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竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
91/211

竜の事情

ネット小説大賞、二次選考通過してました

読者の皆さんに感謝です!まあ、最終選考通るかはさておいてw

 空を制する竜達だったが、さりとて圧倒するとまでは至っていなかった。

 大きな理由として、まず相手がとにかく数が多い事、そして竜達が少数であった事が上げられる。

 実の所、竜達であっても空を飛ぶのを好む竜や龍は案外少ない。もっとも、考えてみれば当然の事でもあり、大地や水、火の属性は大空よりも地上に近しい所の方が豊富だ。陽の光にも火の属性が含まれているが、地上のそれを上回るには遥かな空の高み、それこそ星の海へと向かわねばならない。

 そこまで至った竜王がいない訳ではないのだが、逆にそこまで行ってしまうともう地上には何の関心も持たない。

 結果として、空を舞うのを本当の意味で好むのは風の属性を主体とする竜達のみであり、他の大多数は「飛べる事は飛べるけど、地上の方がいい」という事になる。移動の時は飛行もしたが、戦闘の時は大地の上で戦う方がいいという訳だ。


 『とはいえ、最大の理由は統制が取れていないからだな』


 溜息もつきたくなる。

 結局、最後の最後まで竜達に指揮権の統一といった概念を持たせる事は出来なかった。

 一番楽で、一番損害が少なくなる方法を取るならば空から一斉攻撃を加えるのがいい。実際、かつて一つの国の首都をボルシオン火山の竜達が攻めた時にはそうした。もっとも、彼らがそうしたのは移動した後、そのまま声をかけたからだ。もし、移動した後、声をかけてしばらく待つ、という態勢だったなら彼らもまた地上に降りていただろう。

 結果、バラバラに攻撃している。

 ブレス攻撃を加えるにしても、一部の竜が知り合いや周囲の竜に声をかけて数体で行うのが精々。ほとんどはてんでんばらばらに好きな所を攻撃している。


 『それは地上も同じな訳だが』


 こちらも好き勝手に動いている。

 お陰で、指揮系統が幾つかに別れているとはいえ(王国系、連邦系、教団系など)、基本的には統一された指揮命令系統を持ち、協力体制にある人族側を攻めきれないでいる。ボルシオン火山に住まう人族達、竜を崇める者達など竜の協力者たる事を選んだ者達はまだ統一された指揮系統を持っているようだが……。


 「おお、確固たる個を持つ御方々には細かな連携など不要なのですな!」


 いや、それ単に個が強すぎて、連携取れないってだけでは?


 「個で軍を圧倒する!さすが竜の方々!!」


 いや、きちんと連携すりゃとっくに勝ててるんだからね?


 彼らには戦闘には参加してもらっていない。というより、参加させられない。

 かつてのような剣と魔法(個人の能力頼り)だけの状態なら彼らにも活躍の場はあっただろう。

 けど、今は違う。

 数は元々圧倒的。未だ剣とか、個人の能力に頼った魔法を使っている彼らに比べて、相手は巨大な機竜と彼らが呼ぶ竜やトカゲの屍骸を用いた兵器を使い、大威力の砲撃をかけ、魔法でも統制された魔法を使う部隊を有している。

 そんな所に突撃させた所で、一瞬で壊滅か文字通りの意味で全滅するかのどちらかだろう。

 もっとも、そんな事馬鹿正直には言えないので……。


 『ここは我らの戦場だ。お前達は我らの戦場に割って入ろうとするか』


 そう言ったら、全員へへーッ!となって、大人しく後方で砦なんかを守ってくれている。

 素直なのはありがたいんだが……。


 『なにやら面倒な事になっておるようじゃのう』

 『ああ、これはどうも』


 声をかけてきたのは古き竜王の一体、人族から見れば浮遊する岩塊としか言いようのない地の属性に満ちた竜だ。

 そして、珍しく人族と共存してきた竜王でもある。

 竜王というのはとにかく数が少ない。大陸全土を探しても三桁行かないだろう。そして、古く長く生きた竜王はその過半が既に自然へと帰りかけている。自我が消えかけている訳だ。そんな相手には何を言っても無駄だ。それこそ竜巻だの、海だのに語り掛けて、力を貸してくれと言ってるようなもの。今回動いてくれた竜王もその数は十程度。

