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竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
76/211

ルナ日和

 「ルナ姉、一つ頼みたい事があるんだが」


 そう言われたのは王国王宮に久々に私、ルナが料理を作りに行った日の夕食での出来事だった。


 ブレイズ帝国の暴走と崩壊による影響は他の二領域でも既に発生しているのは聞いていた。

 帝国が崩壊した事とその後の内戦、更に反乱が勃発した事で当然の如く、難民が生まれた。それまで耕していた畑で突然戦い始める連中がいたり、戦いの為と称して蓄えていた食べ物を奪われたり畑を焼き払われたり、家や現金などの財産を奪われるんだから奪われる側からすればたまったものではないでしょう。

 抵抗しようにも、相手は仮にも兵隊で武装している。村を上げて抵抗すれば最初の一回は成功するかもしれませんが、その結果兵隊のバックにいる貴族らに目をつけられたりしたら見せしめとして村ごと焼き払われたりしかねないですし。

 そして、実際にそうした被害を受けて、逃げるしかなくなった者達が目指すのは当然、少しでも安全な場所です。

 けれど現在、大陸の北東部領域である旧ブレイズ帝国領内に安全と言える場所は残念ながらないと言っていいでしょう。どこも常に戦火に晒される可能性があり、比較的安全性が高い都市は人が集まりすぎて、周囲にスラムが大規模に形成されて治安が既に急速に悪化しているそうですからね。

 そうなるとより安全な場所を目指す、具体的には山脈を超えて、王国や連邦の領域へと脱出を図る難民が出てきます。

 もちろん、そうした者達の大半は命を落とします。山脈を比較的安全に超えられるルートは限られており、そうした場所は守りやすい要衝でもあるので要塞となっています。国を捨てて脱出しようという難民達を通してくれるとは思えません。通れるにしても、それは多額の賄賂を渡せる極少数の例外のみでしょう。

 とはいえ、数が多ければ、成功する者は出ます。

 ブレイズ帝国の崩壊による戦略の練り直しや、そうした難民の増大は目の前の、私を姉と呼ぶ王らの頭を悩ませているのですね。まあ、だからこそ「たまには美味しくて温かい飯が食いたい」という要望を受けて、私がこうして料理を作りに来ている訳ですが。

  

 「そうした人達の保護?」

 「いや、違うんだ」


 違いましたか。


 「確かに難民の保護は厄介な問題だ。それは事実なんだがルナ姉一人にどうこうしてもらうような話じゃない」

 「………」


 出来ない訳ではないですけど、言いたい事は理解しました。

 難民の保護というのは確かに大変な仕事ではありますが、それは一般の兵士や文官でも対処可能な仕事なのもまた事実な訳です。そんな「数を揃えれば普通の人員でも何とかなる」事に特殊な部隊とか、精鋭部隊といった他では対応できないような仕事で動かすべき者を動かしたりはしない、と。

 それに難民といっても、そこまで人道的な扱いが期待出来る訳でも、「難民に人道的処置を!」と主張するような集団がいないのもまた事実ですからね。

 

 「頼みたいのはブレイズ帝国からの脱出した人員の保護なんだ」

 「ブレイズの?」

 

 聞けば、ブレイズ帝国帝都から津波到達前にかろうじて脱出した者達がいたという話でした。

 下位竜とされる飛竜らに近衛を護衛として、重要な資料と共にブレイズ帝国の姫が一人脱出したという話です。

 ですが、この姫と研究資料他はまだ王国も連邦も確保出来ていないそうなのです。


 「飛竜はずっと飛び続けるって訳にもいかないし、山脈を超える力もないからね」

 「それはそうでしょうね」


 出来るなら、とっくに山脈を超えての連携がもっと以前から進んでいたでしょう。

 それに飛竜と呼ばれるトカゲの事は私も知っていますが、あれは人を乗せるのは二人程度が限界。育てるにしても元がトカゲですからね、きちんと乗れるぐらいに調教するのはそれなり以上の手間がかかる上、下手な調教したら逆に食われかねません。無論、私は食われませんけど。むしろ、王宮にいるトカゲ達、私を見ると直立不動で硬直するので面倒なのですよ。

 それはさておき、それでも貴重な空を飛べる戦力や伝達手段という事で重宝はされています。

 けれど、それで脱出したはいいけれど山脈を超えられず、けれど安心して身を預けられる場所もほとんどなく……帝国の生き残りの姫なんて争奪戦になるのが分かりきっていますからね。

 それでも信用出来る勢力というのはあるにはあるものです。

 姫の母方にあたる公爵家。そこに生き残った二つの軍団の内片方が身を寄せており、一大勢力となっているそうです。

 ですが、なまじ大きな勢力となっているだけに周囲から危険視されて、袋叩きにされかねない情勢と……公爵自身もそれを理解している?だから亡命を願ってる?

 なるほど、で、連邦の場合は爵位を持った貴族は受け入れづらいので王国側に、と……。


 「受け入れるのは問題ないんだ、幸い土地は余ってるし、今はまだ」

 「そうでしょうね」


 なら、それを開拓して竜の領域なんて手を出さなければいいのに。

 それを言っても「先送りにするだけ」となるのでしょうけどね。兄さん達も引いてはくれませんよ?

 とりあえず、頼まれた迎えに行ってくるとしましょう。

 さしあたっては公爵らが通過するのを妨害している山脈の要塞の一つをどうするかですね。どうも山賊同然の集団になっているそうなのですよね。通行料を取る代わりに通してはくれるけど、法外な金額を気分次第で要求されると。場所が厄介なので、大軍を送り込んで潰すのも割に合わないし、難しい。

 けど、公爵の現在の領土の位置からなるだけ最短距離を、他の勢力とぶつからないように突破させるにはそこを通るしかないと。

 でも、公爵と帝国軍の正規軍の生き残りとなるともうけ話と見たか、のらりくらりと時間を稼いで吹っかけられてるから、何とかならないかという事ですね。


 「いいでしょう。それぐらいならちょっと行って片づけてきますから、その公爵や姫とかへの使者は任せますよ?」

 「それはいいけど、片づけてくるって」

 「要塞一個ぐらいでしょう?明日には片づけておくから後は任せます」

 「………そ、そうなんだ」


 翌日要塞が一つ消えた、それだけのお話です。

 それよりもこの際、元ブレイズ帝国とかいう領域、竜でもらったら少し状況変わらないかしら?

風邪引いて咳が収まりません……

病気になると何かと出費がかさむのも面倒ですねえ……

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