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竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
72/211

その後のテンペスタ

仕事が小売りなので年末は忙しいです……

 良い仕事をした。

 短期間で一気に仕込んだので複数の竜王達がへたっているようだが、何とも情けない。


 『このような事やった事がありません!』


 などと途中で喚きだして逃げようとしたので、逃げた場合他の竜王か龍王にやらせると言ったら他の竜や龍達が共同でとっ捕まえてくれた。

 何やら「裏切り者!」などと叫んでいたようだが知らぬ。

 とはいえ、奴らの言う事が分からないでもない。竜というものは大抵の場合、こうした「勉強」という体験自体がないからだ。何せ社会性を持たぬから殆どの竜は人で言うところの独り暮らしの引きこもり。長きに渡る生はする事がなくて飽きるから思考に耽る(ふける)と言ってもその実態は各自が勝手に考えるだけ。間違った方向に行っていても誰も指摘しないし、当人ならぬ当竜も気にもしない。

 こうして改めて考えてみると、竜という生物が現状、極めて社会不適合な生物だという事がよく分かる。

 

 (もっとも単純に数が少ないというのもあるんだろうが)


 竜や龍の数は少ない。

 人族のそれとは比べようもない。

 社会不適合といったが社会を築ける程の数が存在しないとも言える。

 それに群れるのは基本、弱いから、単独ないし少数では生きていくのが困難だからという事もある。実際、人族が一家族ぐらいの少数で人の手の入っていない森の中で暮らした場合、そう長くは生きられないだろう。畑を作り、狩りで獲物を得るにしても魔物に襲われれば通常の人族では抵抗は困難だし、狼の群れや熊などに襲われても同じ事だ。

 これに対して、竜は襲われる事自体が滅多にない。

 魔物も、通常の獣も独り立ちした竜や龍に攻撃仕掛けるなんぞしない。

 やらかすのはまず間違いなく、自分達の方が後からその地に来た癖に、邪魔者扱いや批判する人族達だ。

 そして、まず間違いなく返り討ちに遭う訳だが。

 

 (それが出来てしまうからこそ、群れるという事をしない。必要性を感じない訳だからな)


 命の危機を感じれば、複数でまとまろうとしたりもするだろう。

 だが、感じなければ?

 そうして一体だけでも孤独と感じる精神構造を持っていなければどうだろうか?

 自分ことテンペスタも自分が孤独だとか、寂しさといった点に関して人族のそれとは違う感覚を持っているという事を理解している。そうでなければ、人族との付き合いなどまともに出来る訳がない。

 今、旧帝国の人々を保護する形になっているが、彼らとてテンペスタからすればあっという間に老い、そして死んでいく。生まれたばかりの赤子が老人となり亡くなるその時までであっても自分からすればほんの一瞬という感覚でしかない。

 自らの妹竜であるルナと少し前に再会した訳だが、彼女とて同じだろう。何十人という規模で生まれたばかりの赤子の頃から知っている相手が先に亡くなっていったのは間違いない。

 普通の人族の感覚ならば、人族との関係を断ち切って閉じ籠ってしまったとしてもおかしくない。

 

 話を戻すが、それだけに人の心というものは我々竜族にとっては理解出来ないものという事だ。

 心を理解出来ないまま、人族と交渉するのは難しい。

 かといって、今から人族に混じって暮らすなど悠長な事はやっていられんし、そもそもそれが出来るとも思えん。

 連中は例外的にこうして群れてはいるし、昨今は少しずつ群れる事を理解する竜もいるらしいが、この地に竜が多数暮らしているのは大火竜の存在によってこの地が火属性の竜達にとって至極快適な環境な事、大火竜が他の竜達が自らの縄張りで暮らす事を認めているからという二点があってこその話だ。

 もっともそこら辺は圧倒的に強大な竜はおおらかなんだけど。

 父である大嵐龍王もその暴風圏の端で風属性の竜が好んで暮らしているのを黙認しているし、水や地も同じだ。

 

 (というか、地のベヒモス爺さんに至っては最近じゃ背中で暮らしてる連中いるのに全然気にしてないしな……)


 うーむ。

 思わず唸ってしまう。

 あれだけ力があれば、人族との交渉も楽だ。

 余りに圧倒的に属性を支配している為に、契約を破るという事は彼らがそれぞれ持つ属性そのものを裏切るという事に等しい。

 火を裏切れば国そのものがやがて凍り付いた大地と化し、地を裏切れば大地の恵みを失い、水を裏切れば枯れ果てて死の砂漠と化すだろう。父とて裏切れば、大気そのものが極端に薄くなって人族が暮らしていける地ではなくなるはずだ。

 はっきり言おう。あの面子は冗談でも何でもなしに人族のレベルからすれば神に等しい。

 何より怖いのは人族がそれを理解していない事か……。

 そのレベルに達していない、というか自分にさえ遠く及ばない力しか持っていないのがこの地の一般的な竜王達だ。となれば、父や大火竜のような事は期待出来ない、というか父や大火竜を差し置いて他の竜王クラスに属性が完全に従うなどという事が起きる訳がない。

 

 (だからこそ、威圧的な交渉の仕方しか教えようがなかったのだよな)


 裏切る事を心配しないでいいような力もない。

 相手の事を理解出来るだけの人族に対する経験もない。

 となれば、出来るのは常に威圧的に、威張るような形で力を背景とした交渉。

 人同士ならよろしくないが、竜と人ならまあいいだろう……。

 しかし、人族の武器が竜、それも仮にも上位竜だの竜王だのと呼ばれるような竜を傷つけるか。

 そんな武器があの国にあった事も、それを首都が竜に包囲された時に、あの国が持ち出さなかった理由も気になる。

 何かややこしい事態が進行しているような気がしてならん。

 

 

寒くなりました

起きてると足が冷えて冷えて……最近は寝る前に風呂に入ってからでないと足が冷たすぎて寝れない……

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