 ボルシオン火山は例外的に火の属性の竜王が複数住んでいるが、四体を除き、もう声が届かないレベルになっていた。……うちの妹竜も変わり物だが、基本竜王はいずれも姿形が同一の者がいないんだよな。この竜王も「誰も傷つけず、傷つかずに静かに眠れる力が欲しい」という事でこういう姿になったらしいし。

 結果、元いた場所では「かつて荒れ果てていた土地に住む慈悲深き竜が、迫害から逃れてきた先祖を憐れんで岩へと変じ、周囲の大地を豊かな土地へと変えてくれた」という伝説と共に農地のど真ん中に祭る小さな神殿のご神体としてデン!とある状態だった。もちろん、実際は寝ていたこの岩の竜王の所に逃げて来た連中に、この竜王が声をかけて、行く場所がない事を知って、自分の邪魔をしないなら周辺の土地に住んでもいい、としただけらしいが。

 で、周囲は岩の竜王の力で「庭園化」していたから、大地の力に満ち溢れ、村は発展し、農地も広がった訳だな……。今回、岩が浮き上がった!って事で村の連中は「竜神様がお目覚めじゃあ!」「何かの天変地異の前触れ!?」と必死に祈っていたというから少々可哀想な事をした。

 

 『どれ、少々手を貸してこようかの。まだ動ける内にのう』

 『やはり辛いですか』

 『うむ』

  

 今回動いてくれた竜王の中にも、岩の竜王殿含め自然へと帰りかけの所を威圧の為に動いてくれた方々がいる。

 それは有難いが、無理をして動いた結果、動くのすら既に辛い方さえいる。

 

 『最悪、これが儂のこの戦での最後の動きになると思うてもらいたい』

 『承知しました』

 『砲兵とやらを一時潰す、後方より持ち込むまで一時的にであろうが』


 痛いな、それを理解出来る竜王がまた一体動けなくなるのが痛い。

 だが、これ以上は無理だろう。


 『では達者でな』

 『ごゆっくり眠れる事を願っております』


 そうして、岩の竜王殿は浮かび上がり、前線へと赴いた。

 巨大な岩塊が空を舞うとなれば嫌でも目立つ。

 当然、人族側は「危険」と判断したのだろう、攻撃が集中した。

 しかし、見た目は巨大な岩塊でも、自我が消えかかる程に長い長い時を生きてきた岩の竜王なのだ。その程度の攻撃が通じる訳がない。

 攻撃がまったく効いていない事に焦りを感じたのか、更に攻撃が激しく集中するが、その全てを無視して目的地点に到達した岩の竜王は地の属性の力を発した。

 傍目には巨大な岩塊による質量攻撃だ。

 だが、そこに地の属性の力が入る事で、それは魔法による攻撃と化す。大地に着弾した瞬間に大地は煮え立ち、蒸気と化した直後に自身の重みによって周囲に流れ出す。岩盤津波(地殻津波)、と呼ばれるものに酷似しているがこれは全てが精密に岩の竜王に制御された地の属性の力が起こした物理型の魔法攻撃だ。したがって、際限なく蒸気化した岩盤が上昇して一部大気圏外に放出されるとか、範囲にした所でどこまでも広がっていくとかそういう事もない。

 だが、一万度を超す岩石蒸気が周囲へと放出されれば人族や、下位属性竜と人族が呼ぶトカゲを素に作った砲など一たまりもない。

 燃える事すら許されず、瞬時に彼らは消える。蒸発して、岩盤津波の一部となって更に周囲へと襲い掛かり、瞬く間に砲兵部隊とやらが広がっていた地はまっさらで、平らな一枚の岩となった。


 『岩の竜王殿は……眠ったか』


 大地が融解した際に、そのまま地中深くに埋まり、眠りについたようだ。

 もう目覚める事はあるまい。微睡まどろみながら眠り、やがて自然へと帰る。

 この機会を活かせればいいんだが……。というか、皆さん、少しは言う事聞いてくれー!

 

という訳で、今回、押し切れない竜側の事情+前回砲兵隊が壊滅した模様を描いてみました

通常は命令系統がしっかりしてないと単なる烏合の衆なんですけどね……

明日はワールドネイション(新版)をあげる予定です、そちらもよろしくお願いします

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