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竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
78/211

王の悩み

 さて、現状を整理してみよう。

 大陸は山脈で三つに分割されており、三つが繋がる中心点にあるのが大火竜サラマンダーのいるボルシオン火山である。

 長らく各地域ごとに分裂して、その地域内の勢力で小競り合いを続けていたが、この内、滅竜教団が加担した三つの国がそれぞれの地域を遂に統一した。

 だが、うち一つ、ブレイズ帝国がリヴァイアサンを攻めた事によって、崩壊、つい先日ルナ姉の協力もあって何とか王女と後見役の公爵、その一族と領民。帝国の軍団の生き残り達が山脈を越えて、無事我が王国へと到着した。

 現地の責任者には支援物資や人員と共に対応を命じてある。

 落ち着き次第、彼らは公爵へと与えられた王国領内の一地域へと移動する予定だ。


 『疲れているかもしれないから、山脈越えた先、なるだけ近い場所に用意した方がいいか?』

 

 そう確認はしたのだが、疲れても離れた場所がいい、というのが圧倒的多数だったようだ。

 さすがに竜によって恐怖を感じ、山間の道を塞ぐ砦によって山脈を越える事も出来ずただ見上げるだけだったせいか、なるだけ山脈から遠くへ、竜の棲む領域から離れた場所を彼らは望んだ。

 

 「さて、こちらが貴公に与えられる領地となる。事前に話していた通りとなる」

 「ありがとうございます」


 正式な謁見をやると時間も手間もかかる。

 今回の書類なども後々、王女も交えた正式な謁見の場で公式に与える形となるが、正直面倒臭い。

 王となって改めて思った事だが、実に国の運営と権威というものは面倒だ。ルナ姉がいなくなってから、食事も冷めたものばかりになってしまった。料理長らは奮闘して冷めても美味いものを提供してくれているが、どうしてもルナ姉には劣る。

 仕方のない話ではある。何せ、当人がルナ姉に未だ及んでいない事に悩み続けているのだから。

 我慢出来なくなって、遂に先だって温める魔道具を導入した。

 見た目が割と武骨で、大型である為に散々侍従長などは渋ったものだが、王家の者が一丸となって当たった事で遂に折れた。仕方なかろう、我々王家の者は皆、幼い頃からルナ姉の美味く、温かい料理が当り前で育ってきたんだ。今更、「今後は一切温かい料理は駄目です。冷めた料理だけで過ごして下さい」などと言われて我慢出来るものか。

 知らなければ、それが当り前と思う事も出来るだろうが知ってる者が我慢出来る訳なかろう。もっとも。


 『分かった、ルナ姉に侍従長の反対で冷めた料理だけになりそうだと話しておく』

 『すいません、私が悪かったのでやめてください、お願いします』


 となったのは何とも言えない気分になったが……。

 ルナ姉の方が怖いのか、お前は!……怖いよな、私でも怖い。暴力とか武力とかではない、私達にすれば生まれる前から知られている胃袋を握られている相手、侍従長からすれば駆け出し以前から知られている大先輩という奴で何かと頭が上がらない。

 ましてや、ルナ姉に食事の事で話を持ちかけた日には……。

 こんな話をしているのも、公爵がチラチラと会談の場となった部屋の一角にデン!と居座る加熱の魔道具に目を向けているからだ。目立つからな。


 「気になるかな?」

 「ええ、まあ……こうした場ですと、我が国では侍従長や伝統を重視する貴族の反対が強かったものでしてな」


 ……うちの連中が公爵から見えない位置で気まずそうな空気を出しているんだがな。

 

 「うちの場合、食事関係でケチをつけると先代の料理長を怒らせるからな。うちでは誰も頭なぞ上がらんよ」

 「なるほど、あれだけの実力があれば下手に文句を言う事も出来ませぬか……」


 勘違いしているようだな。

 だがまあ、今はそれでもよかろう。他国から来たばかりの公爵に我が国の特殊な事情を理解出来るとは思えん。それに貴族連中の一部に関しては事実だろうしな。大抵の貴族は弱みは山ほど握られている、かといって暗殺などはそうした組織の方が逃げ出す始末。権威で言えば王国成立のその時からずっと初代当主が健在な侯爵家という時点でどの家の連中も太刀打ちなんぞ不可能。おまけに武力に関しても万単位の軍勢揃えてさえ勝てないと判明すれば、敵に回す奴なぞいないのは当然だ。

 もっとも、先代料理長が敵に回るような事は料理に関する事だけ、というのも大きいのだろうが。

 権力争いならともかく、料理の事で家ごと抹殺されるのは避けたいのは当然だろう。


 「まあ、彼女を敵に回さん事だ。料理の事以外ならば寛容なのでな」

 「承知致しました」


 さて、後の問題は……。


 「研究に関しては研究者資料共々我が国で引き受けるが、問題は王女の事だ」

 「はっ……」


 正直、公爵の一件よりこちらの方が問題だ。

 さて、どうすべきか……。

 ブレイズ帝国皇帝家の唯一の直系。

 一時とはいえ、大陸北東部を制圧した統一帝国の直系だ。利用価値があると考える者は多かろう。かといって、下手に私が養女とする訳にもいくまい。そうなれば当然「王国は帝国の領地を狙っているのか?」、そう見られる事になるだろうからな。最悪北東部の勢力が王国に対しては刃を揃えるという事になりかねん。

 

 「王女自身の意見も聞いてみたいが、大丈夫かな?」

 「それは大丈夫です」


 さて、それならば明日辺りにでも予定をねじ込むか。

 彼女自身が復讐を望むのか、あるいは平穏に生きる事を望むのか。どれを選ぶにせよ厄介な事になりそうだ。

 

体調も大分まともになりましたが、未だ咳が出ます

今年の風邪はしぶとい……

暖房器具入手して、部屋の暖かさは大分マシに。布団にくるまって震えなくても済むようになったのは有難いです

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