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竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
96/211

火の竜王、その誤算

 「それでは」

 「打合せ通りに」


 テンペスタ殿と私は別れました。

 テンペスタ殿は全属性の竜ではありますが、当人ならぬ当竜の好みで区分するとすれば風の竜王です。これはかの大嵐龍王のご子息であると同時に、生まれてこの方、長らく「嵐」を意味するテンペスタを名乗ってこられたのも大きいのでしょう。

 私達にとって名は力でもあります。好み程度の傾向ではありますけどね。

 

 『さて、退屈ではありますね』


 空を舞って、その威容を見せつけているテンペスタさんと違い、私の役割はここという最前線であった場所のど真ん中に居座る事。

 この場所はテンペスタさん曰く『人族側が攻めるなら絶対に抑えないといけない場所』らしいのです。なんでも、ボルシオン火山への進撃ルートを確保するならばこの地を抑えない事には補給が続かない、という事でしたが……。

 実際止まってますね。

 なるほど、人族は補給とやらが続かないと軍勢がまともに活動出来ないというのは本当でしたか。

 いけませんね。どうにも私達は「食事」というものに対して理解がない。

 お陰で、補給線とやらの重要性が分からない。

 ……まあ、いいです。分かる方がいるのですから、任せましょう。しかし……。


 『何たる悪趣味な。こんなものまで少数でもいたのですね』


 上位竜を用いた機竜。

 今回は群れているからこちらも対抗出来ていますが、普段は上位以上の竜は単体で暮らしています。しかも、油断しきっています。

 人族が来ても、自分を傷つけるなど予想もしていないから、人族が入念な準備をしていても放置、攻撃を受けて怪我を負って初めて慌ててももう遅い。

 この機竜達もそういう上位竜の成れの果てなのでしょう。ならば、きちんと葬ってあげるのがせめてもの情けというもの。


 『む……』


 これは。

 一撃で全て倒すつもりだったが。

 予想以上に出力が高い、のか?

 ふむ、火に対抗する為に水で固め、他の属性の機竜は……テンペスタ殿の方へと向けたと。

 その上で、属性に関しては先の自爆型機竜とはまた違う方式で出力を上昇させている、のか?いや、中の人族が死なないよう手加減しているのは事実だが。


 実の所、火の竜王が知る由はなかったが、この新たな上位竜を素体とした機竜にはサブエンジンとして、極力上位の下位竜のものを複数、直結させていた。

 これによって、稼働時間に限界はあれど一時的に見かけ以上の属性強化を施す事に成功していた。

 ここら辺が分からなかったのは、生身である竜王と、機械で動かされて弄られている機竜の違いだろう。まさか竜王が自分の心臓に相当する部分を弄りまわす訳にもいかない。

 

 『なんです?』


 もっとも、それだけではない。

 

 『攻撃、してこない?』


 わざわざ如何にもな様子で出てきたにも関わらず、攻撃を仕掛けてこない。

 全ての力を防御に回している。

 確かに攻撃に余力を回していれば、もっとあっさり機竜達は倒されてはいたでしょう。

 しかし、攻撃してこねば倒す事は出来ない。

 防御してもこちらの攻撃は着実に通り、一体、また一体と倒れて行っている。

 水と火が入り混じり視界は悪化していますが、感知には問題はない。まあ、属性が入り混じっている上、大量の属性が放出されているためにどこにいるのかは分かっても細かい容姿などは分かりませんけれど。元より火というのはあまり探知向きではありませんしね。

 

 『何を考えているのでしょう?』


 倒れても、形が残っている物はある。それを別の機竜が引っ張って回収し、また次の機竜が応援に駆けつけているのは分かる。

 一体を多数で攻撃しようとしても空間の関係上、百体で同時に飛び掛かるなんて事も出来ない。

 となれば、絶え間なく攻撃して、少しずつでも削る気なのか?

  

 『何とも気の長い事だ』


 ましてや、ここはボルシオン火山の圏内。火の属性には満ち溢れている。

 見た目にはこの辺りはそこまで火山の影響がないように見えるだろうが、何しろ膨大というしかない……それこそ大火竜サラマンダーの座す巨大火口とそれに通じる内部には解放されればとんでもない事になる程の熱量が蓄えられている。

 その熱自体は星自体に還元していっているようだが、ふと火の竜王は疑問を抱いた。


 『はて、星に注ぎ込んでいるとしたら果たしてその熱は元々は一体どこから来たのでしょうね?』


 偶然ながら、それはテンペスタが大嵐龍王の風について感じた疑問に通じる事だったが、それを火の竜王がそれ以上考える事はなかった。


 『むっ!?』


 大地を割って、蔦のようなものがいきなり火の竜王の脚へと巻き付いた。

 

 『いけませんね。周囲の属性に紛れて見落としましたか……』


 一気に焼き払おうとして、火の竜王は驚きの声をあげた。

 切れない。

 いや、これはもしや。


 (拙い)


 逸早くその本質に気づいたのはさすがに竜王ではあったが、ここに来て急に周囲の機竜達が攻撃を仕掛けて来た。

 いや、おそらく、これまで控えていたのはこの足元の相手の準備を整えて……。攻撃も集中させなくする為に。

 

 直後、火の竜王の叫び声が辺りに響いた。 

あと少しだったのにー!って事、ゲームでありませんか?

あと1クエスト達成すれば報酬受け取れたのに、イベント時間切れで受け取れませんでした……


いやまあ、ゲームに熱中して体調崩しちゃ元も子もないから仕方ないんですけどね

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