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竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
62/211

兄妹の対策会議2

書き上げてたのに危うくアップを忘れる所でした

ふと時間を見て、慌てて投稿

 「方法がある、それは本当ですか?」

 「ああ。もっともそれを選択するかどうかは今の時点では疑問だろうが」


 ルナの問いにテンペスタはそう答えた。

 テンペスタの提示した案は移住。

 この世界には中央に位置する現在、人族が住まう大陸以外にも複数の大地がある。永劫氷結の北方大陸は論外だが、他の大陸は十分居住に耐える。


 「現在居住している大陸を中央と見て、それぞれ北東、西方、南東に三つの大陸と呼べる規模の大地がある。三つの大陸を合わせれば中央も上回る程の広さがある」

 「けれど、そちらの大陸の竜達と争うなら同じではないですか?」

 「いや、今の段階では原因は分からんが、他の大陸には竜は一体も存在しない。魔獣すら存在しないのだからその点は気にする必要はない」


 テンペスタの返答にルナは顔をしかめて呟いた。


 「竜がいない?」

 「ああ、加えて不審な点が幾つも存在している。我々の親父殿が何等かの形でかかわっているのは間違いない所だがな」

 

 不審な点というのを聞いて、ルナも納得した。確かにそれは不審だ。

 森が数十年もかけねばまともに再生しないなどありえない。

 鉱山一つ取っても、涸れた所でしばらく休止させておけば再び採掘可能になるはずなのだ。

 それに父である大嵐龍王の呟きと、それがもたらした病の終焉。ここまで来れば、父が何等かの形で関わっているのは間違いないだろう。


 「そして父が風である以上、他の火、水、地にも父と同じ役割を持つ竜か龍がいると兄さんは思っている訳ですね?」

 「その通りだ」


 もっとも大体その残り三体の予想は出来ているとはテンペスタは言わない。

 ここら辺は大人の竜となってから何百年もの間一国にとどまっていたルナと、特にここの所文字通り世界中を飛び回っていたテンペスタの差だろう。

 いずれにせよ問題は……。


 「でも、今暮らしている国を捨てて、海を越えて移住というのは可能なのかしら……」

 「それが問題だな」


 帝国の民の場合は、もうそれしか道がなかった。彼らはここで全滅するか、それとも他の大陸へと移住するかの二択しかなく、だからこそ移住の道を選んだのは当然とも言えた。

 しかし、他の民は違う。現在既に発展し、そこで生まれ、暮らしていた人族がその地を捨てて他の大陸へと移住するという道を簡単に選んでくれるのかと問われたなら「そんな事ある訳ないだろ」とほとんどの者が答えるだろう。それは当然の話だとルナもテンペスタも思う。彼らはどちらもそれなりの期間、人と共に暮らし、人の思考を理解している。


 「それを受け入れるとしたら、それ以外に道がない時だろう」

 「となればやはり」

 「ああ……」


 深いため息をついてテンペスタは言った。


 「一戦交えるしかなかろうな」

 

 竜と人、どちらが残るか。

 おそらくその為の戦いが必須だとテンペスタは考えている。

 もう、そうしなければどうにもならない所まで来ているだろうと。


 「大陸中央部にある巨大火山の火竜や炎龍達は既にその覚悟を決めている。そして、人族の持つ危険性もまた彼らは理解している。してしまっている」


 あの山の主である大火竜サラマンダーはおそらく父と同じだ。関心もろくに示さないかもしれないが、多少は動いてくれるだろう。

 そして、父とあと残る二体の竜と龍が動いてくれたならば……。


 (どのみち人に勝ち目などないのだ)

 

 それでも口で言って分かれば誰も苦労しない。

 それにおそらくあの四体が動く時は戦いも終盤に達した時だろう。何故かそんな確信があった。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 「ほう!これは面白い味付けですな」

 「この食材も見た事がありませんな。しかし、このほのかな苦味がまた癖になりそうで……」

 

 滅竜教団主催のパーティ。

 滅竜教団の重要幹部達が複数集まるという事に加え、王宮料理長(元)が調理を務めるという事で大勢の貴族がこぞって参加していた。

 王宮料理長(元)の料理はこの国最高の料理という考えには誰もが異論を差し挟みはしないだろう。というか、他の料理人達も誰も文句を言ったりしないだろう。王宮料理長(元)自身は「自分を上回る料理の才を持つ者が生まれて欲しい」とは常々公言しているし、平民からでも挑む者がいれば普通に応じてもいる。さすがに立場上に加え、誰でも認めていてはきりがないので推薦がある者に限定しているが……。

 何しろ、この国の高名な料理人はまず間違いなくその全員が弟子か孫弟子だ。したがって、「師匠にはまだ届かない」と誰もが理解している、してしまっている。

 無論、本当の意味で彼女が「弟子」「孫弟子」と認めているような者はいずれも「せめて少しでも近づいてみせる」と様々な料理に創意工夫を凝らしながら挑む者もいれば、せめて自身の得意な分野では師匠を上回ってみせると一芸を極めんとする者など様々だがいずれも諦めるような者はいない。

 むしろ、諦める者は他国から挑みに来た者に多い。

 なまじそれまで折れる事もなく、自分の腕に自信を持っていたからこそ到底勝てないと理解した時に折れてしまう。

 もっとも中には小国の王族でありながら、その場で即効王位継承権を放棄して、彼女に弟子入りしたなどという猛者も過去には存在するのだが……。

 だからこそ、滅竜教団の幹部達と顔つなぎが出来、王宮料理長(元)の料理を味わえるという事でいそいそとやって来た者は多かった。何せ、相手が相手なお陰で毒見役を介さない暖かく美味な料理が食えるという時点で高位の貴族ほど楽しみにしていた。

 何気に王までこっそり来ようとして阻止され、代理と称して王子が堂々とやって来たりしている。


 (料理の評価は上々、と……)


 料理に文句が出るとは思っていない。そんな甘い調理はしていないし、長年この国で暮らしていた彼女はこの国の民が貴族が王家が好む味付けというものを把握している。

 重要なのは他の大陸の素材を用いているという事。

 それも徹底的に吟味したとはいえ、こちらの大陸には極力ない物を選んでいる。

 さすがに調味料に関しては大して差がないし、そこまでは時間もないと諦めたが、肉や茸類、各種の山菜などは全てあちらで得た物だ。中にはテンペスタが協力して絶賛発展中の元帝国の街で購入した品もある。

 

 (今の段階で私に出来るのはこれぐらい)


 現段階で竜との仲介を行う事は出来ない。最初から負ける気でいる人族がいるはずもないし、ましてや移住を受け入れる者がいるはずもない。

 出番があるとすれば……。

 その時を待ち、ルナは気合を入れ直して調理に励むのだった。

 尚、王子を通じて新作料理が多数出た事を知った王が、後日料理長に頼み込んで同じ料理を作ってもらった事は秘密の話。 


大分涼しくなりましたね

まだ多少暑さは残っていますが、一時のように熱中症寸前という状況はなくなりました……ありがたい事です

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