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竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
75/211

崩壊の影響

風邪気味なのがまだ治りません……

 海に浮かぶ巨大な体。

 もっとも通常の手段でそれを見る術はない。普段は海の底にそれはあるからだ。


 『ふむ、あれで滅んでしまったか』

 「ええ」


 俺、テンペスタはリヴァイアサンに会いに来ていた。

 リヴァイアサン自身はやはりというか、あれでも手加減に手加減を重ねていた。

 だが、リヴァイアサンの基準はあくまで竜、それも水系の上位竜に対するものでしかない。確かに水の上位竜なら特に属性の力を込めた訳でもない単なる大波で命に関わるような事にはならんわなあ……。そのレベルの波なら水属性持ちの上位竜ならコップで水をぶっかけられたぐらいでしか感じまい。

 しかし、人族では話は別だ。

 水の上位竜は攻撃の意図を込めた属性を含んでいない水ならばダメージなぞ受けたりしないが、人族なら膨大な水の質量自体が脅威だ。

 一立方メートル、一メートル四方の立方体相当の水はそれだけで一トンもの重量になる。

 そんな水が大規模に押し寄せたブレイズ帝国とやらは酷いものだった。沿岸貿易で発達した国だけあって海沿いに大都市が点在していたのだが、その大部分は津波の直撃によって無残極まりない姿を晒していた。建物はもっとも堅牢であるはずの帝城さえ崩壊していた。

 多数の国を制圧した事で、多数の難民が生じ、結果として昨今急速に大きくなっていたスラム街などは跡形もなくなっていた。

 

 『仕方あるまい。全ては流れるままだ』

 「そうでしょうね」


 リヴァイアサンのみならず、俺自身もあっさり流したが。

 そもそも喧嘩を吹っかけた方が悪いに決まっている。ただ単に通り過ぎるだけなら、リヴァイアサンは特に手出しはしない。

 なのに、前に来た連中もだが何故人族は余計なちょっかいをかけるのか……。


 リヴァイアサンからの話と周囲に流れる風と水から情報を読み取ったところ、ブレイズ帝国の兵器とは大型の格闘アームを備えた格闘戦艦だったようだ。

 正直、なんだそれはと言いたくなるような色物気配が漂うが、これでも連中からすれば苦肉の策だったみたいだ。

 本来ならば、攻撃魔法を砲として発射するのが望ましい。実際、他二ヶ国はいずれもその方向で対竜兵器を実用化している。

 しかし、砲というものは基本、遠距離攻撃を中心とする。そして、困った事に海上で竜と戦う時にはその遠距離攻撃というのは実に使いづらかった。念の為に言っておくが、ブレイズ帝国の技術者達も砲自体の開発を怠っていた訳ではなく、それを用いた他国との海戦には全て完勝していた。

 しかし、水中から接近する相手には砲は効果が薄すぎ、何かしらの近接戦闘能力を持たせる必要性に駆られた。

 その当面の解決策が格闘専用のアームだった訳だ。もっとも、リヴァイアサンには通用する訳もなく、あっさり全滅した訳だが。そらそうだよ。幾ら巨大なアームといったところで今の人の技術で動かせるものとなれば限界がある。船とのバランスもあるしな。

 鋼鉄の丸太相手に爪楊枝の剣を持ったマッチ棒の腕で何をしろってんだ。

 結局焦った皇帝の命令によって、ブレイズ帝国が崩壊した結果、大陸の三分の一は無秩序状態に陥った。

 何しろ、ブレイズ帝国が直前に大陸の他の国を陥落させていたからな。

 当然、各国の統治体制はガッタガタになっていた。帝国自身は旧来の体制を活かしつつ、その上に自国の統治システムを配置して取り込む形にするつもりで、進めていたようだったがその前に帝国自体が崩壊して、結果として新帝国は統治システムが崩壊状態でいきなり放置プレイになった訳だ。

 

 こうなると、かろうじて残っていた統治システム。

 帝国の内陸部の貴族、各国の降伏して生き残った貴族、砦に駐在していた騎士団。それらが周囲を代替統治するのは必然と言える。

 しかし、帝国の貴族も内陸部の貴族というのは元が沿岸部を中心に発達した国だけに中枢から外れた田舎貴族が多く、生き残った貴族も高位貴族は限られていた。そうした大国を統治した経験のない連中ばかりが遺された訳だから、そりゃあもうカオスな状態だ。

 ある者は分不相応の野望に身を焦がして、動き出した。

 ある者はとにかく周囲を落ち着ける為に必死に動いた。

 またある者は同盟を組んで動き出した。

 それぞれがバラバラに動き出した結果、軍勢も少数の軍勢が小競り合いを繰り返している。

 さて、ここが再びまとまって国となるのは何時の事やら……。


 「当面、この地域は結果的にはでありますが問題は起きないでしょうな」

 『静かになるか、それは良い……』


 我ら竜族にとっては、だが。

 いくら滅竜教団が全国レベルの組織と言っても、教団自体が国を持つ事を他二国は許すまい。やれば間違いなく、教団を危険視して協力関係にはヒビが入る。なにせ、今協力関係を築いてるお陰で両国の軍事機密を滅竜教団は知る立場にある。

 これが滅竜教団自身が国持ちとなれば、そうはいかなくなるだろう。

 かといって、既に急激に国土が拡大した両国が山脈を超えて、未知の領域、それも絶賛内戦真っ最中の場所へと手を出す気にはなれんだろうし……。

 ふむ、本当に竜族にとってはちょうど良いな。


 (これでこちらは残る二つを相手にすればよいか。……当面は、だが)


 しかし、今回の帝国の崩壊は一つのモデルケースでもあるな。

 人族が竜族に対して手を出してきているのは帝国だけではない。

 もし、他の二つでも竜と戦って、それが崩壊したら……さて、そいつらの面倒はどうするか。

 色々とややこしい事になりそうだ。

 

津波は1mの高さの津波で死亡率ほぼ100%だそうです

でも確かに水って重いんだから当然かも

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