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竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
55/211

竜王戦後の支配者達

夏バテと冷たいものに頼りがちゆえにお腹壊して、投稿遅れました

皆さんもお気をつけて

 「そうか。予定通り、と言うべきだろうな、これは」

 「左様ですな。大体予定通りです」


 溜息をつく王と共に報告を受けているのは滅竜教団の枢機卿の一人だった。

 たった今、彼らは派遣していた竜王討伐作戦の成功報告を受けていた。

 一つだけ違和感を感じる点があるとすれば、王が溜息と苦い顔をしている王国側の方が被害が少なく、枢機卿が穏やかな表情をしている滅竜教団の方が被害が圧倒的に大きいという事だろうか。それに気づいた王がどこか咎めるような口調で言った。


 「気にされたりはしないのかな?」

 「ジェナス高司祭含めた一同の事ですかな?」


 無言で王は頷いた。

 必要なら彼とて非情な判断を取るし、いちいち気にしていたらきりがない事ぐらいは理解している。

 大規模な戦が起きれば圧勝したとしても何百或いは千を超す国民が死ぬ。自分の命令でだ。戦の相手である敵国の者を含めれば万を超す事もある。それらの人族が死ぬ原因となったのは間違いなく王の命令であり、彼らにも生活が、遺族で生活に困窮する者が、と考えていたらきりがない。間違いなく心を病んでしまう。

 何時しか慣れと共に数字で考えるようになってゆく。

 

 『ああ、今回の損害は五百か。そう多くなくて良かったな』


 といった具合だ。

 とはいえ、別に精神が壊れた訳ではないから、こうした際に責めるような声になってしまう。

 枢機卿はそれを理解した上で僅かな笑みを浮かべて頷いた。


 「皆、覚悟はしておりました故」

 「覚悟か」

 「いずれも先は長くはなかった。だからこそ、彼らは竜王との戦いで倒れる事を望んだのですよ」


 だからこそ僅かな生き残り、砲台に配置された者はいずれも涙を流した。

 生き残った事ではなく、死ねなかった事に。

 毒龍の毒に侵されたジェナス高司祭。怪我で最前線を引退せざるをえなかった者もいれば、身内を下位竜によって失い憎悪をどうしても捨てきれなかった者など様々だ。


 「うん?最後はまたの機会があるのではないか?」

 「生憎、そのような者を前線に置いておけるほど、うちは気楽になれませんでなあ。此度を最後に後方に下がるか、教団を出るかのいずれかを迫られておったのですよ」

 「なるほどな」


 それならせめて最後は!と思い込む者がいるのも理解出来る。

 理解は出来るが共感は出来ないが。

 ただ、教団の言い分も分かる。上の命令を無視して飛び出すような者、兵士やましてや指揮官になど使えたものではない。そんな者がいれば、王国軍でも文官としての才能があるなら後方に回すだろうが、それすらなければ精々使い捨ての下っ端がいい所だろう。

 無論、そうした者の中に諦めて裏方に回る者や、出ていく者もいるのだろう。

 しかし、出て行った所で滅竜教団ほど竜討伐に実績のある所があるはずもなし。竜討伐もしくは竜を追い払うという話が来れば、民間ではまず間違いなく滅竜教団へと話が行く。

 誰だって、金を出して竜をどうにかして欲しいと願う際に、実績も何もなく、きちんと追い払う事が出来るのかどうかすら分からない上、金を持ち逃げされる可能性だってある相手と、高額の報酬を要求するでもなく、長年の竜討伐の実績を誇り、経験豊富な人材を揃えている滅竜教団となれば話がいかない方がおかしい。

 そうなると必然的に滅竜教団を出て、なお竜と戦うという事を選んだ者は自腹でそれを行うという事になる。

 危険を冒してまで竜を自腹で討伐しに行く、そんな酔狂な事に付き合おうという者など滅竜教団を同じような理由で出て行った者ぐらいしかいないが、そうした者で組んでも今度は資金が続かないし、情報とて滅竜教団より早く得られる可能性などほとんどない。結局、そうした者達の末路は無理をして死ぬか、諦めるか、あるいは裏方を引き受ける事を前提に滅竜教団に出戻るぐらいだ。 

 下位竜への恨み憎しみを捨てられず、一度は出て行った後に戻る出戻り組も案外、滅竜教団には多かったりする。


 「まあ、これで竜王の素材を用いた研究が進みます。機竜も大幅に強化出来ましょう」

 「そうだな。とはいえ今回のような無茶は今の段階ではなるべくしたくない所だが……」

 「でしょうな」


 毎度毎度このような事をしていてはあっという間に何もかも尽きるのは目に見えている。

 人手は足らなくなるだろう。

 資材、特に竜本体はあっという間に枯渇するだろう。

 何よりそれらに使う金は幾らあっても足りなくなるだろう。

 

 「ひとまずは竜王の体の研究か」

 「最終的にはあれも機竜に致します予定ですな」


 あれをか。

 そう呟く王の顔は何とも言えない顔だった。

 生物のようでもあり、植物のようでもあり。頭部こそほぼ吹き飛んでしまったものの、他は使える部分も多い。今頃双方の合同研究班は歓喜の声をあげて弄り倒している事だろう。

 それはいいのだが、あれに乗るとした場合、まず間違いなく乗るのは王自身だろう。

 王が実際に乗って出撃するかはさておき、機竜という新たな装備は王国の象徴となりつつあり、そして、だからこそ王の専用機竜が求められていた。

 これまで王国には伝来の宝剣だの、甲冑だのがあった訳だが、初めて王国が入手した竜王の身を用いて、誕生する機竜王は新たにそうした列に加わるのに相応しい装飾も施されたものとなるだろう。どうせ、下手なものに預ける事も出来るようなものでもない。

 ただし、王専用となる以上は王自身が乗らねばならない。

 

 (あれはあまり気持ちの良いものではないのだが)


 そう思いもするが、同時にそれを部下に強要している以上自分もそれに納得しなくてはならないのも理解している。

 今後、騎乗する際の乗り心地を改良するにしても、それはこれからの話だ。それに。


 (現実問題として、あれの出番は今後増えような)


 まだまだ竜の数は足りない。

 機竜の数は 増やさねばならず、そうである以上損害を減らすためにも機竜王の出撃は当然だろう。

 そうして考えるなら王自身よりも王太子を乗せる事の方が増えるのではないかと思う。


 (うむ、そうだな。王太子を乗り手とするよう調整させよう)


 王自身が乗るのはあくまで式典の折のみにしておけばいい。

 そう考える国王だった。

 尚、王国が所有する事を了承している滅竜教団の枢機卿はそうした心の動きを知るか知らないか分からぬが笑顔を崩す事はなかった。

 彼らにとって重要なのはただ一つ、人が生きるために竜を倒さねばならないならそれを為すのみ。そして、それに用いられる限りは機竜王の乗り手が誰であろうが気にするような事ではないからだ。

 エルフ族ゆえにまだまだ若々しい見た目の枢機卿は静かに茶をすするのだった。

暑いですね

暑さもですが、寝て起きると汗びっしょりです

べたついて気持ち悪いし、乾くと臭いし……痩せないといけないのは確かなので、ダイエットと思うしかないか

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