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竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
93/211

切り札の目的

 戦況を確認していて、人族側の新たな動きに気が付いた。

 はて……。


 (大型の機竜、か?)


 これまではやや小型の機動性の高い機竜とやらが前面に出ていた。

 それの代わりに出てきたという事は人族側の切り札的な機体だろうか?


 「見た事のない竜もどきが出てきた。全員警戒」


 といってもどんだけの連中がきちんと聞いてくれる事やら。

 自分が前線に出ずに、こうして後方に陣取っているのも指揮官的な役割が出来る奴が他にいなかったからだ。いくら竜が強いといっても、指示をまったく出さなければある場所にほとんどの竜が集まってしまって、他の場所から人族が攻めてきているのにそっちには誰もいない!という事になりかねない。

 いくら竜が強くても、いきなり背後や側面から攻撃されたら混乱は避けられないし、余計な怪我人ならぬ怪我竜が出かねない。

 混乱すれば竜側も「手元が狂った!」という事例も増えるだろう。

 広域の動きを把握しつつ、その範囲のそれぞれの竜に対して指示を飛ばす事が出来、尚且つ実力的に一目置かれてる竜王かそれに準ずる竜となると自分しかいなかった。他の竜王連中はほとんどが岩の竜王同様の状態なので、指揮を執るというのも難しい。というか、そもそも指揮命令系統というものを理解していない。

 しかし……。


 「やっぱしろくに聞いてないし」


 意識は向けてくれた。

 だが、警戒感なぞ皆無なのがよく分かる。死に物狂いな連中を甘く見るのは良くないのだが……。

 竜達の悪い所だ。

 竜は弱い下位竜の頃はまともに記憶を持っている竜がおらず、頭が良くなった頃には対抗出来る存在がいなくなっている。そして、上位竜というのは肉や野菜といった食事を取る必要性を感じていないので、狩りが不要。魔獣などを狩ろうとして死に物狂いの反撃を受ける、という体験がない訳だ。

 

 「ふむ……」


 先程までの機竜より強いだろう。

 攻撃力が相当強化されている様子で、上位竜でさえまともに喰らえば怪我をしそうだ。

 

 「しかし、防御はそこまでではない……」


 上位竜の一体の攻撃で新型と思われる機竜の片腕が吹き飛んだ。

 多少はマシになっているようだが、防御自体は攻撃力ほど強化はされていない。

 では、一体何のために出てきた?

 そう考えた時、答えは目の前に示された。

  

 『なにっ!?』


 上位竜の一体の攻撃が直撃し、新型の一体が大きく破損した。

 そこまではいい。

 だが、明らかに戦闘不能になったと思われるその状態から新型は組みついてきた。それもこれまで使っていなかった丈夫なワイヤーを体の各所から発射して、絡みつけるようにしている。まるで離れまいとするように、離れようとしない?それにどういう意味が。


 『こやつ!離れろ!!』


 苛立った上位竜が密着状態の新型に苛立ったように攻撃を加えた瞬間だった。

 新型が大規模な爆発を起こした。それもただの爆発ではない。明らかに圧縮された強い属性の力が破壊の力に変換された放たれた、そんな爆発だった。


 『ぐ、が……』


 属性の力がたっぷり込められたそんな爆発を超至近距離で喰らっては如何に上位竜といえど、ただでは済まなかったらしく、見た目にも分かる大きな怪我というか大規模な損傷というか、とにかく戦闘不能なほどの傷を負った上位竜が爆発の中から姿をみせた訳だが、それで事は終わらなかった。

 動きの止まった上位竜に更に組み付くように新型が二機取りついたのだ。

 先程の事が思い浮かんだ上位竜がさすがに焦って振りほどこうとするが、その前に今度は二機が爆発した。


 「自爆、だと……」


 驚きで動きが止まった他の上位竜に、ここぞとばかりに新型が次々と組み付く。

 その時に気が付いた。完全に上手く固定した時は新型の体からころりと真っ白な球体が転がり落ちている事に。その中から感じるのは生命の息吹。どうやら、一応の脱出機構は備えているようだ。もっとも、固定完了する前に逃げられると判断したのかその前に自爆する機竜や、脱出はしたものの爆発に巻き込まれたらしきものも多かったが。

 気づけば、空でも同じ事が起きている。

 思わず竜の顔が険しくなるのが分かった。


 


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 同じ光景をテンペスタとは異なる視点で見ている者もいる。


 「さあ、どうする竜達よ」


 作戦の成功に湧く者もいるが、大多数は真剣な顔だ。

 あそこで何が起きているか理解していればうかれるなどという事は出来ないだろう。さりげなく、そんな事も考えずに無邪気に喜んでいる顔を記憶しておく。


 「痛み分けで良いのだ、此度は」


 人族は数年あれば、今回の損害から回復するだろう。

 だが、竜は?

 上位竜は数年で何体も生まれるようなものなのか?

 断じて違う。そんなにホイホイ生まれるようなものなら、数千年前より続く、この大陸は今頃上位竜だらけになっているだろう。なにせ、ほんの少し前まで上位竜を打ち倒すなどという事は人にも魔獣にも出来ない事だったのだから。

 そう、ここで必ずしも勝利する必要はない。

 数年後に、それで駄目ならまたその先に。

 竜にとってはほんの僅かな、瞬き程の時間。それだけの時間でも人族にとっては十分だ。 

という訳で自爆戦術でした

一応、脱出機構は持ってるんですけどね……イタリアの自爆ボート「バルキーノ」が近いでしょうか?

日本の自爆ボートと異なり、こちらは後方からの脱出機構と筏がついていたそうです

ドイツは無線操縦型の自爆ボートを作ったみたいですが、こちらは当時の無線操縦の困難さからまともな戦果を出せなかったようです

何気にイギリス重巡ヨークを大破させるなどイタリアの自爆ボートが日独伊の三国の中では一番戦果を上げていたりします

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