらも1人1人、丁寧に指導してくれている。

 私はここでようやく彼女が、ただの天才ではないと気づいた。


 ライフルの構え方だけでなく関節など全身を使っての反動コントロール。

 微妙に変化をつけるだけで大きく変わる弾道。

 そして狙う優先順位や狙撃位置など、基本的なことでも嫌がらずに教えてくれる。

 こうした知識や技術の積み重ねが霧島アリスというブレイカーを生み出したのでしょうね。


「お前は、人の話を聞いていたのかなぁ~?」


「ずびまじぇぇ~ん!」


 また銃口でグリグリとされている明美。

 他の選手にはこうした物理的なことをしないのに、明美だけは物理的制裁が多い。


「私は、ああならないように注意しよう」


 そう心に決めて銃を構える。

 とにかくこの銃は、非常に扱いにくい。

 しっかりちゃんと狙わないと一切当たらないのだ。


 飛び出してきた的に集中し、そして引き金を引いた。






■side:U-18女子日本代表指導コーチ 霧島 アリス






「はいはい、動きが悪い人は無意味なマラソンをさせますよ~」


 そう言ってアタッカー達の動きが単調にならないように脅しをかける。

 VRでは走ると疲れや息切れなどを再現するが、所詮はデータの世界。

 いくら走ろうがリアルではないため成長などしない。


 だからVR内で走るという行為は競技などではない限り、あまり意味が無い。

 ただ疲れるだけの行為となる。

 なので罰ゲームとしては最適だったりする。


 今アタッカー達にやらせているのは、正面から出てくる単純な動きしかしないCPUストライカーの盾を破壊しつつ倒すということ。

 それを出来るだけ相手に突っ込みながら行う練習だ。

 確かに全体的に火力が向上したし、装甲関係はまだ新しくはなっていない以上、火力インフレが凄い。

 しかし盾だけは別だ。

 新しい大盾・小盾にバックラーやショルダーシールドなど盾類全般は大幅に硬くなった。

 ガーディアン以上かもしれないぐらいに異常に硬い。


 なので新武器であっても盾破壊にはそれなりに苦労させられる。

 むしろ盾を避けて本体を殴った方が早いまである。

 それが出来るのならではあるが。


 だからこそ、早急に撃ち合いをしながら相手の盾をいかに破壊して有利を取るか。

 相手を下がらせるかというのを練習させている。

 そして突っ込ませているのは、大人しくライン戦など恐らく出来ないからだ。

 ブースターがここまで浸透すれば確実にどこかのタイミングで乱戦に発展するでしょう。

 そのため『撃ち合いと乱戦』を特にアタッカーには意識させる必要がある。


「武器選択が遅いッ!」

「残弾数ぐらい把握しておけッ!」

「接近武器に頼り過ぎるなッ!」

「相手が高機動型なら逃げられることも想定しろッ!」

「何のためにそれ持ってるんだッ!」


 声を上げるだけでしんどい。

 どうしてこうも癖が強い前衛ばかりなのか。

 というか一瞬の攻防が重要なのに、どうして咄嗟の動きまで頭で考えるのか。

 そんなもの身体に叩き込んでおけというレベルである。


「黒澤ッ!ぬるい動きしてるなら試合に出さないぞッ!」

「大谷ッ!グレネードに頼るなってさっき言ったよなぁッ!」

「大野ッ!踏み込み過ぎだと言ってるだろッ!三峰ぐらいの踏み込みで十分なんだよッ!」


 最初は笑っていたメンバーも、ようやく私が本気だと解ると真面目に練習をするようになった。

 しかしそれでも動きがぎこちない。

 これがもし戦場なら、コイツらとっくに死んでるでしょうね。


 『1発当たっても耐久値が減るだけ』という考えのせいで、どうも回避が甘い。

 仕方が無いとはいえ、それでもそれが勝負の世界では大きな差になるでしょう。


「これは改善に時間かかりそうだなぁ……」


 ああ、あと馬鹿鳥も何とかしなきゃ。

 ……仕事多いわ、ホント。







ようやく代表選手達の練習がスタートしました。

そして三島がやる気を出して練習に参加。

これがのちにどう影響してくるでしょうか。


そしてアリスの心労がマッハ。

まあ『現実の殺し合い』と『ゲームでの撃ち合い』では考え方が違いますからね。

特に被弾に対しての意識はまったく違うと言えるでしょう。

その辺りでアリスは苦労している感じですね。



**お知らせ**

またまた二次創作を書いて頂けました。


如月遥 様 

LEGENDをはじめよう!~見るレジェ勢やLEGEND初心者に送る装備品入門~

ハーメルン様サイト↓

ttps://syosetu.org/novel/258040/3.html


今までと同じく雑誌風な感じですが、武器関係の一覧表まであったりと作者も驚きました。

LEGENDというスポーツに対しての良い感じのまとめサイト的な感じになっています。




*誤字・脱字などありましたら修正機能もしくは感想などからお知らせ下さい。

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[気になる点] 安田の件でリアルの身体能力をVR上反映するけど、VRでいくら運動しようがリアルの身体能力の向上には繋がらない。 現実世界での筋トレやら走り込みも必要で、マッシブなお姉さま方がする、某…
[良い点] まさかの三島さん。 一年目のU-18時代にアリスにアドバイスして貰い(時期的にはマイマイ+ブレイカー二人がアリスに指導して貰っていた時かな)、1年目終わりの練習試合で確認もしたはずなのにこ…
[一言] 焼き鳥ブートキャンプ。まだ的扱いされない分、友情。VR無限マラソン…ゑ、それジュネーブ違反のガチ拷問。
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