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竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
71/211

その後の宰相さん

お久しぶりです

少し間があくと案外手が動かないですね……

 竜との交渉を終えた新宰相は帝都へと帰還した。

 はっきり言おう。

 先代宰相が暗殺されたように、権限を握る宰相を疎ましく思う者もいたし、もっと露骨に邪魔と感じて抹殺を図ろうとした者もいた。竜との交渉が終わったなら、用済み。さすがにあのような事があった後であれば、竜に喧嘩を売るバカも出ないだろう……。

 もちろん、他ならぬ新宰相や、前宰相と共に帝国を支えていた者達はそういう連中がいる事を理解していた。

 だからこそ、彼らもまた警戒していたし、前宰相から仕えている裏の護衛達は「今度はさせぬ」と気を張っていた訳だが……。


 「か、はっ!?」

 「まさかこうも堂々と来るとは……」


 バカなんですかね?

 最後は声を出さずに目だけで信頼出来る部下に語り掛けたが、その部下はといえば苦い顔だった。


 「確かに馬鹿ではありますが、そのせいで我々も防ぐのが難しかったのもまた事実です」

 「確かに、ね」


 目の前に転がっている三人はこれでも貴族だ。

 貴族が形式に則って、新宰相へと面会を求め、挨拶に近づいた所で襲撃をかけた。

 強引に近づこうとするなら止める事も出来るだろうが、合法的に近づくなら警備も止めようがない。

 

 「それにしても、この人達は何がしたかったんでしょうね?」


 つかつかと歩み寄った宰相は身動きすら出来ない三人に冷たい目を向ける。

 

 「これで君達の家は取り潰し確定ですよ。分かっていますか?」

 

 驚愕したのか目を剥いている。

 しかし、何を驚いているのか……。

 いや、分かっている。大方自覚もなしに操られたのだろう。だが、それにしてもだ。仮にも一国の宰相を暗殺しようとして罰がないなどと本気で思っていたのだろうか?

 もし、彼らをそそのかした連中が私の後で権力を握った所で、下手な事を言い立てて騒がれないよう口封じされる事は間違いないだろうに。

 今更ながらに、「我々はそんなつもりでは」などと言いたててますけどね。実際に襲撃しておいてそんな言い訳が通じると思っていたのでしょうか?行動に移す前に考えて欲しかったですね。

 必死に許しを請う連中が拘束されたまま引っ立てられていき、ようやっと静かになりました。さて。


 「誰が背後にいますかね?」

 「……候補としては複数おりますが、断定はできないかと」

 

 信頼出来る護衛に尋ねてみましたが、予想通りの答えですね。操った連中が明確な痕跡など残してはいないでしょう。

 一人が不満を漏らし、一人が煽るような事を言い、また別の者が僅かにそそのかしたと言えなくもない事を言い、また別の者が……。そうやって複数の黒幕達が若く、馬鹿で、使い捨てにしても惜しくない連中をそそのかし暗殺者へと仕立て上げる。

 かくして、連中から話を聞いても証拠不十分と言わざるをえないレベルの証言しか返って来ない訳ですね。

 これが立場の弱い者であればそれでも取り調べまでは持ち込めますし、それをきっかけに証言やら証拠だのを引きずり出す事も可能な訳です。場合によっては証拠の捏造という手も使えますが……それなり以上の貴族の当主が複数相手となるとそうはいかない訳でして。

 連中もそこら辺を理解して動いてますからね。


 「しかし、これ予想以上に強力でしたね」


 卓上に置かれた見事な竜の置物に視線を向けます。

 これ忘れても気づいたらそこにあるというなかなか怖い置物ではあるんですが、今回その性能という奴を実感する事になりました。

 なにせ、まさかここまでのバカがいるとは思っていなかったという事もあって初動が遅れたという事に加え、距離というどうしようもない物理的法則の関係で遅れた護衛達を後目に私の身を守ってくれたのはこの見た目は綺麗な置物なのですから。

 というか、これ。

 間違いなく、突如襲撃をかけられる直前までは間違いなく存在していなかったはずなんですけどね!

 気づけば、当然のように机の上で光を発し、馬鹿貴族三名を拘束してしまいました。光の輪ががっちりと馬鹿貴族達の上半身と足を締め付け、バランス崩した連中は私愛用の重厚な机に顔面や頭部を勢いよく叩きつける羽目になっていましたね……。お陰で、私の机に連中の血がついてしまいました。

 

 「しかし、どちらにせよ警備の見直しが必要になりますか…」

 「これからは閣下の後ろにも誰か配置する必要がありますな」


 そっからだと私が見ている資料も見える上、私が無防備な背中さらけ出してる訳ですからねえ。それが出来るぐらいに信用出来て、尚且つ口が堅く、裏切る心配のない腕が立つ者なんてうちでも一握りしかいないんですけど。

 しかも、そういう人材は基本、重要な場所で何等かの仕事担ってる者も多いんですよね。

 そう考えると護衛に引き抜いて、何とかなる者は更に少なくなる訳で……。


 「本当にろくな事しませんね、連中」


 このままだとこの国が亡国となる可能性だってあるというのに!

 分かってるんですかね?連中。

 分かってやってるんでしょうねえ……自分達でも何とかなると考えて。

 そんな簡単に何とかなるなら、さっさと名乗り出て、彼らの誰かが宰相になれば良かったものを。

 ああ、面倒臭い……。


 「いっそ投げ出して連中に押し付けて引退してしまいたい」

 「はいはい、馬鹿な事言ってないで仕事してください、仕事」


 はあ、本当に父も何を思ってこんなろくでもない仕事に熱意持ててたんですかねえ……。

次回はテンペスタ視点へと戻ります

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